ソロツーリストの旅ログ

あるいはライダーへのアンチテーゼ

振り返ってみるとオートバイがいちばん好きだった

メメントモリ

2020年10月15日 | 日記・エッセイ・コラム
さわやかな秋の一日

ある人の葬式に行ってきた


勤め先の同僚だけど

山登りの人だった


この歳まで生きてると

不慮の事故で亡くなる人の葬儀に行くこともあるけど

Sさんが大好きな穂高で滑落して命を落とすなんて

微塵も考えなかった


台風が南岸遥をかすめって行った日

日本列島に横たわった前線の雨は激しかった

気温もかなり下がって

3000メートル級の穂高はどれほどのシビアケースだったか


彼とてこれが最後の山行だなんて夢にも思わず

されど山の危険さは誰よりも理解していただろうし

腋下に流れる冷たい汗の意味を覚悟をもって受け入れていたはずだ


「死んでもいい」なんてことは絶対にない

「死ぬかもしれない」は意識されずにザックの片隅にしまい込む


山は素晴らしい経験なのだろう

オートバイライディングの素晴らしさにも似て

言葉にできない戦慄とカタルシス

危険と引き換えに、ではない

危険を手のうちに入れて


オートバイに長く乗っていると

一度くらいはやばい事故にあうこともある

オートバイはとても危険だ

一瞬で命を落とす

死と直結する行為であることを忘れるな


養老先生は「死には1人称、2人称、3人称の3種類がある」と書いていた

1人称は自分の死、3人称はどこかの誰かの死

そして、最も重いのが2人称の死、すなわち身近な人の死だ

自分の死が身近な人の2人称の死になることを想像してみてほしい

メメントモリ

そのことは忘れてはいけないのだと、さわやかな秋の空を眺めていた






スターティング・オーヴァー

2012年12月03日 | 日記・エッセイ・コラム

寒くなってくると、走りに出る気持ちが萎えるな。



寒さのために走れる場所が限られるのも、オートバイという乗り物。



そんなふうに冬の間、オートバイとの付き合い方を制限されても、



なんとなくずーっとオートバイを好きでいられるのは



もはや理由なんかでなく、体質みたいなもんだろう。



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落語家の桂枝雀が緊張と緩和が笑いを生むと語っていた。



この「緊張と緩和」についてボクはよく考える。



そして、考えれば考えるほど、



ボクたち人間の行動のモチベーションすべてに



この「緊張」と「緩和」は大きく関わっているのだと感じる。



行動・・・・・・たとえば「好きである」ということ。



人間同士の好き嫌いなんて、まったくそうだけど、



オートバイを好きであるという気持ちや乗り続けようとするモチベーションにも



「緊張と緩和」が大きく関わっている。



ただ単に好きであることなんてありえないのだ。



例えあったとしても、それは一時の気の迷いみたいなもんだ。



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オートバイを走らせることは緊張の塊に違いない。



走らせることは大好きだけど、それには緊張感が伴っている。



だから走っているときに癒しを感じるような人は



おそらくすぐにオートバイに飽きてしまうか、



よっぽど、日常に緊張を伴っている人なんだろう。



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人には実は緊張を求める性向があるのだろう。



しかし、その本質は、その先にある緩和を求めている。



充実でなく、その先の虚無を。



クライマックスでなく、その先の終焉を。



生ではなく、その果ての死を。



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そして、そこにたどりついた人は知るのだ。



終わりこそ、始まりである、と。









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オルフェ―ヴルが負けた日

