ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

韓国総選挙:開票速報を見ながら考える。 与党・セヌリ党の勝利だが・・・。

2012-04-12 23:54:43 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)
 昨晩はずっとKBS1で韓国総選挙の開票速報を見ていました。

 今回初めて見たのですが、すぐ気づいたのは、日本とは違って得票数ではなく得票率の数字(%)で公表されること。なぜなのかはまだ調べていません。

 さて、結果はというと、すでに日本でも報道されているように与党のセヌリ党の勝利。全300議席中過半数の152議席を獲得しました。野党第1党の民主統合党は127議席、最左翼の野党・統合進歩党は13議席、野党(保守)の自由先進党は5議席、無所属が3議席でした。
 韓国全土の各選挙区で勝った政党を色分けしたものが下図です。

赤色セヌリ党
黄色民主統合党
紫色統合進歩党
青色自由先進党

   
     【地方(○○道)により明確に色分けされているのが韓国の政治風土の特徴。】

 セヌリ党の赤色は、この2月シンボル・カラーを赤と白にしました。民主正義党(1981年)当時から使ってきた青をやめて採択したのですが、党内で反対論もあったようです。あの「日本はない」の著者・田麗玉議員は「韓国で赤は韓国戦争(朝鮮戦争)を経験した人たちにとって恐怖」と語ったとか。(2月8日「中央日報」日本語版) サッカーの「赤い悪魔」もすでにあるし、「赤」といえば「パルゲンイ」(共産主義者)という時代でもなくなったのでしょう。運動会は紅白ではなく依然としてなんでしょうね。
 民主統合党の黄色=ケナリ(レンギョウ)も、民主党時代の緑色から変更されました。盧武鉉の大統領選の時のシンボル・カラー。つまり、進歩陣営にとっては、故・盧武鉉前大統領はいまだに大きな象徴的意味がある、ということのようです。
 紫色=チンダルレ(ツツジ)も統合進歩党のシンボル・カラーです。進歩陣営の両党の提携は黄紫連合とよばれました。

 上掲の地図を一目見てわかるように、韓国東北部の江原道はすべてセヌリ党、東南部の慶尚道もほとんどがセヌリ党の勝利。一方、民主統合党は全羅道(西南部)をはじめ首都圏で多く議席を得ています。
 盧武鉉時代に地域主義の打破が叫ばれたりもしましたが、また逆戻りしたのかな? 
 釜山地区で赤色の中にポツンと黄色があるのは、進歩陣営の有力な大統領候補・文在寅(ムン・ジェイン)氏。盧武鉉の精神を受け継いで比例代表ではなくあえて選挙区に出馬して勝利したのですが、ここは大統領候補として、比例代表の方を選んで全国レベルで選挙戦をリードすべきだったとの声もあるようです。

 各選挙区の開票速報を見ていて、最初疑問に思ったのは、たとえばソウルの選挙区では「중구갑」「중구을」等となっていて、「중구」は「中区」でいいとして、次の「갑」「을」は・・・と、しばし考えたら「甲」と「乙」なんですね。蘆原区や松坡区は丙()まで3つに分けられています。
 で、そのソウル特別市の選挙結果を見ると、下の図のように民主統合党30議席、セヌリ党16議席、統合進歩党2議席で、民主統合党の圧勝。

    
       【富裕層が多い江南方面は、やはり保守が強い。】 

 今回の選挙は、事前の報道では進歩陣営が多少有利の予測だったので、やや意外な結果でした。
 韓国サイトで結果の分析をいくつか見てみたところ、セヌリ党の方が切迫感があった。とくに朴槿恵選挙対策委員長の果たした役割が大きかったとされています。2月に党名を変更し李明博大統領も批判して、現政権の評価の争点化を希薄にし、進歩派が専ら唱えていた福祉や経済の民主化を掲げたりしたこと等々。
 一方、進歩陣営は候補者選定をめぐる不祥事が報じられたり、李明博政権批判に大きな影響力をもったネット放送「ナコムス」のメンバーであるキム・ヨンミン候補者(民主統合党・落選)の放言も問題とされたようです。

 さて、今回の選挙についての私ヌルボの感想です。
 いつものことですが、韓国の左右両派のミゾは深すぎます。どちらが勝っても、今後タイヘンだと思います。セヌリ党が過半数を占めたといっても、首都ソウルでは完敗だし・・・。
 「左右両派のミゾ」と言えば、メディアもまさに真っ二つ。「朝・中・東」と総称される保守系3紙(「朝鮮日報」「中央日報」「東亜日報」)と対する左派系の「ハンギョレ」や「京郷新聞」はそれぞれの応援団と化して相手陣営のネガティブ・キャンペーンを展開するし・・・。日本の「朝日」対「読売」「産経」の比ではありません。

 セヌリ党が勝って良かったかどうか? うーむ、わからん。今後次第? 以前のヌルボならほとんど無条件で革新支持だったのですが・・・。今回も、格差を拡大させた現政権を批判し、米韓FTA反対を叫ぶ進歩陣営支持者の気持ちは非常によくわかります。ただ強い親北・反米民族主義の性向はちょっとねー・・・。
 上記4党以外に小さい政党が約20ばかりあって、その中に「緑の党(녹색당)」があります。3月5日の「朝日新聞」に「脱原発掲げ韓国「緑の党」誕生」という記事が載っていて、副見出しに「4月総選挙の争点に」とあったので若干注目していたのですが、得票率は0.5%にとどまっていました。

 先に韓国は左右のミゾが深すぎると書きましたが、その分各政党の主張がわかりやすいともいえます。
 日本の場合は同じ政党でも人により消費税とかTPPとかについての賛否も違うし、実にわかりにくいです。各新聞・雑誌は、当落予想記事より先に、各立候補予定者が、たとえば原発の存廃・消費税率upの賛否・TPP参加の是非・憲法改正の賛否・沖縄米軍基地存廃・大きな政府or小さな政府等の項目についてアンケートを取って一覧表を作ってほしいものです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする