元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「みんなで一緒に暮らしたら」

2012-12-23 06:36:17 | 映画の感想(ま行)

 (原題:Et si on vivait tous ensemble?)一人きり、または夫婦だけで老後を迎えるより、気の置けない仲間が集まって共同生活を営んだ方が幸せかもしれないというアイデアに基づいて出来た筋書きだが、当然のことながら事はスンナリと運ばない。いくら気心が知れた友人といっても、しょせんは他人だ。あるいは親しい間柄だからこそ、まったく知らない者を相手にするケースとは別の意味で、越えられない壁を作ってしまうことがあるだろう。

 パリ郊外に住むアルベールとジャンヌ夫妻、ジャンとアニー夫妻、そして独身生活を送るクロードの5人は仲の良い友人同士。しかしある日心臓発作で倒れたクロードが養老院に無理矢理入れられそうになったことから、彼らは一緒に住み始める。

 共同生活の障害になるのがクロードをめぐる三角関係だというのがフランス製コメディらしいが、はっきり言ってこれは手ぬるい。まあ、あまりシビアなネタを提示すると喜劇として成り立たないのは分かるが、もっと普遍性を高めたモチーフを出して欲しかった。たとえばアルベールが患っている(軽度の)認知症にもうちょっとスポットを当ててみると、コメディ性をそれほど損なわないで万人が共感できる映画に仕上がったかもしれない。

 さらに、世話係として雇ったドイツ人の学生ディルクにジャンヌが“老人の性欲”うんぬんを説くあたりはどうでも良い。そのことが後の展開の伏線として十分機能しているとは言い難く、せいぜいが風俗通いに対するエクスキューズとして使われる程度だ。

 しかし、登場人物の一人が退場してしまうと、やはり厳粛な気持ちになる。哀感に満ちたラストは、有り体な言い方になるがやはり“老いの悲しさ”が滲み出て痛切だ。

 ステファン・ロブランの演出は慎重なタッチだが、リズム感を欠いている。余計なシーンを省いてタイトに仕上げて欲しかった・・・・とはいっても、監督になって日が浅いロブランにとって撮ったシーンは容易にカットできなかったのかもしれない。

 久々にフランス映画に出演したジェーン・フォンダはさすがの存在感。ジェラルディン・チャップリンも海千山千ぶりを見せる。昔は冴えたコメディ演技で観客を沸かせたピエール・リシャールがすっかり渋くなっているのも嬉しい。

 食い足りない映画かもしれないが、多彩なキャストのアンサンブルと美しい映像は楽しめる。日本映画でも同じような題材を取り上げたら、けっこう良いものが出来るかもしれない(もちろん、オールスターキャストで)。
コメント
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