第1話
『崩壊寸前の家庭にやって来た
笑顔を忘れた氷の女・・・』
ダウンを着て帽子を被った女が、
阿須田と表札のある家の前に佇んでいる。
阿須田家は父・恵一、長女・結、長男・翔、
二男・海斗、二女・希衣の5人家族。
母親は亡くなっていて、家の中は滅茶苦茶。
運送屋が仏壇を配送しに来た。
四十九日も終わったからと言う父に、
反発する子供たち。
その時、チャイムが鳴り希衣が開けると女が立っていた。
「家政婦の三田です。
晴海家政婦紹介所から参りました。」
三田を見た恵一は呆然。
思っていた家政婦像とは違っていたようだ。
家に入り、恵一が家族を紹介。
「家政婦の三田です。」
「家政婦って何?」と希衣。
「朝7時から夜8時まで、掃除、とか洗濯とか、
ご飯の用意をやってくれるんだよ、三田さんが。」
家政婦のことを聞いてないと翔が猛反対。
費用もかかるだろと言うと、保険金も入ったし、
四十九日も終わったからと上手く説明出来ない恵一。
「四十九日って何?」と希衣。
またしても上手く答えられない恵一の横から三田が言う。
「四十九日とは死んだ人の魂が49日間はこの世にいて、
その後あの世に旅立つと言われているので、
その日にお別れをして死んだ人のことは忘れようと、
生き残った者たちの都合で決めたことです。」
「お母さんいるもん!!」
そんなことは一切気にしない三田。
「それで、何からやりましょうか、旦那様。」
家の中を見て回り、次々とやることを言っていく三田。
最後に、母親の遺品が置いてある部屋を見てどうするか聞く。
翔が慌てて触らなくていいと言った。
「承知しました。それでは作業を始めさせていただきます。」
ダウンを脱ぎ、黒いエプロンをして、髪を結ぶ三田。
全員時計を見て慌てる。
子供たちが走って行くのを送り出す三田。
恵一が三田に鍵と当座の費用を渡す。
「旦那様、ネクタイが。」
そう言い、恵一のネクタイを直す三田。
それを隣の皆川が見て怪しむ。
会社で女子社員に声をかける恵一。
何か離そうとするが、電話がかかって来た。
晴海家政婦紹介所の晴海からで、
三田は笑わないし余計なことはしゃべらないから、
よく他の人に変えてくれと言われるらしい。
三田は言われたことはなんでもやるから注意してと晴海。
「極端に言えば、人を殺せって言われたら
本当にやりかねないんで・・・」
恵一が帰宅すると玄関は整頓され、
靴も靴箱に収まっていた。
トイレもお風呂もピカピカだと希衣。
夕飯もちゃんと用意され、みんなで食べ始めたところに、
母親の妹・うららが食材をいっぱい買ってやって来た。
夕飯が既に用意されてるのを見て、
勿体無いから食材を使ってくれと渡し、
帰るかと思いきや戻って来た。
明後日の希衣の誕生日を盛大にやろうと提案するうらら。
しかしみんな乗り気じゃない。
希衣に何が欲しいか聞くと「お母さん」と言われ、
うららが安請け合いをし帰って行く。
みんなはまたうららが何かしでかすんじゃないかと不安顔。
用がなければ失礼するという三田を恵一が呼び止める。
うららが良かれと思って動くと、とんでもないことが起こるから、
何をするつもりか聞いてくれと言い、うららの住所を教える。
「これは業務命令でしょうか?」
「あ、はい。」
「承知しました。」
翌朝、うららの家を訪ねる三田。
うららの父に誰だと聞かれ、家政婦の三田ですと。
そして事の経緯を話す三田。
恵一はどうなったか三田に電話。
うららは良いアイデアが浮かんだと、
そしてそれは当日までのお楽しみらしいと伝える。
希衣を迎えに行くと、皆川が保育士に怒っていた。
希衣が子供の翼を泣かせたとのこと。
誕生日にお母さんに会えると言った希衣に、
翼が死んだからもう会えないと言われて喧嘩になったらしい。
帰り道、希衣は「手を繋いでいい?」と三田に聞く。
三田の手は冷たかった。
翼に会いたいなら死ぬしかないと言われたと希衣。
「そう信じている人もいます。」
「じゃあ、一緒に会いに行ってくれる?