2012年10月08日 | 日記・エッセイ・コラム

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どうしても書かずに先へ進めないから

今日は唐突だけど、ウマの話を書く。

フランスG1レース凱旋門賞。

日本のオルフェーヴルが勝利を目指して走った。

結果は惜しい2着だった。

レース後はいろいろな感情が次から次へと湧いてとても寝られなかった。

日本中の競馬ファンはきっとみんな同じだったと思う。

            〇

ブログでは触れたこともないけど、ボクは競馬が好きだ。

競馬は賭博であるから営利目的の企業が入り込んだりしない、純粋な勝負の世界だ。

生半可な気持ちのヤツは一人もいないから、そこにはドラマが生まれる。

現在、中央競馬でクラシック3冠を達成したウマはわずか7頭。

オルフェ―ヴルはそのうちの1頭だ。

日本調教馬の悲願であるフランス凱旋門賞の栄光は、

同じく3冠の最強馬ディープインパクトでも届かなかったのだ。

けれど、オルフェーヴルは昨夜のレースで

その栄光をほとんどその手中に収めていた。

にもかかわらず次の瞬間、本当にするりとその手を滑り落ちていったのだ。

その瞬間の気持ちをどう処理していいのか、

今日一日かかってしまった。

            〇

中継映像は最初、ごみごみと混雑したパドックの中で

アヴェンティーノと連なって歩くオルフェ―ヴルが、

宝塚記念の時のパドックでそうであったように落ち着き払って

堂々とゆったりと周回を続けている姿を捉えていた。

でもやっぱり見ている方としてはちょっと心配で、

もっとうるさくしてもいいんだよ、といらぬことを考えてしまう。

本馬場へ入場しても日本のようにすぐ返し馬を見せることもなく

しばらく泰然と列を作って歩く。

ようやく列が解かれるとオルフェ―ヴルは頭を下げてゆったりと走り始めた。

「大丈夫だ、毛ヅヤもすごくいい、問題ない」

そう何度も自分に云い聞かせても、手のひらに汗が浮かび、座っていられない。

レースはあっけなく始まった。

大外枠からの不利な展開。

スミヨンは難なく折合いをつけて馬群の後方に位置を取る。

大きなアップダウンを越えて、フォルスストレートを抜けると残り533メートル。

スミヨンのゴー!の合図でオルフェ―ヴルは馬体を沈めて一気に加速した。

他のどの馬より低く柔らかく大きな完歩であっさりと先頭に立った。

完璧だった。

しかし、残り300を過ぎた時オルフェ―ヴルはあり得ないほど斜行する。

スミヨンは咄嗟に左手のスティックを右に持ちかえ必死に堪えようとするが止まらない。

結局、大外から内埒まで進路を変えた。

その時残り200メートル。

後方のソレミアとの差は1馬身半。

それでもその差を保ったままオルフェ―ヴルは渾身の走りでゴールを目指す。

日本でテレビを見ているファンは全員がこの時彼の勝利を確信した!はずだ。

追いすがるソレミアは、鞍上の名手ペリエのスティックに応えてその足を止めない。

ゴール板手前あと5メートル。

いや、大袈裟ではない。

あと5メートルだった。

            〇

明け方までの雨で、ターフは最悪の重さだった。

トップハンデの59.5。

大外枠。

完璧ではなかったがしっかり折合っていたし

スミヨンの追い出しも適確だった。

ゴール直前で運悪く足を取られた。

でも、ソレミアのほうが今日は速かった。

レースとはそういうものだ。

            〇

スグには寝られずに、録画したビデオを何度もみながらため息をついていた。

しかし、何度か見ているうちに、はっと気付いた。

こんなに必死になって走るオルフェ―ヴルを初めて見た気がした。

しかも、全力で走って、負けたのだ。

トップに立ちながら斜行してなお全力で走るオルフェ―ヴル。

・・・いつもボクは考える。

ウマはなぜ走るのか。

もちろんボクは知っている。

ウマはひとのために走るのだ。

3冠を獲り、グランプリも勝った馬が逸走したり、1番人気で凡走したり、

オルフェーヴルは人騒がせな馬だけど、

