めったに味わえないほど
うまみ深いドキュメンタリー!
**********************************
「カーマイン・ストリート・ギター」74点★★★★
**********************************
ニューヨーク、カーマイン・ストリートにある小さなギター店
「カーマイン・ストリート・ギター」。
この店の一週間を追うドキュメンタリーです。
ルー・リードをはじめ
ボブ・ディラン、パティ・スミスらも愛用するギター店だそうで
まず
頑固なギター職人おじさんが登場するのかな~と思いきや、
え、すげえキュートな女の子がギターを作ってる?!という
意外な導入部から、グッと惹きつけられました。
しかも彼女、この店の若い弟子らしいんす。・・・・・・キャー素敵!
店主のリック・ケリーは
ニューヨークの建物を解体した際に出る古材を使って、ギターを作っていて
まあおじさんだけど、割と柔和で、優しそう。
で、映画は店の月曜日から始まる。
店はとても静かで
80近そうな店主のお母さんが店番をしていて
なんだか居心地よさそうな空気が流れている。
そこにふらっとジム・ジャームッシュが来店したり
パティ・スミスバンドに所属するギタリストがやって来たり。
そして
客と店主の会話から
店の成り立ちや、ギター作りの過程、
店主やその弟子のヒストリーが自然に紹介されていく。
監督が口を挟むのではなく、「場」と「人」と「音」を主役にした
この運びが、実にうまい。
なぜ、NYの古材を使うのか?と客が聞き、
「1800年代の古材は乾燥していい具合に共鳴するんだ」と店主が答え、
実際にそのギターを、客が試し弾きしたりする。
その音が、本当に普通のギターと違ってる!というのが
素人のワシにもよーくわかるんです。
特にビル・フリーゼル氏(現代ミュージックシーンの重鎮ギタリスト、だそうです)がつまびく演奏、
うわ、キター!って感じ。
ここに集う人々は
ギターを、音楽を愛し、そして店主同様「木」や、自然を愛してる。
誰も決してバリバリに着飾ったりしてなくて
ラフなTシャツや、ちょっとよれたシャツで
「いや~儲かんないよ~カツカツだよ~」みたく言うけれど
でも、なんだか、この上なく幸せそうで、「豊か」にみえる。
彼らは自分に、そして人生に何があればいいのか
わかっているんだなって
これぞ人生の真の豊さだな、と感じて
心底うらやましくなりました。
映画中で、店主リックが火曜日にゲットした1850年代のバーの古材から、
木曜日にギターが出来上がる様子も描かれるんですね。
そして金曜日に聴く、
そのギターの音色といったら!
いや~マジびっくりしました。
ホントに長年、酒と煙草の煙が染みこんだ、
上等なバーボンみたいな、うまみとコクの味わいなのだ!
素人のワシでもわかるこの違い、
ぜひ、映画館で味わってみてください。
★8/10(土)から新宿シネマカリテ、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。