3月26日の記事「韓国の習いごと1位=「学習誌」をめぐる状況 [1]」の続きです。
先の記事の最後に、「子どもも親も業者も大変」と書いたあと、「また別にとても大変な思いをしている人たちがいて、ニュースにまでなっている」ということを書きました。
その代表的なニュースが、「ハンギョレ」1月29日掲載の「学習誌教師たち 4年間 こだまなき絶叫」です。
つまりは、学習誌教師たちと会社との間の労働問題です。
このニュースで伝えられている個別事例は、学習誌の大手業者・才能教育のケースです。
1999年に教師たちは労働組合を設立し、使用側も2007年までは継続的に労組と団体協約を結んできたのですが、2007年5月に会社側が教師たちの「会員管理手数料(事実上の賃金)」を1人当り10万~100万ウォンずつ削減する方案を通知し、労組執行部はそれを受け入れる団体協約を締結したが、反発した組合員は結局執行部を変え、12月からストライキを始めて現在に及んでいるというものです。
この学習誌教師の労働問題は、単にこの会社の限らず、学習誌会社全般にわたるもので、すでに2005年ある学習誌の教師で学習誌労組の幹部をしている人が書いたブログ記事(→コチラ)
http://cafe394.daum.net/_c21_/bbs_search_read?を見つけて読んでみると、いろんなことがわかってきました。(→日本語自動翻訳)
要点は以下の通りです。
最近SBSテレビの法律関係の娯楽教養番組「ソロモンの選択」(動画)(←ぜひ見てみて!)で学習誌教師の劣悪な労働の現実が取り上げられて多くの人に知らされたのはありがたいことでした。(「行列のできる法律相談所」のパクリでは?と問題にもなった番組ですが・・・。)
昨年(2004年)に公文の女性教師(28)が過労とストレスで死亡し、最近も才能教育の女性教師(23)が営業ストレスで自殺した事件がありました。
しかし、人が働いて傷ついて死んでも、会社も国も、誰一人責任を負う人がいません。勤労福祉公団も「学習誌教師は勤労基準法上の労働者ではないので「産災(산재)」(=労災)の対象から除外される」と繰り返すばかりです。
学習誌教師は80年代末まで正社員でしたが、90年代初頭から会社側によって委託契約職に転換されました。ところが十数年が経った今も、学習誌教師の仕事の本質は変わらず、学習誌資本が売上げを上げるのに不可欠な要素となっています。
会社は、教師を労働者に認めていないながらも、さまざまな業務・不正業務等を強要しています。公文学習、ヌンノッピ、ウンジンシンクビッグ、才能教育等のいわゆるビッグ4とよばれる学習誌会社は、現在年間数千億ウォンの売上げと数百億ウォンの黒字を上げ、負債がほとんどないほどの商売をしています。
まさにその根幹には、このように昼夜を問わず走り回っ学習誌教師がいて、そうするうちに傷つき病んで、会社から首になっても、会社が負うべき負担は全くないというところに学習指導の会社の成長の鍵があります。
このような状況下で、学習誌労組は「世界的にも有数の戦闘的労働組合として知られている」民主労総に属して、2007年から1500日以上も路上闘争を続けているということなんですね。
さらにこの問題のモトはというと、「先のハンギョレ」の記事にもあるように、学習誌教師だけでなく、90年代以降「ゴルフ場キャディー、レミコン運転手、保険設計士、宅急便、バイク便など」約200万人が各会社の正社員から委託契約職のような<特殊雇用職>とされてしまったことにあります。
2月5日の<レイバーネット>の記事(日本語)によると、学習誌教師は一銭の退職金もなく、保険の保証もなく、生理休暇、産前後休暇、育児休職などの基本的な母性の権利もないということです。
そして2007年5月、手数料(賃金)制度の改悪で学習誌教師の賃金が20万~100万ウォン削減される一方、2009年学習誌各社の会長たちの資産をみるとテギョ会長6548億ウォン(6位)、公文会長6327億ウォン(7位、夫人は9位)、ウンジン会長5529億ウォン(26位)、才能教育会長1196億ウォン(48位)等と、いずれも韓国の大富豪に名を列ねています。
このような雇用形態の多様化(非正規雇用の増大)、格差の拡大という大きな社会問題は、まさに日本と軌を一にしていますね。
私ヌルボの苦手なジャンル(←多すぎるが)なので、詳しいことはわかりませんが、決して「日本の方がまだマシ」とは言えないのはたしかです。
日本のさる社会保険労務士事務所のサイトに、次のような使用者側からのあからさまな質問が載っていました。
Q「当社は従業員が高齢化し、人件費も高くなってきています。また、雇用保険や社会保険の保険料の支払負担も馬鹿になりません。業務委託契約や請負契約という形をとれば、これらの保険料支払い義務がなくなると聞きましたが、本当でしょうか。」