ボクたちのために文字どおり全力で走ったのだ。

それはまるで競馬を巡るすべての人々の愛に応えてくれているようだった。

競馬というと、賭博であることや、動物虐待とか、

穿った見方されることが多いけど、

オルフェ―ヴルの走りには一点の曇りもない。

文化と呼ぶにふさわしい世界観がそこにはあると思う。

            〇

後日談がある。

オルフェーヴルは池添謙一騎手のお手馬だ。

デビュー戦から全14レースに騎乗している。

けれど、フランス遠征ではベルギーのスミヨン騎手に乗り替わってしまった。

最善の選択をしたと云われて外された池添ジョッキーはさぞ悔しかっただろう。

口では「勝ってほしい、応援している」と云うけれど、

誰の目から見ても池添君の心中穏やかならぬことなどわかるというものだ。

そして、きのうの今日、京都競馬場のメインレース「京都大賞典」

池添騎手は大外枠メイショウカンパクの鞍上。しかも今日がテン乗り。

5番人気ながらオッズ18.4倍という微妙な期待。

4角まで馬群の最後方で足をためるとそこから一気にまくり上げた。

フミノイマージン、オウケンブルースリのベテラン古馬が馬体を合わせて並ぶ。

先頭の2番人気のギュスターヴクライを捉えると、

そのままの勢いでメイショウカンパクは1着でゴール板を駆け抜けた。

馬連でさえ175.5倍の万馬券。

「いいウマ乗してもらってます」とは池添騎手の勝利インタビューの言葉。

池添君の意地の1勝を見た、とは云わないが、

競馬にはこういうドラマが溢れているのだ。

Olfe


ただただ春を待ちわびるこの頃

2012年01月30日 | 日記・エッセイ・コラム

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海を見に行ってきた。

近くの海だ。

大きな二つの半島に囲まれたやさしい海だ。

やさしく凪いだ水面に、柔らかな冬の日差しをキララと反射して、

風さえ穏やかな静かの海だった。

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護岸堤にもたれて、のんびりと海を眺めた。

聞こえてくる音と云えば、

トンビの風のような鳴き声と海の唸り。

時折、セントレアへアプローチするジェットの音。

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ボクはここで海を眺めながら、よく死を意識する。

と云うより、生命の消えた地球を思い浮かべるのだ。

お祭りさわぎの数億年後にも、やっぱり海はゆっくりと波打ち、

風はどこからともなく吹きわたるのだろう。

命を疎ましくも思うし、命を愛惜しくも思う。

お父さんやお母さんを思い、

自分が消えた後の世界を思う。

どんな物語よりも、どんな音楽よりも、

この眼の前の景色に、心癒され、心が解き放たれる。

ボクはいま本当に自由なのだ、と。

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ブログを書くこと。

ブログを読んでいただくこと。

そのどちらにも何か得体のしれない魔力があることを感じている。

ブログを書いてみたいと思ったのは、もちろんボク自身だし

誰かに勧められた訳でも、ましてや強制された訳でもない。

敢えて云えば、読んでいただいている方への

何らかの責任、誠意、、感謝、いやホントは何だかわからいない「何か」が

ブログを書く行為の裏にあることは事実だ。

けれど、そのひとりよがりな「外への感情」に

なぜだか自分が書いているのに、居心地が悪い、後味が悪い、

私的な行為のはずなのに自分が楽しめていない、

そんなモヤモヤがどんどん貯まって、

ついには、何だかわからなくなってきている。

            〇

ブログとは自分にとって何だったのか。

ただの自己顕示欲の発露だったのか。

もしそうなら、あまりに浅ましい行為だったと、「ボク」は感じるのだ。

もちろんブログである以上、読者を意識しないのは無意味だし、

できれば多くの人に読んでもらいたいとも思う。

では、それはなぜなのか?

