岐路に立たされる巨峰栽培

2010-07-11 01:25:14 | 趣味・野良仕事
巨峰の異常事態について昨日のブログに書きました。異常事態とは巨峰の花が咲いてもきちんと実を結ぶことができないということです。一般的に植物は雌しべに雄しべの花粉がついて受精し、実を結ぶことによって次の世代にいのちを伝えます。受精とは生命の一番基本的な生殖活動です。

しかし巨峰の場合雌しべだけで実を結ぶことがあります。これを生物学では「単為生殖」、農業用語では「単為結果」(たんいけっか)といいます。こうなるとタネはできず小さな果実しかできません。生殖活動がきちんと行えない、次世代にいのちを伝えられないということは生物にとって致命的でもあります。もちろん商品価値も著しく下がってしまいます。

一つの房の中に普通の大きさの粒と単為結果の粒が混在するこうした巨峰を、市場では「親子ブドウ」という名称で販売しています。味わいには何も変わりはありませんし、中にはタネがないからいいというお客様もいらっしゃいますが、普通の巨峰とはとても比較にはなりません。

こうした単為結果がなぜ起こるのか、いまだにそのメカニズムはわかっていません。開花期の温度や天候などが影響するといわれていますが、今年の場合暖かかくそんなに雨にあったわけでもありません。今年こそはいい巨峰ができると思っていたのですが、例年以上に単為結果が多く、巨峰農家はいま茫然自失といった状況です。

農協の技術員さんの話では東御市だけにとどまらず、長野県北部の須坂市や中野市でも同様だそうです。温暖化の影響ではないかという意見もあります。確かに4月に雪が降ったり5月には低温が続いたりしました。

もともと巨峰は育てにくい品種でした。それを長年かけて新しい栽培技術を開発し、手を掛けて育ててきたものです。わが家でも巨峰を育て始めてから40数年になります。こうした単為結果はこれまでにも少なからずありましたがここ5年ほど特にひどくなっています。

毎年毎年、今年こそはいいものを作ろうという意気込みで取り組むのですが、その期待が裏切られることが多くなっています。やはり温暖化の影響なのでしょうか。この地域で巨峰栽培を続けるには限界があるのか、施設園芸にするべきなのか、新しい品種に取り組むべきなのか、巨峰農家はいま岐路に立たされています。

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