元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

最近購入したCD(その40)。

2022-02-18 12:47:15 | 音楽ネタ
 英国の世界的シンガーソングライターであるエド・シーランが、2021年秋に発表した4枚目のアルバム「=(イコールズ)」はすでに好セールスを達成しており、ここであえて紹介する必要は無いとは思ったのだが、あまりのクォリティの高さに言及せずにはいられなかった。とにかく“捨て曲”が存在せず、どのナンバーも濃密な魅力を放っている。

 特に、家庭人としての自覚を探求したり、師であり友人でもあったマイケル・グディンスキーの逝去に接しての心情を綴った曲など、歌詞の内容も円熟味を増している。また、大ヒットしたシングル「バッド・ハビッツ」では、身を固める前の奔放な生活を振り返る余裕まで見せる。そしてもちろん曲調はポップで親しみやすく、メロディは訴求力が高い。



 それにしても、今までのアルバムタイトルが「+(プラス)」「×(マルティプライ)」「÷(ディバイド)」と続いたものの、この新作が「-(マイナス)」ではないのが、シーランのスタンスを象徴していて興味深い。彼にとって“マイナス要因”なんか埒外のことなのだ。そういう前向きな姿勢で、これからも意欲的な作品を発表してもらいたい。

 コペンハーゲンのピアニスト、ニコライ・マイランドが2015年に発表したトリオ作品「リービング・アンド・ビリービング」は、最近よく聴くジャズのディスクだ。とにかく肌触りの良いナンバーとパフォーマンスがずらりと並べられ、いわば“正統派北欧系美メロ(?)”とも言えるテイストを存分に堪能できる。



 最近のピアノトリオのトレンド(みたいなもの)がどうなっているのか分からないが、たまに耳にする新録音のディスクは、ヘンに高踏的だったりフリージャズっぽかったり、あるいは甘々のムード音楽仕様だったりと、あまり積極的に聴きたくないものが目立っていた。その点このCDは“甘すぎず、辛すぎず”の絶妙な線をキープしており、誰にでも奨められる。

 曲はマイランドの自作が中心だが、ビートルズの「フール・オン・ザ・ヒル」のカバーなども入っており、飽きさせない。さらに、デンマークの歌姫シーネ・エイが参加しているのも嬉しい。録音の質は中の上といったところだが、各楽器の定位もしっかりしており、決してイヤな音は出てこない。こういうタイプのディスクが増えてほしいものだ。

 73年創設の、スウェーデンのBISレーベルはクラシック音楽中心のレコードブランドとして有名だが、内容が手堅いことでも知られている。私の知る限り、このレーベルの商品で失望したものは見当たらない。少なくとも、独グラモフォンやSONYなどのメジャーレーベルより、品質は安定していると思う。今回紹介するのは。ヴィヴァルディのイタリア・リュートのための作品全集だ。



 リュートを担当しているのは、名手ヤコブ・リンドベルク。他にはニルス=エリク・スパーフ(ヴァイオリン)、モニカ・ハジェット(ヴィオラ・ダモーレ)、およびザ・ドロットゥニングホルム・バロック・アンサンブルといった面子が顔を揃える。84年から85年にかけて、ストックホルム郊外のペトラス教会で録音されている。

 演奏は良い意味での中庸をキープ。一般には馴染みのないナンバーばかりだが、どれもしみじみと聴かせる。音質はレベルが高く、リュートの音が実にまろやか。各楽器の距離感も上手く再現されている。そして特筆されるのがホールエコーだ。演奏陣と背後の壁とがかなり離れていると思われ、反響がスッと後方に消えていくあたりは絶品である。このレーベルのディスクは、機会があればまた手にしたいと思う。
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