もう一度、そこへ帰って自問したいと思う。

私的な日記でなく、ブログを書き、ネット上にアップすること。

その目的を見失ったままブログは続けられないのだと、今は思う。

人から見れば下らない事だろう。

でも、ボクには大切なことだ。

こんな阿呆なことを書いて、それでも人に読んでもらいたいと思うのが

まさに「ブログ」なのだから。

            〇

早い話、「違和感」が耐えられないほどの大きさになってしまった、ということだ。

それは去年の春以来、解消されないままどんどん大きくなってきていた。

それが解消されるまでは次へは到底進めないといった気分だ。

1カ月後なのか、1年後なのか、それとも明日なのか、

自分でも今ははっきりしていない。

「冬眠したい」

まあそれくらいのニュアンスだと思う。

春になればきっとモソモソと起きだして、

そ知らぬ顔でオートバイに乗って走っているのでしょう。

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と云う訳で、ちょっと冬眠します。

おやすみなさい・・・・・・


妄想妄言タイフーン

2011年09月05日 | 日記・エッセイ・コラム

人間歳を取ると得てして偏屈になるもんだ。

偏屈はあまり世の中の役には立たない。

他人とは違う、という思いから偏屈な考えに陥ってしまうと一層質が悪い。

New MINIを見て、あれはMINIじゃないと思ったり、

FIAT500をみて、首を振ってるあなたは気を付けた方がいい。

間違いなく偏屈なおっさんに成り果てている。

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650じゃないW800はすでにWじゃないし、

ガンダムみたいな風貌のR1200RT。

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4バルブでインジェクションでABSで・・・

ボクサーの片隅にも置けない、と本気で思ってる。

だいたい横置きエンジンのBMWなんて、あり得ないよね。

同じ「K」の符号で括らないでほしいよ。

今にも止まりそうな回転で静かにアイドリングするんだよ、69はね。

だから?

古くても良いものは良い、そんなこと当たり前だけど、

新しくても良いものは良い、これも当たり前。

要は何を自分が面白いと思うか、好きだと思うか、でしかない。

分かっている。

そんなことは十分わかっている。

でも、CBR250Rがバカ売れなのがわからない!

つまるところボクも相当偏屈なおっさんになっちまったってことなんですかね。

でも、そうでもないか?

Ninja1000は乗ってみたい(所有したい)って思うな。

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(↑ カッチョイーーーーー!)

意外にハヤブサも好きだ。

YZF-R1クロスプレーンクランクシャフトも気になる。

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あれ?4気筒ばっかじゃん。

そろそろまた悪い虫が動き出すころかな。

まあどいつもこいつも100まんえんOVER。

ちょっとやそっとじゃあ手出しできないからいいけどね。

それより2台所有を見直さないといけないのかな。

もともと平気で二股かけられる男じゃないから(関係ないアピール)

いつも複数所有していても、決まった1台にしか乗れない。

わかっていてもつい複数所有になってしまう。

こないだ暇つぶしに、今まで所有したオートバイを書き出してみたら

なんと26台にもなってしまった。

なんたる欲望の所業。

御陰で、自分がオートバイに求めているものははっきりしたのだけれど

果たしてこれで良かったかどうかはかなり疑問だ。

でも、だからオートバイに関しては偏屈でもいいのかな?

26台も自分で金出して買って、乗り回してるんだからね。

そうだそうだ。

男ならCBR250Rじゃなくて、Ninja1000に乗れ!

やっぱただの偏屈か。

            〇

今週は何書いてんだよ?キャンツーレポートはどうした?

ですよねー。

台風で中止になりやした!

だいたいボクを誰だと思って誘ってるんでしょうか?

rainmanて自分で云ってるのにね。

キャンプツーリング?この台風シーズンに?

ボクを連れてっちゃあダメでしょ


ネズミとネコ、あるいはキョンとあいつの話

2011年08月15日 | 日記・エッセイ・コラム

当時の職場の先輩が、姪にねだられて無理やり買わされたネズミ。

気が強くて手に負えず、そいつはボクのところへやってくることになった。

たまたまそのころハムスターのコミックを読んでいて、

本当にたまたまハムスターに興味があったボクは、

仕事場に連れてこられたネズミを「かわいいー」と云ったばっかりに

ゲージから回し車から一切合財を譲り受けることになったのだ。

体調が5センチばかりのドワーフハムスターはシャンガリアンと云う種類で

真っ白な毛がとてもきれいだった。

怖がりで警戒心が強いために、ちょっとしたことで「ギーー」と威嚇の声を上げた。

何度も指を噛まれながら、ボクの匂いを覚えさせ、

それでもそのうち掌に黙って乗るようになった。

ボクが渡したヒマワリの種を両手で受け取って、器用に皮を剥いて見せる。

小さなネズミは「キョン」と名付けられた。

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            〇

キョンはとにかく元気が良い。

ゲージの網を登るのが好きで、いちばん上まであがってはあっけなく墜落する。

何度も何度も飽きることなくそれを毎日繰り返した。

回し車も大好き。

ただし、部屋の電気が消えて真っ暗にならないと回さない。

もともと夜行性のハムスターは闇夜を何キロも走る。

カラカラ、カラカラ、キョンは回し車の荒野を夜通し走り回る。

ゲージの中にふんわりと敷き詰めた牧草も

一晩できれいに踏みならされて、真っ平らになる。

あの小さな身体には、もの凄いパワーが宿っているらしい。

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            〇

最近では野良ネコも珍しいけど、

そのネコはいつの頃からか、ボクの庭へ来るようになった。

とにかく巨体!

