1991年の台湾映画「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」を観にいった。
1960年、台北。建国中学昼間部の受験に失敗し夜間部に通う小四(シャオスー/チャン・
チェン)。クラスメートの王茂(ワンマオ)や飛機(フェイジー)は"小公園"と呼ばれる不良
グループに属していた。シャオスーの両親は夜間部で不良たちの影響を受けないかと心
配し、1日も早く昼間部への編入ができるよう、有力者の汪(ワン)に口添えを頼んでいた。
シャオスーの両親は上海から渡ってきた外省人で、より良い生活ができると信じて台湾
へ渡ってはきたものの、変わりゆく社会や一向に良くならない暮らし向き、そして大陸
へ帰ることもできない現実に、外省人たちの間には不安と閉塞感が蔓延していた。シャ
オスーは成績は良いものの、両親の心配をよそに親友のワンマオたちと授業をさぼって
は遊んでいた。ある日シャオスーは保健室でケガをした小明(シャオミン/リサ・ヤン)と
知り合う。彼女は小公園のリーダー、ハニーの恋人だった。ハニーは敵対するグループ
"217"のリーダーとシャオミンを奪い合い、殺人を犯して台南に逃げていた。
エドワード・ヤンの傑作映画のリバイバル上映である。スクリーンで観られてとても嬉
しい。この映画は台湾の近代史を多少知っておかないとわかりにくい面はあるようだ。
冒頭で本当にざっとだが簡単に当時の背景の説明があり、何故不良が多いのかはわかっ
た。シャオスーの両親はより良い生活ができると信じて上海から渡ってきたが、相変わ
らず一家は苦しい生活をしている。それでも地道に真面目に頑張っていけばいつか道は
開けると信じる父の元、家族7人支え合って暮らしている。母が「日本と8年戦って、日
本家屋に日本の歌」と嘆くシーンが印象的だった。壁に掛かっているカレンダーも和服
の女性が描かれた日本風のものだ。
シャオスーは不良ではないが、クラスメートたちに不良が多いためどうしても付き合い
が生まれる。それでもワンマオと一緒に遊んだり他愛のない悪戯をしたりしているのを
見ると、15歳の少年らしくて微笑ましく感じる。街の若者たちの娯楽と言えばビリヤー
ドや音楽だ。皆プレスリーが大好き。ビートルズが出てくる少し前か。ワンマオはとて
も歌がうまく、コンサートでプレスリーを英語で熱唱しては喝采を浴びるが、これが本
当にうまいのだ。実際にワンマオ役の俳優が歌っているのだろうか。
シャオスーはある日体育館でシャオミンを見かけ、その後保健室で知り合う。これがシ
ャオスーの運命を大きく変えることになる。シャオミン役のリサ・ヤンは清楚な雰囲気
はあるけれど、何だか変わった顔である。目が小さくて、剛○○芽をもっと極端にした
ような顔で、決して可愛いという感じではない。そのシャオミンは次々と男を変えてい
るので、かなり違和感がある。私がはっきりと記憶しているだけで5人は男がいるし、不
良グループのリーダー同士が彼女を取り合って殺し合いとか、そんなにいいか?という
のが率直な感想だ。シャオミンの家は母1人子1人で、母はひどい喘息で働けず、シャオ
ミンは知り合いの家を転々とする日々だ。そういう不満もあって男を渡り歩いていたり
するのかもしれないが、見かけによらず軽薄というか尻軽というか。更に自分がモテる
という自覚もあり、シャオスーに対する思わせぶりな態度や考え方も結構傲慢で、とに
かく外見に釣り合っていないのがとても気になった。
シャオスーは成績も性格も良いのだが、不運というのかやることなすこと裏目に出てし
まい、大人たちからは問題児扱いをされてしまう。両親やきょうだいは彼がいい子だと
わかっているので支えようとするが、うまくいかない。いつも思うが台湾の学校は日本
の学校と雰囲気がとてもよく似ていて、親近感がある。掃除も生徒がしていたし。学校
の掃除を生徒がする国は少ないのではないだろうか。
この映画は本当に傑作だと思う。この映画は台湾で実際に起きた殺人事件がモチーフに
なっている。エドワード・ヤンの少年の時の実体験である。当時の台湾で起きた16歳の
少年による15歳の少女の殺人事件は大変衝撃的だったようだ。それは少年と同世代だっ
たエドワード・ヤンの心にも大きな印象を残したのだろう。この映画は当時の台湾の抑
圧された空気感、焦燥感、閉塞感といったものが鮮明に描かれており、勉強不足の私に
もそれはよく伝わってくる。シャオスー役のチャン・チェンの演技も素晴らしいと思う。
当時15歳で映画初出演ながら、少年のみずみずしさや残酷さを自然に体現している。他
の少年たちや家族の演技も秀逸だし、ラストシーンがとても感動的。
エドワード・ヤンは2007年に59歳の若さで癌で亡くなったので、作品数は多くはない。
もっとたくさん映画を作って欲しかったなあ。ミニシアターはリバイバル上映をしてく
れるから嬉しい。それにしても3時間56分の上映時間はさすがに疲れた。
