(原題:PROMISING YOUNG WOMAN )話にならない出来だ。物語の前提はもちろんストーリー運びは絵空事。演技面でも見るべきものはない。困ったことに第93回アカデミー賞で脚本賞を獲得しているが、シナリオに大きな瑕疵のある本作にそのような賞をくれてやるのは、何かの冗談としか思えない。ひょっとして、何かの“圧力”でも加わったのであろうか。
ロスアンジェルス近郊の町に住むキャシー・トーマスは、コーヒーショップでバリスタとして働いており、家ではいい年をして男っ気の無い彼女を両親は心配している。ところがキャシーは、夜は盛り場で泥酔したふりをして、よからぬ考えを抱いて近付いてきた男どもに“制裁”を加えるという奇態な行為に興じていた。
実は彼女はかつて大学の医学部に籍を置いており、優秀な成績で将来を嘱望されていた。だが親友ニーナがある事件に巻き込まれたことを切っ掛けに大学を辞めて、今の境遇に甘んじている。あるとき、キャシーは大学時代の同級生ライアンと再会する。前から彼女のことを憎からず思っていたという彼に思わず好意を抱いてしまうキャシーだが、ライアンからニーナと関わりがあった男の消息を聞くと、思い切った行動に出る。
まず、酔っ払いを装って男を引っかけるというキャシーの振る舞い自体がデタラメだ。有り体に言えば、これは美人局の一種だろう。しかし本来の美人局と違うのは、彼女が単身で行っていることだ。これは危険極まりない。相手の男が逆上して彼女に襲いかかる可能性は大きいはず。バックに“恐いお兄さん達”が付いているわけでも、キャシー自身が腕っ節が強いわけでもないので、まさに自殺行為だ。
さらに、舞台になっているのは大都市ではなく小さな町であり、キャシーのような怪しい女の噂はすぐに広がる。キャシーが斯様な行為を繰り返す原因になったニーナとの関係がハッキリしない。いくら親友とはいえ、キャリアを放り出して捨て鉢な生き方をするほどの話ではないはずだ。2人が同性愛的な間柄だったとか、そういう強い動機付けが無ければ話は絵空事になる。そしてキャシーが認識している“男たちへの復讐”とやらの内実には、脱力するしかない。ラストの処理など、呆れて物が言えないほどだ。
脚本も担当しているエメラルド・フェネルの演出は凡庸で、見るべきものは無い。さらに主演のキャリー・マリガンは劇中の設定年齢はもちろん、彼女の実年齢を勘案してもひどく老けている。これでは、いくら酒場でスキを見せても男は絶対に引っ掛からない。とにかく、最初から最後まで作者が頭の中だけで考えたようなリアリティの無い話が延々と続き、観ていて本当に疲れたというのが正直な感想である。
ロスアンジェルス近郊の町に住むキャシー・トーマスは、コーヒーショップでバリスタとして働いており、家ではいい年をして男っ気の無い彼女を両親は心配している。ところがキャシーは、夜は盛り場で泥酔したふりをして、よからぬ考えを抱いて近付いてきた男どもに“制裁”を加えるという奇態な行為に興じていた。
実は彼女はかつて大学の医学部に籍を置いており、優秀な成績で将来を嘱望されていた。だが親友ニーナがある事件に巻き込まれたことを切っ掛けに大学を辞めて、今の境遇に甘んじている。あるとき、キャシーは大学時代の同級生ライアンと再会する。前から彼女のことを憎からず思っていたという彼に思わず好意を抱いてしまうキャシーだが、ライアンからニーナと関わりがあった男の消息を聞くと、思い切った行動に出る。
まず、酔っ払いを装って男を引っかけるというキャシーの振る舞い自体がデタラメだ。有り体に言えば、これは美人局の一種だろう。しかし本来の美人局と違うのは、彼女が単身で行っていることだ。これは危険極まりない。相手の男が逆上して彼女に襲いかかる可能性は大きいはず。バックに“恐いお兄さん達”が付いているわけでも、キャシー自身が腕っ節が強いわけでもないので、まさに自殺行為だ。
さらに、舞台になっているのは大都市ではなく小さな町であり、キャシーのような怪しい女の噂はすぐに広がる。キャシーが斯様な行為を繰り返す原因になったニーナとの関係がハッキリしない。いくら親友とはいえ、キャリアを放り出して捨て鉢な生き方をするほどの話ではないはずだ。2人が同性愛的な間柄だったとか、そういう強い動機付けが無ければ話は絵空事になる。そしてキャシーが認識している“男たちへの復讐”とやらの内実には、脱力するしかない。ラストの処理など、呆れて物が言えないほどだ。
脚本も担当しているエメラルド・フェネルの演出は凡庸で、見るべきものは無い。さらに主演のキャリー・マリガンは劇中の設定年齢はもちろん、彼女の実年齢を勘案してもひどく老けている。これでは、いくら酒場でスキを見せても男は絶対に引っ掛からない。とにかく、最初から最後まで作者が頭の中だけで考えたようなリアリティの無い話が延々と続き、観ていて本当に疲れたというのが正直な感想である。