エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

小淵沢便り…六章

2013年11月25日 | ポエム
今日は、明鏡止水を実感して頂く。
信濃の原村にある「まるやち湖」である。



大気が冷えて、良く晴れた日にそれは現認できる。

八ヶ岳の姿を写し、且つ湖畔の白樺を写し出す。
明鏡止水の境地が現出するのである。



本来は、単なる溜池であると思うけれど、ここまで鮮やかに風景を写丘ろうし出すと最早溜池といった範疇では律しきれない。

澄んだ大気と風景が本来持つ自然の力である。
自然のパノラマと云っても良かろう。







「静謐の湖面に映る深き秋」







この湖は、原村のペンション村の高台にゆったりと佇んでいる。
明鏡止水とは・・・を示している。



信州は、なかなかに懐が深い。
以前に紹介したので、今回は紹介しないけれど「八ヶ岳美術館」は、一見の価値のある施設である。



拾い館内に、彫刻が点在している。
そして、館内の照明と自然光が調和する光のカクテルが素晴らしいのである。



       荒 野人

小淵沢便り…伍章

2013年11月24日 | ポエム
小淵沢、言い換えれば八ヶ岳の麓は冬の佇まいなのである。
ここのところ朝方は零度を下る。



従って、霜が降り霜柱が立つ。
朝の散歩では、日陰の水溜まりに薄氷が張っているのだ。



それらは、生きている証のようでぼくに生きている事を実感させてくれるのである。







「薄氷のかすかな命知る炎」







からまつの並木に朝日があたる。
神秘的でさえある。



からまつ落葉に霜が降りる。
何処かの島のように見えるのだ。



これは霜柱。



これは薄氷。
うすらい・・・と読む。



八ヶ岳の麓は、いよいよ冬だ。



      荒 野人

居心地の良いカフェ

2013年11月23日 | ポエム
昨日、池袋に出かけたのである。
池袋に出たついでと言っては・・・失礼だけれどJUNK堂書店に入ったのである。
この書店は、俳句関係の書籍がぼくの好みで取り揃えてある。

しかも、4Fにはカフェがあって一休み出来るのである。
カフェの名前は、そのもずばり「カフェ・ド・ジュンク」である。



ブレンド珈琲を注文して座る。
それも、外のウッド・デッキが良い。



このカフェは、空が広い。
池袋と云う雑踏の中の書店としては、少し外れるだけに空が広いのである。







「空広くどこまでも雲小鳥来る」







ぼくは、この空の広さが気に入っている・



本は、二冊買い求めた。
辞典二冊だから少しお高いけれど、ほぼ持ち歩けるサイズである。



カフェの内部は伺えないけれど、硝子張りのウインドウがスクリーンになってビル群と空を映す。
これも良い。

硝子のスクリーンを眺めながら、原稿を認める。
これも良いのである。



       荒 野人


小淵沢便り…四章

2013年11月22日 | ポエム
あなたは「からまつ」の黄葉を知っているだろうか。
からまつの黄葉は、キラキラしている。



からまつの黄葉は、微風に乗って舞い降りる。





テノール下村雅人さんの「落葉松」






下村雅人のテノールは伸びやかである。

カラマツは天に向かって屹立する。
からまつの落葉は、痛い。
心にぐさぐさと刺さってくる。



だがしかし、それは心地良い。
心地良さは、自然の摂理に従っているからだ。







「降り積もるからまつ黄葉針であり」







からまつは、詩心をいたく刺激する。
律動する詩である。



      荒 野人

ヴィオロンのタメ息の

2013年11月21日 | ポエム
ヴィオロンのタメ息は、愛おしい。

ヴェルレーヌの「落葉」はあまりにも有名であって、人の口に膾炙される。





     落葉


  秋の日の ヴィオロンの ためいきの
  身にしみて ひたぶるに うら悲し

  鐘のおとに 胸ふたぎ 色かへて
  涙ぐむ 過ぎし日の おもひでや

  げにわれは うらぶれて ここかしこ
  さだめなく とび散らふ 落葉かな





上田敏の訳である。
実に名訳と云うべきか!



件(くだん)のヴィオロン弾きである。
昨日、医者に身体の一部を診てもらう為の待ち時間、公園の銀杏並木に出向いたところ出会ったのである。







「ヴィオロンの吐息流るる秋深む」







銀杏並木は、鮮やかに黄葉している。
彼は、マスネの「タイスの瞑想曲」を奏でていた。

ぼくの好きなヴァイオリン曲である。
実はマスネはヴァイオリンのために作曲した訳ではない。

歌劇「タイス」(1894年初演)の第2幕第1場と第2場の間の間奏曲なのである。



この曲は、悲しいまでに美しいメロディーである。





タイスの瞑想曲(Meditation fromThais) 加登 萌々子(Vn.)ホラークミハル(Pf.)






銀杏並木の虚空に拡がる音曲は、人をメランコリック誘う。
秋の至福の時間である。



      荒 野人