元・副会長のCinema Days

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「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」

2019-08-05 06:35:33 | 映画の感想(さ行)
 (原題:SPIDER-MAN:FAR FROM HOME)スパイダーマンをめぐる今までの一連の作品の中では、最も楽しめた。シリアスな「アベンジャーズ エンドゲーム」(2019年)の“後日談”という設定ながら、前作「スパイダーマン:ホームカミング」(2017年)のライトな作風は踏襲されており、しかもキャラクター設定は肉付けされ、主人公の成長物語にもなっている点は感心した。

 アベンジャーズの活躍により世界は平穏を取り戻し、スパイダーマンことピーター・パーカーも普通の高校生活を送っていた。夏休みになり、ピーターは教師や学校の友人たちとヨーロッパ旅行に出かける。ところが、訪れたヴェネツィアでは水を操る巨大なクリーチャーが出現し、人々を襲う。迎え撃つピーターだが、けっこう相手は強い。そこに登場したのがスーパーパワーを持つミステリオことクエンティン・ベックという男で、ピーターと共闘して何とかクリーチャーを倒す。



 ベックは炎や水など自然の力を操るクリーチャーによって滅ぼされた“別世界の地球”から来たらしく、この世界にも危機が迫っているという。突然現れた“S.H.I.E.L.D.”長官のニック・フューリーは、ピーターにベックと協力して事態収拾に当たるように要請する。それからヨーロッパの各都市にクリーチャーは次々と襲いかかり、ピーター達は必死の戦いに臨む。

 まず「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」(2018年)での“指パッチン”による、人類を二分した“5年ものタイムラグ”に関するネタが効いていて、ギャグにもシリアスな場面にも上手く使われているあたりは感服する。

 そしてアイアンマンことトニー・スタークの後継者として自覚してゆくピーターの葛藤と成長、さらには級友達との関係も突っ込んだ次元まで描かれ、主人公を取り巻くモチーフの掘り下げは万全だ。ストーリーは後半から急展開し、本当の敵の姿が明らかになるが、そんな“意外性”だけに寄りかかることなく盛りだくさんの活劇のアイデアで飽きさせない。



 ジョン・ワッツの演出は実に達者なもので、淀みも無くスピーディーに物語が進む。主役のトム・ホランドはこのシリーズに初めて登場した時は頼りないと思っていたが、本作では等身大の若者としてのリアリティも感じられ、好印象になってきた。MJを演じるゼンデイヤやベティ役のアンガーリー・ライスも前作より数段可愛く見える(笑)。そしてミステリオに扮するジェイク・ギレンホールは、さすがの怪演だ。

 マリサ・トメイにジョン・ファブロー、サミュエル・L・ジャクソン等のレギュラーメンバーも言うことなし。風雲急を告げるようなエピローグと共に、「アベンジャーズ」後のマーベル・シネマティック・ユニバースに対する興味は尽きない。
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