喧嘩が絶えないのだろう、満身創痍でズタズタのボロボロだ。

ひとを見ても全く動じない。

太太しく、ゆっくりと歩いていく。

その態度と薄汚れた外見から微塵の可愛げも無い。

何にでも名前を付けてしまうボクなのに、

なぜか知ってずいぶん経つのに、いつも「あいつ」と呼んでいた。

嫌いだった。

いつもひとのことを見透かしたような目で見返してくる。

脅かしてやっても、鳴き声ひとつあげず、驚きもしない。

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冬のある時、

そう云えば「あいつ」最近見ないな、と不意に思った。

寒い日が続いていたし、よくは知らないがきっと相当な齢のような気がした。

ちょっと、哀れな気がした。

が、もちろん冬の寒さぐらいで逝ってしまうようなヤツではなかった。

それから2,3日たった日の朝。

「あいつ」はボクのクルマの下で寝ていた。

ふん、と思って蹴る真似をして追い出そうとしたが、

「あいつ」はいつもどおりちっとも慌てず、

面倒くさそうにのそのそと通りを渡って、隣の庭に消えた。

            〇

ハムスターの寿命はだいたい2~3年と云われている。

キョンは2008年生まれなのでもう3歳になっていた。

今年の冬は越せないかと思っていたけど、なんとか春を迎えた。

ただそのころから衰えが激しくなって、

目が開かなくなったり、はしごが昇れなくなったりしていた。

毛並みも悪くなって、手足の毛も抜けてきた。

大好きな回し車も、少し回しては弾き飛ばされるように下へ落ちるのでゲージから外した。

それでもキョンは毎日せかせかと動き回り、網を登っては転落し、

いっぱい食べては、いっぱいフンをし、毎日懸命に生きていた。

老いを目の当たりにしたころは、なんだかかわいそうで

不自由な手足をばたばたさせる姿を痛ましいと思っていた。

けれど、そんなことお構いなしに網を登り続けるキョンを見ていて、

ある日、はっとさせられた。

命ある限り、懸命にそれを生ききるキョンの直向きな姿に教えられたのだ。

目が開かなくなっても、手足が思うように動かなくても、

与えられた命を全うしようとしているキョンを、痛ましいと見るのは失礼ではないかと。

それからは毎日キョンの姿を見るのが楽しみだった。

こんな小さな命から教わった大切なこと。

直向きに命を生きることの大切さ。

            〇

お盆の中日の朝。

キョンは命を全うしていた。

まだ少し暖かくて、ハナもピンク色だった。

            〇

オートバイに乗りながら、気持ちを整理するのが習慣なので、

いつものように銀ジィ(’81R100RS)に乗って、いつもの道へ走り出す。

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涼風の里で木陰にオートバイを停め、ぼんやり風に吹かれていたら、

枯れ葉が落ちてきた。

ふと見上げると、サクラの木。

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サクラの落葉がもう始まっていた。

今年は案外秋が早いのかもしれない。

            〇

昼前に家に戻った。

銀ジィを車庫に仕舞っているとき、妙な気配を感じた。

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「あいつ」だった。

向かいの家のフェンス越しにボクを見ていた。

ちゃんと座って、真っ直ぐに顔を向けて、

まるで「大丈夫か」と云っているかのような感じだった。

いや、ボクの勝手な妄想か?