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1960年、台北。建国中学昼間部の受験に失敗し夜間部に通う小四(シャオスー/チャン・
チェン)。クラスメートの王茂(ワンマオ)や飛機(フェイジー)は"小公園"と呼ばれる不良
グループに属していた。シャオスーの両親は夜間部で不良たちの影響を受けないかと心
配し、1日も早く昼間部への編入ができるよう、有力者の汪(ワン)に口添えを頼んでいた。
シャオスーの両親は上海から渡ってきた外省人で、より良い生活ができると信じて台湾
へ渡ってはきたものの、変わりゆく社会や一向に良くならない暮らし向き、そして大陸
へ帰ることもできない現実に、外省人たちの間には不安と閉塞感が蔓延していた。シャ
オスーは成績は良いものの、両親の心配をよそに親友のワンマオたちと授業をさぼって
は遊んでいた。ある日シャオスーは保健室でケガをした小明(シャオミン/リサ・ヤン)と
知り合う。彼女は小公園のリーダー、ハニーの恋人だった。ハニーは敵対するグループ
"217"のリーダーとシャオミンを奪い合い、殺人を犯して台南に逃げていた。
エドワード・ヤンの傑作映画のリバイバル上映である。スクリーンで観られてとても嬉
しい。この映画は台湾の近代史を多少知っておかないとわかりにくい面はあるようだ。
冒頭で本当にざっとだが簡単に当時の背景の説明があり、何故不良が多いのかはわかっ
た。シャオスーの両親はより良い生活ができると信じて上海から渡ってきたが、相変わ
らず一家は苦しい生活をしている。それでも地道に真面目に頑張っていけばいつか道は
開けると信じる父の元、家族7人支え合って暮らしている。母が「日本と8年戦って、日
本家屋に日本の歌」と嘆くシーンが印象的だった。壁に掛かっているカレンダーも和服
の女性が描かれた日本風のものだ。
シャオスーは不良ではないが、クラスメートたちに不良が多いためどうしても付き合い
が生まれる。それでもワンマオと一緒に遊んだり他愛のない悪戯をしたりしているのを
見ると、15歳の少年らしくて微笑ましく感じる。街の若者たちの娯楽と言えばビリヤー
ドや音楽だ。皆プレスリーが大好き。ビートルズが出てくる少し前か。ワンマオはとて
も歌がうまく、コンサートでプレスリーを英語で熱唱しては喝采を浴びるが、これが本
当にうまいのだ。実際にワンマオ役の俳優が歌っているのだろうか。
シャオスーはある日体育館でシャオミンを見かけ、その後保健室で知り合う。これがシ
ャオスーの運命を大きく変えることになる。シャオミン役のリサ・ヤンは清楚な雰囲気
はあるけれど、何だか変わった顔である。目が小さくて、剛○○芽をもっと極端にした
ような顔で、決して可愛いという感じではない。そのシャオミンは次々と男を変えてい
るので、かなり違和感がある。私がはっきりと記憶しているだけで5人は男がいるし、不
良グループのリーダー同士が彼女を取り合って殺し合いとか、そんなにいいか?という
のが率直な感想だ。シャオミンの家は母1人子1人で、母はひどい喘息で働けず、シャオ
ミンは知り合いの家を転々とする日々だ。そういう不満もあって男を渡り歩いていたり
するのかもしれないが、見かけによらず軽薄というか尻軽というか。更に自分がモテる
という自覚もあり、シャオスーに対する思わせぶりな態度や考え方も結構傲慢で、とに
かく外見に釣り合っていないのがとても気になった。
シャオスーは成績も性格も良いのだが、不運というのかやることなすこと裏目に出てし
まい、大人たちからは問題児扱いをされてしまう。両親やきょうだいは彼がいい子だと
わかっているので支えようとするが、うまくいかない。いつも思うが台湾の学校は日本
の学校と雰囲気がとてもよく似ていて、親近感がある。掃除も生徒がしていたし。学校
の掃除を生徒がする国は少ないのではないだろうか。
この映画は本当に傑作だと思う。この映画は台湾で実際に起きた殺人事件がモチーフに
なっている。エドワード・ヤンの少年の時の実体験である。当時の台湾で起きた16歳の
少年による15歳の少女の殺人事件は大変衝撃的だったようだ。それは少年と同世代だっ
たエドワード・ヤンの心にも大きな印象を残したのだろう。この映画は当時の台湾の抑
圧された空気感、焦燥感、閉塞感といったものが鮮明に描かれており、勉強不足の私に
もそれはよく伝わってくる。シャオスー役のチャン・チェンの演技も素晴らしいと思う。
当時15歳で映画初出演ながら、少年のみずみずしさや残酷さを自然に体現している。他
の少年たちや家族の演技も秀逸だし、ラストシーンがとても感動的。
エドワード・ヤンは2007年に59歳の若さで癌で亡くなったので、作品数は多くはない。
もっとたくさん映画を作って欲しかったなあ。ミニシアターはリバイバル上映をしてく
れるから嬉しい。それにしても3時間56分の上映時間はさすがに疲れた。
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