
朝の散歩の途中、中間の折り返しからだいぶ歩いたところで小休止した。
暑くないときだったら休まずに歩き通してしまういつもの散歩コースだ。
梅雨明け以来、やってきた猛暑でルイはすぐに呼吸(いき)が上がってしまう。
きのうの朝の散歩からこまめに休み、後半では5分ほどの小休止を入れている。
小休止は、ルイとぼくの給水タイムでもある。
前の晩から冷蔵庫で冷やしておいた広口の水筒の水に氷を入れて持参している。
これをルイと分けあって飲む。
水だけで500mlはあるが、分けあって飲むとギリギリで2回分というところか。
ルイのオシッコを洗い流す水は別に430mlのペットボトルを2本持っているので、夏は水だけでけっこうな量と重さになる。
休憩中、きのうの夕方、久しぶりに逢った2歳の雑種のワンコがやってきた。
きのうはまったく方角違いの場所で逢っていた。
南町田にあるグランベリーパークまでいき、3時間あまり歩いていると、彼を連れているお父さんがいっていた。
逢ったのが午後6時ごろだったから、暑さがハンパない3時には散歩を開始したことになる。
ワンコも若いし、たぶん、まだ50代のお父さんもしごく元気である。
今朝もまたグランベリーパークまで行くつもりだという。
彼らを見送りながら、ふと、2歳ごろのルイを思い出していた。
ぼくたちにもあんな時代があった。
ルイはヤンチャ坊主だった。
スケートボードとキックボードを目の敵にして激しく反応する。
オートバイを追いかけようとする。とくに郵便局の赤いオートバイを敵対視した。
もっとも、これらはいまもって変わらない。
ただ、ずっとほかのワンコや人間たちにフレンドリーだったので、苦労したという実感はなかった。
寒さにはもちろんだが、暑さにも強かった。
ぼくの唯一の趣味だったキャンプに、一年中つきあわせた。
テント類の設営と撤収のときだけは、ポールを嫌い、ずっと吠えるので、クルマのなかの旅行用ケージに閉じ込めておいた。
あとはずっといっしょだった。
深夜、ぼくが眠ってからテントの出入り口のファスナーを鼻先で器用に開けて脱走し、さんざん遊びまわってから別のテントへ入っていって、同行した家族全員を起こしてしまったこともある。
だが、ルイはヤンチャ以上の悪さはしなかった。
あのころ、70前のぼくもまだ元気いっぱいだった。
真冬もルイとのキャンプを楽しんでいた。
昔をなつかしんだところで得るものはなにもない。
さあ、いこうか。
ルイをせかして立ち上がり、残りの1,000歩あまりをゆっくり歩き出した。