(英題:BETTER DAYS )内気な優等生の女生徒と不良少年とのラブストーリーという、典型的な少女マンガ風のネタを取り上げていながら、これほどまでに奥深く感銘度が高い作品に仕上げたスタッフとキャストに拍手を送りたい。終盤のやや無理筋な展開と、エンドクレジットで流れる当局側のPRさえなければ、文句なしの傑作になっていたところだ。
中国内陸部の地方都市に住むチェン・ニェンは、受験を控えた高校3年生だ。成績は優秀で、怪しげな商売で家計を支える母は彼女に期待している。一方、学校ではイジメ問題が深刻化していた。チェン・ニェンの同級生もイジメが原因で自ら命を絶ってしまうが、今度はチェン・ニェンが新たなイジメのターゲットになる。ある日彼女は、下校途中に集団暴行を受けている少年を目撃し、彼を助ける。するとその少年シャオベイは、彼女のボディガード役を買って出るのだった。

中国の大学受験事情は壮絶であるらしく、この試験の結果次第で人生が決まるといっていい。そのため受験生のメンタルは擦り減らされ、主人公の通う高校の雰囲気も、実に殺伐としている。他方、シャオベイのような一度社会をドロップアウトした人間には、這い上がれる機会はまず与えられない。そして地方に住む者は、進学のため町を出るしか地元を離れる手段は無い。
映画はこのような社会的不条理の描写を織り込みつつ、その中で藻掻くように生きる2人のピュアな心情を鮮烈に浮き彫りにする。互いに欠けているものを相手に見出し、彼らは惹かれ合ってこの暗鬱な世界を疾走していく。

この2人だけではなく、周囲のキャラクターも丹念に掬い上げられており、違和感は無い。違法なビジネスに手を染めてはいるが、それでも娘を心の底から信じているチェン・ニェンの母親や、主人公たちを取り巻く環境に心を痛めつつ賢明にフォローする若い刑事。イジメのグループの親玉である女生徒も、他者を攻撃せずにはいられない心の闇を抱えている。これらのリアリズムには圧倒されてしまった。
デレク・ツァンの演出は強靱で、素材に肉迫していなから、匂い立つようなロマンティシズムを醸し出し、最後まで目が離せない。主役のチョウ・ドンユイとイー・ヤンチェンシーの演技は素晴らしく、眼差しだけでチェン・ニェンとシャオベイの切ない心情が存分に表現されている。イン・ファンやジョウ・イエら脇の面子も言うこと無しだ。ロケ地の選定やカメラワークも考え抜かれており、映像はとても重量感がある。そして何より“君は世界を守れ、俺は君を守る”というシャオベイのセリフには、泣かされてしまった。
中国内陸部の地方都市に住むチェン・ニェンは、受験を控えた高校3年生だ。成績は優秀で、怪しげな商売で家計を支える母は彼女に期待している。一方、学校ではイジメ問題が深刻化していた。チェン・ニェンの同級生もイジメが原因で自ら命を絶ってしまうが、今度はチェン・ニェンが新たなイジメのターゲットになる。ある日彼女は、下校途中に集団暴行を受けている少年を目撃し、彼を助ける。するとその少年シャオベイは、彼女のボディガード役を買って出るのだった。

中国の大学受験事情は壮絶であるらしく、この試験の結果次第で人生が決まるといっていい。そのため受験生のメンタルは擦り減らされ、主人公の通う高校の雰囲気も、実に殺伐としている。他方、シャオベイのような一度社会をドロップアウトした人間には、這い上がれる機会はまず与えられない。そして地方に住む者は、進学のため町を出るしか地元を離れる手段は無い。
映画はこのような社会的不条理の描写を織り込みつつ、その中で藻掻くように生きる2人のピュアな心情を鮮烈に浮き彫りにする。互いに欠けているものを相手に見出し、彼らは惹かれ合ってこの暗鬱な世界を疾走していく。

この2人だけではなく、周囲のキャラクターも丹念に掬い上げられており、違和感は無い。違法なビジネスに手を染めてはいるが、それでも娘を心の底から信じているチェン・ニェンの母親や、主人公たちを取り巻く環境に心を痛めつつ賢明にフォローする若い刑事。イジメのグループの親玉である女生徒も、他者を攻撃せずにはいられない心の闇を抱えている。これらのリアリズムには圧倒されてしまった。
デレク・ツァンの演出は強靱で、素材に肉迫していなから、匂い立つようなロマンティシズムを醸し出し、最後まで目が離せない。主役のチョウ・ドンユイとイー・ヤンチェンシーの演技は素晴らしく、眼差しだけでチェン・ニェンとシャオベイの切ない心情が存分に表現されている。イン・ファンやジョウ・イエら脇の面子も言うこと無しだ。ロケ地の選定やカメラワークも考え抜かれており、映像はとても重量感がある。そして何より“君は世界を守れ、俺は君を守る”というシャオベイのセリフには、泣かされてしまった。