(原題:THE PERFECT DATE)2019年4月よりNetflixにて配信。お手軽な学園ラブコメものだが、けっこう考えさせられる点もあって鑑賞後の印象は悪くない。設定は興味深く、各キャラクターは十分“立って”おり、しかもイヤな奴が一人も出てこないのも好感が持てる。本国での評価が高いのも納得した。
コネチカット州に住む高校生のブルックス・ラティガンは、成績は申し分なくイェール大学への進学を希望しているが、大学の非常勤講師である父親の収入では学費を工面できない。ある日、同級生から“いとこのセリアが彼氏の代役を探しているので引き受けて欲しい”と依頼を受ける。
ブルックスは見事にセリアの恋人としての“演技”をこなすが、意外な自分の“才能”に気付いた彼は、プログラミングに堪能な親友のマーフに専用勧誘アプリを作成してもらい、自身は“彼氏代行業”なるビジネスを開始する。そんな中、彼はパーティー会場でセレブな家庭の娘であるシェルビーと知り合い、一目惚れしてしまう。そこでブルックスは一芝居打って彼女に近付こうと画策するが、そんな彼をセリアは醒めた目で見つめるのだった。
自信過剰な若造が現実を見せつけられて一度は落ち込み、そこから何とか成長してゆくという話だが、全体的にライトな作劇にも関わらずアプローチがけっこうシビアなのが面白い。冒頭、ブルックスは入試時の小論文の添削でダメ出しを食らうが、アイビーリーグに入るためには学力だけでは不十分であることを承知していながら、“足りないのはカネだ!”と勝手に合点してヘンなバイトに明け暮れる。
マーフをはじめとする周りの者が彼を敬遠するようになり、セリアからは呆れられ、シェルビーとは上手くいかないようになって、初めて彼は自身の不甲斐なさに気付く。そして、自分を支えてくれた父親の有り難さも理解するようになる。セリアとの関係性と、終盤でブルックスが決める進路は予想通りだが、語り口に無理がないので観ていて気持ちが良い。
クリス・ネルソンの演出は特段才気走ったところは無いが、余計なケレンを入れない分、安心して観ていられる。主演のノア・センティネオは、顔は若干イモ臭いが芸達者で嫌味にならないところが良い。セリア役のローラ・マラノは最初は生意気に見えるものの、映画が進むにつれ次第に可愛く思えてくる(笑)。オディッセアス・ジョージアディスにカミラ・メンデス、マット・ウォルシュといった脇の面子も悪くない。