<ソウルで買い込んだ本[その4 漫画で見る韓国の過去と現在①]最近の大ベストセラー、ユン・テホ「未生」>の続きです。
漫画③チェ・ギュソク「泣くには少しあいまいな」

【このタイトル、読みにくいですが「울기엔 좀 애매한」です。立って笑っている少年が主人公ウォンビン。】
今回は、すでにイッキに読み終えた漫画です。
この漫画、正確には私ヌルボが買ったのではなくて、プレゼントとしていただいたものです。
読み始めてすぐ気づいたことは、この作者チェ・ギュソクの「100℃」と「漫画チャジャンミョン」という作品をすでに読んでいたこと。
「100℃」は80年代民主化闘争の中で投獄された若者とその母の話、「漫画チャジャンミョン」は、詩人・作家のアン・ドヒョンが中華料理屋の出前持ちの少年の成長を描いた<大人の童話>「チャジャンミョン」が原作です。
どちらも、厳しい社会状況で懸命に生きる人々を描いた漫画ですが、この「泣くには少しあいまいな」は、まさに現代の若者にとって切実な問題を具体的に扱っています。
それは「大学登録金(대학등록금)」問題。つまり大学入学金+授業料が高額であること。そのために親の負担が大きく子どもを進学させられなかったり、大学に入れてもアルバイトに追われて休学することになったり大きな借金を背負い込んでしまったり等々。
この本が刊行されたのが2010年6月ですが、それ以前から問題化していたようです。これについては、2011年6月の→コチラのブログ記事に詳しく記されています。
で、この漫画の内容ですが、舞台は美術系大学をめざす受験生のための美術学院。「学院(학원)」とは日本の予備校・塾のことです。主要登場人物は、そこの漫画科に通い始めたカン・ウォンビン(←顔は名前と正反対!)。離婚して食堂を切り盛りしている母親が苦しい中無理して彼を学院に行かせるのです。その学院の先輩ウンスは、いい大学に受かったものの登録金が払えずバイトを続けながらの学院通い。そのバイトの収入を母親が勝手に下ろしてしまいますがそれにも事情があります。そして学院の講師チョン・テソプ。この人物像には、2、30代にやはり美術学院で教えていた作者自身が投影されているようです。その他カップラーメンが昼の常食になっているやはり苦しい生活の女生徒たち。1人いる金持ちの娘は結局金の力で「随試(수시)」(随時募集)つまり推薦入試で合格してしまいます。彼女を責める女の子たちに対し彼女を弁護したいウォンビンは「金も才能だ」と言いますが、それに対する女の子たちの反駁がとても真に迫っています。ウォンビンに「顔がかわいいのも才能だから飲み屋で高い時給がもらえる」と言われた女の子は「かわいいおかげで時給7千ウォンもらってありがたいけど、オンマが病気なのも才能なの?」とつめよられたり・・・。
私ヌルボ、大学登録金問題が今も続いていることは知っていましたが、この漫画を読んでその現実を具体的に知ることができました。

【このタッチはいかにも美術学院の先生らしい雰囲気です。日本に同じような画法の漫画家いるかな? 】
この本の表紙裏にチェ・ギュソクの紹介が書いてありました。
1977年生まれ。智異山(チリサン)の麓の山奥の村で建設労働者の子ども6人の末っ子で、生徒数100人の小さな初等学校に通っている時にソウルの子どもたちから「恵まれない友だちに」送られてきた物の中に漫画雑誌があったのが漫画との最初の出会い。都会に転校して中高生当時は漫画を描くヤツとしてちょっと知られ、高3の時に友人に脅されて一緒に美術学院に通い、祥明(サンミョン)大学に4大初の漫画学科が設けられたその年、級長に「おまえのためにできたような学科だな」と言われた言葉を真に受けてそこに進学したとのこと。
1998年の新人漫画公募展での金賞受賞、以後漫画家として初めて固定収入を得た作品が2004年から「京郷新聞」で連載された「湿地生態報告書」。昨年(2012年)6月KBSでドラマ化され、10月にKBS WORLDでも放映されました。(→コチラ参照。)
私ヌルボは見なかったというか、知らなかったというか、それ以前にこのタイトルから自然関係(生物学関係)の作品かと誤解していたんですけど・・・。

【「湿地生態報告書」の表紙。「泣くには少しあいまいな」とはかなりタッチが違います。】
<YES24>のサイトでこの「泣くには少しあいまいな」について見たら、<韓国出版文化振興院 推薦図書>となっていて、なーんだ、これはプレゼントしてくれた彼女の勤務先の推薦じゃないの、というわけで、彼女及びその勤務先及びこの本や作者及び李明博(→朴槿恵)等々をめぐる政治的背景までいろいろ考えてしまいましたよ。(その内容は略す。)
漫画③チェ・ギュソク「泣くには少しあいまいな」

