縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

企業メセナとCSR

2006-03-05 23:55:55 | 最近思うこと
 今日、紀尾井ホールにコンサートに行った。このホールは新日鉄が創立20周年の記念事業として建設したホールである。伝統的なヨーロッパのスタイル、両サイドにも客席を配したシューズボックス形式のホールだ。完成は今から11年前、1995年。おそらくバブル崩壊前後に計画が建てられ、完成がこの年になったのであろう。

 バブルの頃「企業メセナ」が流行った。優れた企業は文化、芸術活動を支援すべきとされ、新日鉄はじめ王子製紙、凸版印刷など、コンサート・ホールを作る企業もいくつかあった。それが一転、バブル崩壊後は「企業メセナ」という言葉はあまり聞かれなくなった。収益的に余裕のなくなった企業は当然ながらメセナどころではない。もっとも、そうした企業の活動がなくなったわけではない。バブル当時の派手なものから内容は地味になってはいるものの今でも続いている。

 ところで、今回のトリノ・オリンピックでの日本の惨敗。少子高齢化による若年層の減少、即ち選手人口、裾野の縮小とともに、収益悪化から企業スポーツの撤退が相次ぎ、それがわが国スポーツ界の弱体化に繋がったとも言われる。例えばアイスホッケー。岩倉組、古河電工、雪印、西武が廃部となり、ついには日本リーグの維持さえ不可能になった。アジアリーグの設立がなければ、それは悲惨な状況になったであろう。また、冬のスポーツではないが、新日鉄にしても栄光の釜石ラグビー部を廃部にした(今は釜石シーウェイブスというクラブ・チームで活動している)。
 メセナに限らず、直接収益に貢献しない企業スポーツにお金は掛けられない、更には下手をすれば道楽だと株主代表訴訟で訴えられかねない、といったことだろうか。なんとも世知辛い世の中である。

 一方、最近は文化、芸術活動に限らず、企業は社会的責任を果たすことが重要だというCSRがトレンドになっている。CSRとは社会的公正や環境への配慮を通じ、消費者、取引先、地域社会、株主、従業員などの利害関係者に対し、責任ある行動を取るべき、との考えである。
 バブル当時、メセナの考えが日本の企業に根付いていたかは若干疑問が残る。不動産などで儲けた企業が、いわば免罪符的にメセナの名目で文化活動を支援したケースも多かったであろう。これに対し、バブル期ではなく不況期に出てきたCSR。この考えがわが国の企業に、そして社会に根付くことを期待したい。