ソファーの前に置いた小さなテーブルのうえに電子書籍の端末を置いて電子書籍を読んでいた。
文字が大きくなるので使っているだけなのだが、今夜はなぜか落ち着かない。
すぐに理由がわかった。
じっとこちらをうかがうふたつの瞳があったからだ。
もちろん、ルイの目である。
いつもなら爆睡しているはずなのに、ぼくを見ていた。
理由は簡単だ。
ぼくがポップコーンをつまんでいたからである。
ほかのものを食べていると寄ってくるのに、今夜は見張っているだけなのは、ポップコーンは決してもらえないとわかっているからだ。
これが「たべるにぼし」なんかつまんでいたら、見ているだけじゃなくて足元へきてもらえるのを待っているだろう。
でも、自分の食べ物じゃないからねだったりはしない。
ひたすらぼくの気まぐれに期待する。
たいていぼくが根負けして、ちょっこっと分け前をやってしまうからだ。
しかし、ポップコーンは塩分たっぷりだからルイにやったりしない。
ルイもそれを知っている。
だから見ているだけだった。
だが、じっと見ていればもうひとつの可能性が生まれる。
もしかすると、自分に気がついたトーちゃんが別のおやつをフンパツしてくれるかもしれない。
しかたない。
トウちゃんは、ポップコーンをひとりで食べていたうしろめたさもあって、ワンコ用ビスケットの缶に手を伸ばしてしまった。