回答はとみると、
A「契約が業務委託契約や請負契約であっても、実態が労働者とかわらなければ、社会保険料逃れの偽装契約とみなされかねません。」
と、ごく当たり前の内容。
「実態が労働者」というのは、①指揮監督下で、使用されて働いている。②報酬が賃金の性格を有する。・・・という2つの条件が基準になるようです。
上述のように日韓で共通の根を持つ労働問題があるからには、連帯のようなものがあるのでは・・・、とネット上を探索してみると、やっぱりありましたねー。
1つ目は、<東京西武ユニオン>の2011年11月のブログ記事。「民主労総全国労働者大会に4万人、動労千葉訪韓団も合流しともに闘う」というものです。この記事の出所は「前進・速報版」。
2つ目は<週刊前進>のサイトの「解雇撤回へ1423日」という記事。やはり2011年11月の、この才能教育闘争を伝えたもので、これには「東北大学学生自治会の石田真弓委員長らも参加した」とあります。
これらの記事を掲載している「前進」は、あの中核派の機関紙です。
えっ、あの極左暴力集団! ・・・とみる向きも多いでしょう。この中核派と韓国・民主労総との結びつきについては、<依存症の独り言>というブログに「中核派と連帯する韓国過激派」と題した(やや警戒する立場からの)分析&解説記事がありました。
私ヌルボの見解としては、格差拡大とか非正規雇用のような多くの国民に関わる基本的な問題を、連合をはじめとする労働界が(そしてマスコミも)きちんと取り組んでこなかったから、中核派のようなニッチ的(?)政治集団がそれを取り上げることとなり、闘争が先鋭化してしまう、というパターンになってしまっているのではないかと思います。
これでは、ヌルボのごとき(自称)良識的(or微温的)立場の者は闘争に参画もしくは支援しようがなくなってしまいます。・・・なんてのは愚痴のたぐいなんでしょうね、たぶん。気が重くなるばかりです。・・・と言ってるばかりじゃダメですが・・・。
※「学習誌」という1つの糸の端を引っ張っていったら、「ピアスの白い糸」のようなことになってしまいました。
ところで、あの橋下徹氏は非正規労働者に対してはどのように語っているのでしょうか? 小泉純一郎氏にも懲りずに今度は橋下氏を支持している人たちをみると、イソップ物語の中の、王様を求めたカエルの寓話を連想してしまうのですが・・・。最後に王様=コウノトリ(ツル?)に喰われてしまうカエルです。
先の記事の最後に、「子どもも親も業者も大変」と書いたあと、「また別にとても大変な思いをしている人たちがいて、ニュースにまでなっている」ということを書きました。
その代表的なニュースが、「ハンギョレ」1月29日掲載の「学習誌教師たち 4年間 こだまなき絶叫」です。
つまりは、学習誌教師たちと会社との間の労働問題です。
このニュースで伝えられている個別事例は、学習誌の大手業者・才能教育のケースです。
1999年に教師たちは労働組合を設立し、使用側も2007年までは継続的に労組と団体協約を結んできたのですが、2007年5月に会社側が教師たちの「会員管理手数料(事実上の賃金)」を1人当り10万~100万ウォンずつ削減する方案を通知し、労組執行部はそれを受け入れる団体協約を締結したが、反発した組合員は結局執行部を変え、12月からストライキを始めて現在に及んでいるというものです。
この学習誌教師の労働問題は、単にこの会社の限らず、学習誌会社全般にわたるもので、すでに2005年ある学習誌の教師で学習誌労組の幹部をしている人が書いたブログ記事(→コチラ)
http://cafe394.daum.net/_c21_/bbs_search_read?を見つけて読んでみると、いろんなことがわかってきました。(→日本語自動翻訳)
要点は以下の通りです。
最近SBSテレビの法律関係の娯楽教養番組「ソロモンの選択」(動画)(←ぜひ見てみて!)で学習誌教師の劣悪な労働の現実が取り上げられて多くの人に知らされたのはありがたいことでした。(「行列のできる法律相談所」のパクリでは?と問題にもなった番組ですが・・・。)
昨年(2004年)に公文の女性教師(28)が過労とストレスで死亡し、最近も才能教育の女性教師(23)が営業ストレスで自殺した事件がありました。
しかし、人が働いて傷ついて死んでも、会社も国も、誰一人責任を負う人がいません。勤労福祉公団も「学習誌教師は勤労基準法上の労働者ではないので「産災(산재)」(=労災)の対象から除外される」と繰り返すばかりです。
学習誌教師は80年代末まで正社員でしたが、90年代初頭から会社側によって委託契約職に転換されました。ところが十数年が経った今も、学習誌教師の仕事の本質は変わらず、学習誌資本が売上げを上げるのに不可欠な要素となっています。