お母さんに。」
「承知しました。」
手を繋いだまま川に入って行く三田と希衣。
そこに翔が通りかかり、2人を連れ戻す。
希衣は石を拾っていたと言ったようだが、
翔は信じられないと怒りが収まらない。
しかし結と海斗は相手にしない。
母の部屋で希衣を寝かしつけていた結。
母からのメールを見て溜め息。
『結、ごめんね』
結は放課後、写真部の部室で家族写真を見ていた。
そこに小沢が入って来て、どこかへ行こうと誘う。
母親が亡くなってからゆっくり話してないと。
2人がキスしそうになった時、結の携帯が鳴る。
海斗がうららのせいで最悪だと、すぐ帰って来いと言う。
結が急いで帰ると家の前で三田が月を見ていた。
夕飯を作らなくていいとうららに言われたと。
結が家の中に入ると煙で充満していた。
台所に行くと、去年の誕生パーティーの写真を見つけたから、
去年と同じものを作ると張り切っていたうらら。
そうすればお母さんに会えたと
希衣が喜ぶと勝手に思ってるらしい。
「しかも、去年お母さんが着てたのと同じ服着てんだけど。」
「お母さんと同じエプロンもしてた。」
「ああいう感覚信じられないな、あの人。」
出来たとうららに呼ばれる。
すると真っ黒に焦げた料理と、
希衣が嫌いなプチトマトの入ったサラダ。
涙でいっぱいの希衣。
うららが母親の席に座ってるのも気に入らない。
慌てて立ったうららがテーブルクロスを引っ張り、料理が床へ。
出前取る?と言ううららに、
三田が片付けますと、床に落ちた料理を拾い始める。
そこに恵一が帰って来て、逃げるように帰って行くうらら。
お母さんに会いたいと泣き叫ぶ希衣。
なだめようと恵一が買って来たパンダのぬいぐるみを渡すが、
希衣は放り出してしまう。
すると結が切れた。
「私だって、会いたいわよ!
でも死んじゃったから、もういないの!!
明日も明後日も明々後日も、
もうお母さんには会えないの。
永遠に絶対無理なの!!」
「お姉ちゃん、そこまで言わなくてもさ・・・」
「じゃあ、あんたが会わせてあげたら?
お母さんに。
いつまでもこんなの置いておくからいけないのよ。
三田さん、全部捨ててくれる?」
「承知しました。」
三田は母の服を出し、庭に捨て始める。
翔がやめろと言うが、いいから捨ててと結。
全部燃やしちゃってと。
「このまま置いといても、
お母さんは生き返りゃしないんだから!!」
バッグやら何やら、色んな物を放り投げる結。
止めようとした翔を突き飛ばす結。
「私これでも自分のこと
結構いいお姉ちゃんだって思ってたんだよ。
でも、お母さんが死んでから気付いたの。
ホントは長女らしいことなんか何も出来ない。
料理も、洗濯も、掃除も、
希衣たちの面倒もちゃんと出来ないの。
もっとしっかりしなきゃ、
もっと頑張んなくっちゃって思うんだけど、絶対無理なの!
好きな写真だって何も撮る気になれないの!!」
三田が捨てた洋服類に灯油をかけ火をつける。
それを見た翔が三田を殴りつける。
恵一が翔を止める。
「みんな平気なのかよ、お母さんのものがなくなって!
だったらあんなもん燃やしちゃえよ。」
部屋の仏壇に目をやる翔。
すると三田が仏壇を持って来て火の中へ。
萌える仏壇を見ながら翔が言う。
「最悪だよ、俺。
俺さ、お母さんのこと思い出そうとしても、
ガミガミ怒られたり、
『ウザイ』とか『ほっとけ』とか言ったことしか
浮かんでこないんだよ。
もっと優しくしなきゃいけなかったのに、
『いつもありがとう』って感謝しなきゃいけなかったのに、
『酷いこと言ってごめん』って謝んなきゃいけなかったのに、
どうすりゃいいんだよ・・・」
「なんなのこの展開?
