Dr.K の日記

日々の出来事を中心に、時々、好きな古伊万里について語ります。

染付 菊花(格子?)に笹文 小碗

2021年05月14日 13時08分36秒 | 古伊万里

 今回は、「染付 菊花(格子?)に笹文 小碗」の紹介です。

 これは、平成8年に、東京・平和島の「全国古民具骨董まつり」で買ったものです。

 

正面

笹文は、全体で3箇所描かれています。

 

 

見込面 (「銘」は不明)

 

 

底面

 

生 産 地 : 肥前・有田

製作年代: 江戸時代前期

サ イ ズ : 口径;7.9cm  高さ;4.7cm  底径;3.3cm

 

 

 これにつきましては、既に、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で紹介していますので、まず、その紹介文を、再度、次に掲載いたします。

 

 

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        <古伊万里への誘い>

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*古伊万里ギャラリー141 古伊万里様式染付菊花(格子?)に笹文小碗 (平成21年11月1日登載)

 

 

 しっとりとした地肌、とろんとした地肌で、いかにも柔らかみや温もりを感じさせる。
 それで、焼きが甘く、やや甘手なのかなと思って指で弾いてみるが、カン、カン、キン、キンという金属的な音がする。
 十分に焼成されている証拠である。いわゆる生掛け焼成なのであろう。

 最近、たまに、同手のものを見かけるが、それは、もっと白っぽく、もう少し青みがかった地肌で、カキット焼き上がっており、柔らかみとか温もりといったものを感じさせない。そちらの方は、一度、素焼きしてから本焼きしたのであろう。

 純粋鑑賞陶磁の観点からならともかく、骨董の観点からみたら、断然、生掛けの方に軍配が上がる。

 だいたいにおいて、磁器は食器になってしまうので、磁器製の猪口の場合は、酒という液体を徳利からいったん移し、それを口に運ぶだけの器になりがちだから、いわゆる「酒器」には向かないようである。
 ただ、生掛け焼成の磁器の場合には、そこに柔らかみや温もりを感じることが出来るので、食器だけにとどまらない何かがあり、「酒器」の仲間入りが出来るようだ。

 この小碗の文様は、菊花文を描いたのか格子文を描いたのか、よくわからないところがある。でも、これまた、純粋鑑賞の観点からではなく、骨董の観点なり、いわゆる「酒器」の観点からみれば、はっきりしない方に軍配が上がる。「菊花文」なのかな~、それとも「格子文」なのかな~と思わせるところに面白みがあるからである。骨董とは不思議な世界である。

 また、「菊花文」か「格子文」の中に笹のようなものが描き込まれている。いかにも手慣れていて、「笹」を描いたのかどうかもわからない。この点も、また、この小碗に、骨董の観点なり、いわゆる「酒器」の観点からすれば、点数を上げる材料を提供している。

 

江戸時代前期    口径:7.9cm  高台径:3.3cm  高さ:4.7cm

 

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*古伊万里バカ日誌74 古伊万里との対話(菊花(?)文の小碗) (平成21年10月筆)

登場人物
  主 人 (田舎の平凡なサラリーマン)
  菊 子 (古伊万里様式染付菊花(格子?)に笹文小碗)

 

 

・・・・・プロローグ・・・・・

 季節は移り、朝晩はめっきり肌寒くなり、花も「菊」の香る頃となってきた。
 主人は、何ぞ、「菊」にまつわる古伊万里はないものかと、押入れ内を捜していたが、何やら「菊」にまつわりそうなものを見つけ出し、引っ張り出してきた。
 どうも、主人のところの「コレクション」には「?」マークが付くものが多いようである。ようするにガラクタが多いということであろう。

 


 

主人: もうすっかり「菊」の季節だね。先日も、家庭菜園から食用菊の花を摘んできてお浸しにして食べたところだ。子供の頃は、なんとも苦くて好きになれなかったが、年齢を重ねると味覚も変わるんだね。今では、そのほろ苦さが美味しく感じられるんだよ。
 それで、今日は、「菊」に関係した古伊万里と対話をしたくなったのでお前に出てもらったんだが、よ~く見ると、果たして、お前は菊花文なのかどうか、わからなくなってきたな~。

菊子: そうですね。お皿ならば、はっきりと菊の花のようになりますから、明確なんですけれど・・・・・。

主人: 碗のような形になると、花ビラの外側と内側の幅が同じになってしまうので、菊花文に見えないんだよね。むしろ、格子文のように見えてしまうんだよね。でも、まっ、一応、「菊花文」ということにしておこう。
 ところで、お前を買うに当たっては、ちょっとした思い出があるんだ。

菊子: どんな思い出ですか?