でも、正直、とても不思議な安らぎを感じた。

うれしかった。

うれしくて、急いで家から喰いかけのパンを持ってきて

「あいつ」に、驚かさないように出来るだけそーっとパンを投げてやった。

でも、いじめて来過ぎたよね・・・

「あいつ」はいつものように、のそりと身をひるがえして、草むらに消えた。

これからはもう少し優しくしてやろう、そう思った。

            〇

ネズミとネコの話はこれだけだ。

でも、何だか不思議な気持ちがしたよ、ボクはね。


メメント・モリ

2011年03月14日 | 日記・エッセイ・コラム

メメント・モリ

多くの人がこの言葉の意味を知っているだろうが、

恐らく知る人の数だけ、その意味が存在している言葉かもしれない。

自嘲家ではあるが、皮肉屋ではない良寛さまの言葉に

   災難に逢う次節には、災難に逢うがよく候。

   死ぬ次節には、死ぬがよく候。

   是はこれ、災難をのがるる妙法にて候。

という有名な言葉があるが、

この言葉の意味をとっさに正しく理解できる現代人は少ないだろう。

繰り返しになるが、良寛さまは決して皮肉屋ではない。

       〇

コンピューターネットワークは自由であるべきだ。

この二三日のネットでのあれこれを見ていると

善であるなら全体主義も容認する稚拙さに

老い先短い老人ながら今後の世界、とりわけ日本の行く末が不安だと感じた。

人は人の数だけ意見を持つ。

当たり前のことが、なぜか「絶対善」の前にわからなくなってしまう。

言葉の裏にはその人にしかわからない意味が必ず包含されているのだ。

誤解を招きそうな言葉なら尚更だ。

情報としての言葉や映像、音声から必死にその正体を突き止めようとする姿勢が無いと

永遠に表面上の理解と誤解で充満してしまい、

自由で、本質的で、あるべきネットの社会は窒息してしまう。

多数のデマや風評がチェーンメールで流されたり

特定の非協力者を罵倒したり

政治や政治家に責任を押し付けたり

恐らくはどれも善意からなされている。

善意であるから良いのだとすれば、それはもう立派な全体主義だ。

        〇

メメント・モリ

死を思え。

自嘲家も皮肉屋も偽善者も善人も悪人も、また然り。

死ぬる方がよい、とはどういうことか一度考えてみて欲しい。

全体主義的な雰囲気の中で、こんな個人主義的な意見を述べるのは正直怖いです。

でも、これは本音です。

私も地震についてはひどく衝撃を受けました。

これもまた本音です。

        〇

ながらくみなさんに支えられて続けてきたブログですが、

しばらく考えるところがあって、休止するつもりです。

ありがとうございました。

機会がありましたらまたよろしくお願いいたします。

被災地が一日も早く復興できるよう心から祈っております。


止まるとき、右足を出しますか?

2011年01月31日 | 日記・エッセイ・コラム

今度は扁桃腺が腫れた。

小学生の頃は年に数回は扁桃腺を腫らして、熱を出していたけど、

中学生になってからは、ほとんどそんな記憶はない。

だいたい扁桃腺の熱なんて、ガキの専売特許じゃなかろうか?

しかも、今回は38℃も熱が出て、3日間引かなかった。

腰は痛いは、お腹は下るは、喉は唾も飲めないくらい痛いは・・・

ただただ、ベットに横たわって、天井を眺め続ける1週間だったよ。

        〇

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それでも日曜にはずいぶん良くなって、散歩がてら銀ジィ(R100RS’81)を走らせてきた。

どこかへ行ったわけでもなく、ただ自分の体の調子を探りながら

1時間くらいぶらぶらと西三河の道路をつなぐ。

最近、銀ジィのシミーが出る速度域が変わってきた。

前は70~80km/hでぶるぶるっと出てたけど、

今は75~85km/hくらいで出て、程度は前よりひどくなっている。

シールドを下げようと片手を離すと、大げさでなく転倒しそうな勢いだ。

帰りしなにテックモーターサイクルに寄って相談した。

前にも、タイヤの影響が大きいから、違う銘柄にしてみたらと云われていた。

いま履いているメッツラーのパーフェクトはシミーが出やすいパターンらしい。

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旋回の感じが好きなので、あえてパーフェクトを選んでるんだけど、

いまのところ唯一気になるのが激しいシミーなので、

タイヤを替えて収まるようなら、それもありかなと思っていたのだ。

とりあえず、お薦めどおりタイヤ交換を試してみることにする。

ミシュランのパイロットアクティブを薦められたけど、

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ミシュランは今までの経験上相性が悪いので、

前のモノサスの時に履いたことのあるメッツラーのレーザーテックを注文した。

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       〇

テックのピットにDUCATIのMHRが置いてあった。

実車を見る機会なんて今ではほとんど無いと思うけど、

ここに来るといろんなオートバイが見られる。

そして作業台の上にはカウルを外されたMH900e!

