愛する犬と暮らす

この子たちに出逢えてよかった。

いまシェラを襲う犬がいたらぼくは容赦しない

2012-01-27 21:48:27 | がんばれ、シェラ!

☆うちの子は特別だと思いたい
 犬を愛する人ならだれもが犬の持つ高い能力を知っている。
 人間と言葉を介しての意思の疎通はできないが、言葉など介さずともちゃんとこちらの気持ちを理解してくれる。もっとも、犬のほうは人間の言葉をかなり理解しているから、うかつなことはいえない。飼い犬を見くびってヘタなことをしゃべると、「愚かな主人だな」と犬から侮られることになる。 
 
 そんな犬とくらべたらはるかに劣るものの、人間のほうだって愛犬の気持ちがわかるのだから、やっぱりお互いにそれなりの能力を有しているということだ。もっとも、飼っている犬の気持ちなどさっぱりわからない飼主も少なくない。人間は愛情がなければ犬の気持ちなどわかるはずもない。だが、犬のほうは飼主へ例外なく愛情を捧げているからどんな飼主でも犬には筒抜けになっている。
  
 犬がこうした特殊な、そして高い能力を備えていることを愛犬家(犬を飼い殺しにしているような輩にはさっぱりわからないだろうが)ならだれでも知っている。もし、勘違いがあるとするならば、「ウチの子だけがおりこうな犬」という思い込みである。わかっていても、やっぱり「うちの子は特別だな」と思いたい。


☆なぜ、このルートをいこうとするんだい?
 昨日、そして今日、朝のシェラのがんばりを目にすると、ぼくには、「お父さん、がんばろうね!」という彼女からのメッセージが聞こえてくる。「わたしだってこんなに頑張ってるんだよ」と……。
 萎えてしまった足でよろけそうになりながら、ときにはよろけながら、シェラは今朝も目をみはるほどの距離を歩いてみせてくれた。
 
 不思議なのは、昨日とは反対の方角へと自分の意思で歩き出したことだ。この方角は去年までの元気だった当時のルートになる。ここではシェラを天敵のように狙う秋田犬とときおり遭遇する。シェラはそれを嫌がり、いかなくなったいきさつがある。
 この秋田犬にシェラは二度にわたって襲われた。最初は不意を衝かれて背中を噛まれた。二度目はぼくが割って入りことなきをえたが、いずれも飼主のオヤジがわざとリードを放して襲わせたのではないかとぼくはいまも疑っている。
 
 体力の衰えとともにこのコースを嫌がったのは、この秋田犬の影に怯えたことも理由のひとつだった。シェラを見つけ、わざと近づいて威嚇する飼主にぼくは警告している。
 「三度目は、その犬をぼくが殺しますよ」
 本気ではないが、それくらいいわないとまた同じことをやりかねない見るからに愚昧そうな男である。
 
 とはいえ、体力の衰えたシェラやむぎを守りながら獰猛な犬と戦うのはぼくにも大変な負担になる。シェラがこのコースを嫌がり、やがて拒否するようになったのを潮にもう1年近く近づいていない方角だった。 


☆もし、三度目の襲撃があったなら…
 そんな方角へ歩き出したシェラをぼくは、「もういい。無理するなよ……」といって制した。すっかりやつれてしまった姿がぼくにはなんとも忍びなかった。すでに昨日と同じくらいの距離をきてしまい、帰り道をよろけながら引き返した。シェラはぼくの顔を見返すこともなかったが、たどたどしく歩く彼女は、ぼくを元気づけようとしているとしか思えない。
 
 犬の能力を知らない人からは、「そんなバカな。あんたの思い過ごしだよ」と揶揄されるだろうが、それでもぼくはもう二度と、「シェラ、疲れたよ」などという弱音は吐くまいと心に決めた。そして、自分の身体もままならないシェラを心配させてしまったことをいまは激しく恥じている。
 
 よろけて歩くシェラを見て、あの秋田犬の飼主なら、「しめた!」とばかりまたリードを放すに違いない。いま、もし、あの秋田犬が襲ってきたら、シェラとルイを守るためにぼくは全力で戦い、躊躇せずに締め殺してしまうだろう。互いの不幸を招かないためにも、今朝、途中で引き上げてきたのは正解だった。