会社は、教師を労働者に認めていないながらも、さまざまな業務・不正業務等を強要しています。公文学習、ヌンノッピ、ウンジンシンクビッグ、才能教育等のいわゆるビッグ4とよばれる学習誌会社は、現在年間数千億ウォンの売上げと数百億ウォンの黒字を上げ、負債がほとんどないほどの商売をしています。
まさにその根幹には、このように昼夜を問わず走り回っ学習誌教師がいて、そうするうちに傷つき病んで、会社から首になっても、会社が負うべき負担は全くないというところに学習指導の会社の成長の鍵があります。
このような状況下で、学習誌労組は「世界的にも有数の戦闘的労働組合として知られている」民主労総に属して、2007年から1500日以上も路上闘争を続けているということなんですね。
さらにこの問題のモトはというと、「先のハンギョレ」の記事にもあるように、学習誌教師だけでなく、90年代以降「ゴルフ場キャディー、レミコン運転手、保険設計士、宅急便、バイク便など」約200万人が各会社の正社員から委託契約職のような<特殊雇用職>とされてしまったことにあります。
2月5日の<レイバーネット>の記事(日本語)によると、学習誌教師は一銭の退職金もなく、保険の保証もなく、生理休暇、産前後休暇、育児休職などの基本的な母性の権利もないということです。
そして2007年5月、手数料(賃金)制度の改悪で学習誌教師の賃金が20万~100万ウォン削減される一方、2009年学習誌各社の会長たちの資産をみるとテギョ会長6548億ウォン(6位)、公文会長6327億ウォン(7位、夫人は9位)、ウンジン会長5529億ウォン(26位)、才能教育会長1196億ウォン(48位)等と、いずれも韓国の大富豪に名を列ねています。
このような雇用形態の多様化(非正規雇用の増大)、格差の拡大という大きな社会問題は、まさに日本と軌を一にしていますね。
私ヌルボの苦手なジャンル(←多すぎるが)なので、詳しいことはわかりませんが、決して「日本の方がまだマシ」とは言えないのはたしかです。
日本のさる社会保険労務士事務所のサイトに、次のような使用者側からのあからさまな質問が載っていました。
Q「当社は従業員が高齢化し、人件費も高くなってきています。また、雇用保険や社会保険の保険料の支払負担も馬鹿になりません。業務委託契約や請負契約という形をとれば、これらの保険料支払い義務がなくなると聞きましたが、本当でしょうか。」
回答はとみると、
A「契約が業務委託契約や請負契約であっても、実態が労働者とかわらなければ、社会保険料逃れの偽装契約とみなされかねません。」
と、ごく当たり前の内容。
「実態が労働者」というのは、①指揮監督下で、使用されて働いている。②報酬が賃金の性格を有する。・・・という2つの条件が基準になるようです。
上述のように日韓で共通の根を持つ労働問題があるからには、連帯のようなものがあるのでは・・・、とネット上を探索してみると、やっぱりありましたねー。
1つ目は、<東京西武ユニオン>の2011年11月のブログ記事。「民主労総全国労働者大会に4万人、動労千葉訪韓団も合流しともに闘う」というものです。この記事の出所は「前進・速報版」。
2つ目は<週刊前進>のサイトの「解雇撤回へ1423日」という記事。やはり2011年11月の、この才能教育闘争を伝えたもので、これには「東北大学学生自治会の石田真弓委員長らも参加した」とあります。
これらの記事を掲載している「前進」は、あの中核派の機関紙です。
えっ、あの極左暴力集団! ・・・とみる向きも多いでしょう。この中核派と韓国・民主労総との結びつきについては、<依存症の独り言>というブログに「中核派と連帯する韓国過激派」と題した(やや警戒する立場からの)分析&解説記事がありました。
私ヌルボの見解としては、格差拡大とか非正規雇用のような多くの国民に関わる基本的な問題を、連合をはじめとする労働界が(そしてマスコミも)きちんと取り組んでこなかったから、中核派のようなニッチ的(?)政治集団がそれを取り上げることとなり、闘争が先鋭化してしまう、というパターンになってしまっているのではないかと思います。
これでは、ヌルボのごとき(自称)良識的(or微温的)立場の者は闘争に参画もしくは支援しようがなくなってしまいます。・・・なんてのは愚痴のたぐいなんでしょうね、たぶん。気が重くなるばかりです。・・・と言ってるばかりじゃダメですが・・・。
※「学習誌」という1つの糸の端を引っ張っていったら、「ピアスの白い糸」のようなことになってしまいました。
ところで、あの橋下徹氏は非正規労働者に対してはどのように語っているのでしょうか? 小泉純一郎氏にも懲りずに今度は橋下氏を支持している人たちをみると、イソップ物語の中の、王様を求めたカエルの寓話を連想してしまうのですが・・・。最後に王様=コウノトリ(ツル?)に喰われてしまうカエルです。