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(上の画像は参考写真です、実物ではありません、実物はもっとカッコいいです)

樹脂製の純正タンクをアルミ製のワンオフタンクにリプレイスする作業中。

このオートバイも実車を見る機会は滅多にないと思うけど、

トップブリッジは云うに及ばず、ブレーキペダルの繊細な造作は見ていて飽きない。

リビングに飾りたいような美しさだったよ!

それに引き替えうちのじぃ様のなんとやれたことか。

もちろん30年現役で走り続けてきた凄みはあるけど、

まあ、BMWのオートバイなんて走らせてナンボだしね。

        〇

というわけで、今週は扁桃腺にやられてボロボロでした。

今日は1週間ぶりにまともに仕事が勤まりました。

金曜日は「立春」

そろそろサブさも峠を越えるね。

最後に暇つぶしにずっと見てた動画の中から気に入ったのをひとつ。


YouTube: Right foot, Left foot down, Which One ?

ボクは「右」が多いかなー?

どっちでもいーけど。

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年頭ですけど、予定らしい予定もなく・・・

2011年01月03日 | 日記・エッセイ・コラム

2011年明けましておめでとうございます。

ボクの住む東海地方では意外にも穏やかなお正月でしたけど、みなさんのところはどうでしたか?

年末は大みそかまで仕事だったんだけど、明けて1日、2日と休みをいただいてのんびりできたよ。

ただ持病のアキレス腱炎がぶり返して、その激痛にひっくり返ってただけなんだけどね・・・

去年はロングで泊まりのツーリングには一度も出られなかったけど

近場では、結構、週末ごと、あちこちへ走りには出られたね。

今年もロングは無理っぽいみたいだけど、

オートバイに跨っているだけで「しあわせ」なんていうタイプだから

あお号(R1150RT ’02)・銀ジィ(R100RS ’81)の2台を

今年も、慈しみつつも、使い倒していこうと思っている。

                    〇

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去年、いちばんこころに残った風景が、ここ、八ヶ岳が見える畑。

この道の先に、もう会えなくなってしまったひとたちが、「いる」ような不思議な感じがしたよ。

孤独であること、不安であること、

これがボクの旅の原点だと思っている。

時には、野に咲く花に迎えられるように、素敵な人々に出会い、

そして吹きすぎる風のように、刹那、言葉を交わす。

もう二度と会えないだろう人たちと幾度出会い、

その度に、どれだけさわやかな気持ちにさせて頂いたことか。

今年はどこでどんなことが待っているのだろう?

何も無いのかもしれないし、何か起こるのかもしれない・・・

オートバイに跨って、今年もボクは走って行こうと思っています。

ことさら、云うようなことでもないけどね。

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ふたり並べて説教する(またオートバイのことね)

2010年12月20日 | 日記・エッセイ・コラム

先週のことで恐縮だけど、まずはそっちから。

その前の週に(いつ?)琵琶湖へ行こうとして

途中で銀ジィ(R100RS’81)が急に不調になり(アイドリングしない)

なんとか100km余り無事生還したと書いたけど、

そのリベンジにあお号(R1150RT’02)で出かけることにした。

が、高速に乗ってみると、先週とは打って変って、ひどい混雑。

しばらく我慢して走っていたけど、

なんだか天気も悪そうで楽しめない感じがしてきて

急遽、今年最後の「らっせい」詣でに変更した。

混雑する東海環状道(MAGロード・・・この呼び名は定着しないね)を北上。

豊田藤岡ICから国道419号線へ下りる。

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途中の旧小原村辺りは季節外れの桜が満開。

すっかり落葉した紅葉に代わって、桜の花びらが淡い晩秋の日差しを透かしていた。

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        〇

最近の「らっせいみさと」はすごい人気で、

以前ボクが勝手にこのブログで、まわしモンを演じてた頃が懐かしいくらいだ。

「らっせい」すごい流行ってる。

でも、さすがに晩秋の頃、人出はそこそこだったね。

ここは定番中の定番、王道中の王道、

「天ざる定食」を食す。

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恒例の年末「らっせい」情報!