【このタイトル、読みにくいですが「울기엔 좀 애매한」です。立って笑っている少年が主人公ウォンビン。】
今回は、すでにイッキに読み終えた漫画です。
この漫画、正確には私ヌルボが買ったのではなくて、プレゼントとしていただいたものです。
読み始めてすぐ気づいたことは、この作者チェ・ギュソクの「100℃」と「漫画チャジャンミョン」という作品をすでに読んでいたこと。
「100℃」は80年代民主化闘争の中で投獄された若者とその母の話、「漫画チャジャンミョン」は、詩人・作家のアン・ドヒョンが中華料理屋の出前持ちの少年の成長を描いた<大人の童話>「チャジャンミョン」が原作です。
どちらも、厳しい社会状況で懸命に生きる人々を描いた漫画ですが、この「泣くには少しあいまいな」は、まさに現代の若者にとって切実な問題を具体的に扱っています。
それは「大学登録金(대학등록금)」問題。つまり大学入学金+授業料が高額であること。そのために親の負担が大きく子どもを進学させられなかったり、大学に入れてもアルバイトに追われて休学することになったり大きな借金を背負い込んでしまったり等々。
この本が刊行されたのが2010年6月ですが、それ以前から問題化していたようです。これについては、2011年6月の→コチラのブログ記事に詳しく記されています。
で、この漫画の内容ですが、舞台は美術系大学をめざす受験生のための美術学院。「学院(학원)」とは日本の予備校・塾のことです。主要登場人物は、そこの漫画科に通い始めたカン・ウォンビン(←顔は名前と正反対!)。離婚して食堂を切り盛りしている母親が苦しい中無理して彼を学院に行かせるのです。その学院の先輩ウンスは、いい大学に受かったものの登録金が払えずバイトを続けながらの学院通い。そのバイトの収入を母親が勝手に下ろしてしまいますがそれにも事情があります。そして学院の講師チョン・テソプ。この人物像には、2、30代にやはり美術学院で教えていた作者自身が投影されているようです。その他カップラーメンが昼の常食になっているやはり苦しい生活の女生徒たち。1人いる金持ちの娘は結局金の力で「随試(수시)」(随時募集)つまり推薦入試で合格してしまいます。彼女を責める女の子たちに対し彼女を弁護したいウォンビンは「金も才能だ」と言いますが、それに対する女の子たちの反駁がとても真に迫っています。ウォンビンに「顔がかわいいのも才能だから飲み屋で高い時給がもらえる」と言われた女の子は「かわいいおかげで時給7千ウォンもらってありがたいけど、オンマが病気なのも才能なの?」とつめよられたり・・・。
私ヌルボ、大学登録金問題が今も続いていることは知っていましたが、この漫画を読んでその現実を具体的に知ることができました。

【このタッチはいかにも美術学院の先生らしい雰囲気です。日本に同じような画法の漫画家いるかな? 】
この本の表紙裏にチェ・ギュソクの紹介が書いてありました。
1977年生まれ。智異山(チリサン)の麓の山奥の村で建設労働者の子ども6人の末っ子で、生徒数100人の小さな初等学校に通っている時にソウルの子どもたちから「恵まれない友だちに」送られてきた物の中に漫画雑誌があったのが漫画との最初の出会い。都会に転校して中高生当時は漫画を描くヤツとしてちょっと知られ、高3の時に友人に脅されて一緒に美術学院に通い、祥明(サンミョン)大学に4大初の漫画学科が設けられたその年、級長に「おまえのためにできたような学科だな」と言われた言葉を真に受けてそこに進学したとのこと。
1998年の新人漫画公募展での金賞受賞、以後漫画家として初めて固定収入を得た作品が2004年から「京郷新聞」で連載された「湿地生態報告書」。昨年(2012年)6月KBSでドラマ化され、10月にKBS WORLDでも放映されました。(→コチラ参照。)
私ヌルボは見なかったというか、知らなかったというか、それ以前にこのタイトルから自然関係(生物学関係)の作品かと誤解していたんですけど・・・。

【「湿地生態報告書」の表紙。「泣くには少しあいまいな」とはかなりタッチが違います。】
<YES24>のサイトでこの「泣くには少しあいまいな」について見たら、<韓国出版文化振興院 推薦図書>となっていて、なーんだ、これはプレゼントしてくれた彼女の勤務先の推薦じゃないの、というわけで、彼女及びその勤務先及びこの本や作者及び李明博(→朴槿恵)等々をめぐる政治的背景までいろいろ考えてしまいましたよ。(その内容は略す。)