エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

ヴィオロンのタメ息の

2013年11月21日 | ポエム
ヴィオロンのタメ息は、愛おしい。

ヴェルレーヌの「落葉」はあまりにも有名であって、人の口に膾炙される。





     落葉


  秋の日の ヴィオロンの ためいきの
  身にしみて ひたぶるに うら悲し

  鐘のおとに 胸ふたぎ 色かへて
  涙ぐむ 過ぎし日の おもひでや

  げにわれは うらぶれて ここかしこ
  さだめなく とび散らふ 落葉かな





上田敏の訳である。
実に名訳と云うべきか!



件(くだん)のヴィオロン弾きである。
昨日、医者に身体の一部を診てもらう為の待ち時間、公園の銀杏並木に出向いたところ出会ったのである。







「ヴィオロンの吐息流るる秋深む」







銀杏並木は、鮮やかに黄葉している。
彼は、マスネの「タイスの瞑想曲」を奏でていた。

ぼくの好きなヴァイオリン曲である。
実はマスネはヴァイオリンのために作曲した訳ではない。

歌劇「タイス」(1894年初演)の第2幕第1場と第2場の間の間奏曲なのである。



この曲は、悲しいまでに美しいメロディーである。





タイスの瞑想曲(Meditation fromThais) 加登 萌々子(Vn.)ホラークミハル(Pf.)






銀杏並木の虚空に拡がる音曲は、人をメランコリック誘う。
秋の至福の時間である。



      荒 野人