主人: お前のことは、平成8年に東京の骨董市で買ったんだ。その頃は、お前のような手は珍しかったので、新鮮さを感じ、じっとみつめていた。「いいな~」と思ってみつめていた。
 そうしたら、店の老婦人が静かに近寄ってきて声をかけてきた。骨董屋の老婦人にしては物静かな、上品な方だったな。

 

老婦人: お気に入りになられましたか?
 これは、手前どもの主人が気に入っていて大切にしていたものなんです。時々、晩酌のお供にしていたものです。でも、その主人も老いてきまして、また、体の具合も悪くなってきまして、この骨董市にも出てこれなくなってしまったんです。ですから、今日は、私が代役で出席しているんですよ。次回からは出展せず、今回が最後ということで、特別に持ってきて飾りました。
 気に入ってくれた方に求めていただき、大切にされるなら、主人も喜びますし、この器も喜ぶことでしょう。気に入っていただけたなら、お勉強させていただきますよ。 

 

と、まあ、そのようなことを言われたんだ。
 でもね~、だいたいにおいて、骨董屋の言うことなんて、口から出まかせの偽りばかりが多いので信用しないことにしているんだが、その時ばかりは真に迫るものがあったので信用することにし、買うことに決めたんだ。もっとも、言葉なんかよりも、お前そのものにほれこんだから買ったんだけどもね。
 その後、その骨董市では、くだんの老婦人の姿は見かけないので、その話は本当だったのかもしれないね。老婦人にはちょっと東北ナマリがあったから、東北の方から東京の方にまで出展するのは大変だったんだろうね。

菊子: そういういきさつがあったんですか。
 でも、私は、ご主人の晩酌のお供にされていませんよね。

主人: うん。買った当座は、そんな話を聞いたもんだから、時々、晩酌に使っていた。でもね、お前はちょっと大き過ぎるんだよね。ドブロクでも飲むのならまだしも、清酒を飲むには大き過ぎるんだ。私は酒はそんなに弱い方ではないんだが、それでも、ちょっと大き過ぎるように感じた。老婦人の話が本当だとすると、老婦人のご主人というのは相当な酒豪だったんだろうね。東北には酒に強い方がいるというからね。それで、だんだんと使わなくなってしまって、押入れに入れっぱなしになったわけだ。

菊子: そうでしたか。でも、それではちょっと、寂しいものがあります。また晩酌のお供をさせてください。

主人: わかった、わかった。また、たまに使うことにしよう。

菊子: ところで、私のようなものは、今でも珍しいんでしょうか。

主人: そうそう。それなんだけどね。当時は珍しいと思って、ありがたがっていたんだよ。ところがね、最近、時々、見かけるようになったんだ。場合によっては5個組になって売られている時もあるんだ。そんなのを見るとがっかりするね。な~んだ、「珍品ではなかったんだ!」ってね。

菊子: そういうことってよくあることなんですか。

主人: それは、個人的な問題もあるね。行動範囲が狭かったり、勉強不足だったりの場合は、井の中の蛙で、自分ひとりだけが珍品と思っている時もあるだろう。まっ、それはさておき、ある時点では珍品だったけど、その後、ぞくぞくと登場してきてしまって、陳腐なものになってしまったというような例はあるね。例えば、中国の古い物なんか、昔は珍品で高価だったけど、ある時期、香港やマカオなどを経由して大量に出回るようになってからは、それほどではなくなってしまったからね。古伊万里だって、柿右衛門のものなど、昔は数も少なく、馬鹿みたいに高かったけど、ヨーロッパから逆輸入されるようになってからはずいぶんと安くなったと思うよ。

菊子: 私の場合は、類品が海外から多く入ってきたというような事情はないようですから、結局は、ご主人が井の中の蛙だったんでしょうか。

主人: どうなんだかね~。お前を買った当座もその後も、ず~っと見かけなかったんだよね。まんざら、私が井の中の蛙だったとも思えないんだがね。

菊子: そうなんですか。それじゃ、新しく作られて、それが出回るようになったんでしょうか。

主人: それがね、最近作られた物という感じではないんだよ。結構時代は感じられるんだ。ただ、お前よりは若い感じはあるがね。江戸後期というところかな。
 そこで、私の想像するところは、こうだ。お前のような手の物は人気があったので、江戸の前期からずっと作り続けられてきて、江戸後期の頃まで作られてきた。江戸後期になると、旧家なんかでは50客分単位で買い求めることも稀ではなかった。で、それが最近、何らかの事情で旧家から放出されれば、一つの旧家からだけでも50個が市場に出回ることになるわけだ。そういう物がたまたま目につくようになったと・・・。

菊子: それでは、私は、江戸後期ではなく、もっと古いんですか。

主人: 前にも言ったとおり、お前のことは平成8年に買ってるんだけど、その時の記録では「江戸前期」と判断して買っているね。今もその判断に誤りはないと思うんだけど、どうも、このような事情になってくると気持ちもぐらつくね。「江戸前期」まではないのかな~と。でも、「江戸中期」まではバッチリあると思うんだけど・・・・・と。 トホホだね。

菊子: ご主人、しっかりとしてくださいよ!

 

 

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 以上の紹介文からも分かりますように、この小碗の製作年代につきましては疑問が残るところです。

 でも、これを売っていた骨董屋の老ご夫妻の人柄を信じ、また、これを江戸前期と信じて愛してやまなかった骨董屋の老ご主人のこの小碗への思い入れを尊重し、今なお、江戸前期としておこうと思います(^-^*)