みんなで泣いちゃってさ。」
「お前は悲しくないのかよ。
お前、それでも母さんの子かよ!!」
「俺だって泣きたいよ!!
でも、いきなり死なれたら
どうしていいか分かんないだろ?
いくら頑張って私立に入っても、
もう褒めてもらえないじゃん。
お母さんのこと独り占めしてさ、
将来のこととかいっぱい話したかったのに。
もう出来ないじゃん!!
お母さんが何考えてたとか、俺分かんねえよ。
なんで勝手に死んじゃうんだよ!
俺のことどう思ってたんだよ、お母さん!!」
「希衣がいけないの。
希衣のせいでお母さん死んじゃったの。」
「何言ってるんだ? 希衣。」
「希衣、トマト嫌いなのに、
お母さん『食べなさい』って怒るから、
『お母さんなんか、死んじゃえ!』って言ったの。
そしたら、ホントにお母さん死んじゃった。
ごめんなさい! お母さん! ごめんなさん!」
「希衣、だからそんなにお母さんに会いたがってたの?」
「希衣のせいじゃないよ。
だってお母さん、希衣のこと大好きだったし。」
そこへ隣の皆川が出て来て文句を言う。
「ちょっと! 家が火事になったらどうするんです!?」
「ああ、すいません。
三田さん、消して下さい。」
「承知しました。」
ホースで水をかける三田。
その間もグダグダと嫌味を言い続ける皆川に、
三田が水をかける。
「お宅に火が燃え移ってはいけないと
思ったものですから。」
自治会で問題にすると言いながら引っ込んで行く皆川。
翔が燃え残った中に缶があるのを見つけ、
取ろうとしたが熱くて取れなかった。
すると三田が平気な顔をして缶を取り蓋を開ける。
そこには石が入っていた。
「いつかお母さんが自慢してた。
希衣と川に行ったら、キレイな石を貰ったって。
希衣が初めてくれたプレゼントだから、
一生宝物にするんだって。
言ったろ? お母さんは希衣のことが大好きだって。」
「うん!」
「よし、誕生会やろうぜ。 お母さんがいた時みたいに。」
「でも料理とかどうする訳?」
「あぁ、そっか。」
「三田さん、何か出来ませんか?」
「出来ます。」
ケーキはうららが持って来たものがあると。
ろうそくを忘れていたうらら。
「三田さん、ろうそくなんか、ないですよね?」
「あります。」
鞄からろうそくを出す三田。
ろうそくに火をつけて、歌う家族。
海斗がカードを渡す番だと翔。
用意してないと海斗。
「三田さん、カードなんか・・・」
「あります。」
またまた鞄から取り出す三田。
「なんでもある。
プレゼント係はお姉ちゃんじゃなかったっけ?」
用意してないと結。
けど家族で写真を撮り、後でアルバムにしてあげると。
料理が出来上がり、それを食べる家族。
「お母さんの味だ。」
「三田さん、これどうやって?」
「その家庭の味を覚えるのが家政婦の仕事です。」
外でタバコを吸っていた恵一。
「旦那様。」
「ああ、三田さん。
今日はありがとうございました。」
「何がですか?」
「ああ、いや、お陰で子供たちが
母親が死んでからずっと心に溜め込んでた
辛い思いとかを吐き出すことが出来たみたいです。」
それには答えず、超過勤務の請求書を渡す三田。
そして帰って行く三田を呼び止める恵一。
「妻は事故じゃないんです。
妻は自殺なんです。
僕のせいで死んだんです。」
「お話はそれだけですか?」
そう言い、帰って行く三田。
それなりに面白いかな。
無表情の三田さんがかなり気になりますね。
過去に何かあったのかしら。
恵一はもしや会社の女と不倫してたのか?
妻の自殺はそのせいか?
隣人とうららがかなりイラつくわ~(-_-;)