大気が不安定で、いつ、天候が急変するかわからない。
東京には、朝からそんな予報が出ていた。
昼近くにはやや強めの雨が通り過ぎていった。13時をまわると、たちまち、晴れて夏の空が広がった。
なんとも目まぐるしい。
雨雲が去り、晴れてからも雲は忙しく動き、陽射しはたびたび隠された。やっぱり、いつ変わってしまうかわからないきょうの空だ。
ルイの夕方の散歩がどうなるのか心配している。
もう、雨のなかの散歩はうんざりだ。それに、雨が降ればいつ雷に見舞われるかわからない。
だが、太陽に照らされた空の下に出ていくのもつらい。
この青空が残っていたら、確実に散歩の時間を遅らせなくてはならないだろう。
思い切って日没後に出たほうがいいかもしれない。梅雨が明けてしまえば、当分は連日、そんな時間帯の散歩となるはずだ。
いまは、ぼくは老犬といっしょに冷房のきいた部屋でのうのうと過ごしている。
そうしなかったら、どちらも熱中症にやられてしまいかねないからだ。
去年の夏はどうやってすごしたのだろうか。
ほとんど覚えていない。
もっとも、あれから確実に1年、ぼくもルイも老いている。
去年を振り返っても意味がない。
地獄の季節がはじまる。
地獄の季節——アルチュール・ランボーにそんな表題の詩集があった。若かったころ、(もちろん、翻訳されたものを)読んでいるが、すっかり忘れてしまった。
ランボーが生きた19世紀なんて遠い昔だ。若かったぼくが生きた20世紀だって昔になってしまった。
ただ、地獄の季節は変わりなくやってくる。