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ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

皇なつき「李朝・暗行記」 は良い漫画でした。

2010-03-10 23:54:36 | 韓国・朝鮮に関係のある本
     

<暗行御史(あんこうぎょし.).암행어사.アメンオサ>というと、何度も映画化されたパンソリ「春香伝」で初めて知ったという人が多いのではないでしょうか?
 暗行御史になって帰ってきた恋人李夢龍がヒロイン春香を危機から救い出す、という物語です。つまり、ドラマの水戸黄門のように、自分の身分をあかさずに地方官の仕事ぶりを探り、不正があれば免職させることもできる、という痛快な役職です。

 漫画「新暗行御史」(原作・尹仁完、作画・梁慶一)は韓国人コンビの作ですが、さまざまな過去の物語の中の人物とか歴史上の実在の人物とかの名前を登場人物の名前につけたり、展開もあまりにもキテレツ(?)で、オジサンはドーモついていけませなんだ・・・。

 ・・・とそこへ、皇(すめらぎ)なつきという漫画家の「李朝・暗行記」(潮漫画文庫)というのを貸してくれた人がいました。
 ホントはパク・ミンギュの短編小説「朝の門」の感想を書くつもりでしたが、つい安易に流れるのが人の常で、この漫画をイッキ読みしたので、コチラを優先します。

 一読して思ったのは、よく調べてるなあ、ということ。
 歴史漫画を描く人は、服・髪型・家・道具類等々、よく描けるなあと感心してしまいます(漫画家にもよる)が、この皇さんはさらにいろんな知識をどういうふうに仕入れたんでしょうかねー?
 韓国語の読み方も、暗行御史(アメンオサ)をはじめ、松都(ソンド)・八字(パルチャ)・鞦韆(ぶらんこ.クネ)・婚家暮らし(シジプサリ)等々、原語に忠実だし、韓国語の歴史用語もいろいろ出てきて、難しいものには注がついています。
 たとえば、以下のごとし。

馬牌(マペ)=暗行御史の証とされた、馬の模様のついた牌。
状元(チャンウォン)=科挙のトップ合格。
使道(サットゥ)=部下が長官を敬ってよぶ言葉。
両班(ヤンバン)=貴族階級。
野人(ヤイン)=野蛮人。(朝鮮人の女真人に対する蔑称)
ソラホー=女真語で朝鮮または朝鮮人。
科挙=官吏登用試験。中国の制度に倣って取り入れた。
顎鬚(あごひげ)三尺でも食えてこそ両班=外見は立派でも食えなくてはどうにもならない
望門寡婦=婚約者に死なれた女性。再婚は許されなかった。
恣女案=良家の子女の間違いを記した書物。官位選定の参考にされたという。
貞烈門=貞女の出た家や土地などに国から与えられた、鳥居に似た門。

 肝心の内容も、朝鮮王朝時代という歴史物で、なかなか味わいのあるストーリーです。
もっと詳しく紹介しようかな、と思ったのですが、<映画/漫画で考える歴史と社会>というブログに、内容紹介のみならず「本作品の時代はおそらく16世紀半ばではないかと思われる」という考察まで述べられていますので、詳細はソチラにお任せしちゃいます。