最終週はかなり変則だから注意しましょう。

そして年越し100円そばは夜11時から。

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凍結もある地域なのでオートバイで行く人は気を付けてね。

(勝手にまわしモン、でした)

       〇

ここからが今日の本題。

実はエンジン不調の銀ジィはボクの見立てなんだけど、

イグニッションコイルが悪いのだろうということで、元ディーラーに部品注文していた。

でも、「元」ディーラーなので部品供給に時間がかかるのだけれど、

結局、メーカー(BMW様ね)欠品で、出ないというのだ。

仕方なく「輸入屋ビーマー」でダイナのブラウンコイルを注文し直していた。

一方、先週の伊豆と「らっせい」詣でをこなしたあお号は、

天城の泥々の旧道を走らせたせいで下回りがまるでGSのよう。

ゴシゴシとブラシで洗車して、雑巾で吹き上げ、マフラーはクリーナーで磨いてやった。

そんで、ひとっ走りして水気を飛ばしてこようと、スイッチを入れると

インジケーターがボンヤリと灯り、「えーっ!」と思っていると

シート下からリレーの断続音がしはじめた。

あわててスイッチを切り、深呼吸する。

「なんだ?今の」

恐る恐るもう一度スイッチをひねると、今度はいきなりリレーの断続音がした。

「突然死?」

おーーーーーい!!!!

おまえさんたち!!!!

いいかげんにしな!!!

2台とも同時に壊れやがって、一体全体どういう了見だい!

        〇

次の日、仕事の合間に(サボってかな?)バッテリーを調達に行く。

ポルトガル製のEXIDEとかいうメーカーのBMW純正ジェルバッテリー。

19,425円也(シクシク)

そうこうしてる間にビーマーさんからもコイルが届く。

今度の休みに一気にかたずけるぜい

        〇

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さぶかったので、あお号を外に追いやって

ガレージの中で銀ジィをばらした。

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BOSCH製のコイル。こいつは2個でワンセット。

一部部品を流用してダイナのコイルをセット。

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チョろいもんだじぇ、とほくそ笑みながらエンジン始動!

がーーーーーーーーーーーーーー!

やっぱり片肺orz

しばらくアチコチ繋ぎ直したりしてみるけど、まったくダメ。

結局、銀ジィはその日の夜、元ディーラーへ引き取られて行った。

ほんとは銀ジィのコイルを取り付けたら、

すぐにあお号のバッテリーも付替えて、

完全復活!

・・・・・・となる筈だったんだけど、

その日は気力も何も失せて、しょんぼり、ふて寝してしまった。

        〇

あお号のバッテリー交換はもう何度もしているので

全く問題なく、ものの15分ほどで終わっちまった。

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といっても新品のバッテリーは一度、満充電しないといけないので

今日は走りに出られない。

左のサイドパネルを外したついでに、右側も外して、

今年1年の汚れを掃除してやった。

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天気が良くて、ぽかぽかで、それはそれで楽しい1日だったよ。

にしても、おまいさんたち、いい加減にしとくれよ。

休みにはどっちかがこのおっさんを乗せて、あっちこっち走りまわるのがお役目だよ。

・・・・・・など、説教はくどくどと今日も続くのだった。

        〇

翌日、あ、今日のことね。

仕事場、そろそろ昼飯にしようかと思っていたら携帯が鳴った。

元ディーラー、Kさんからだ。

いつもだったら修理に2週間は軽く掛かるのに、

今日の連絡はあまりにも早い。

悪い知らせに違いないな。

銀ジィを取りに来た時に、エンジン音を聞いて

「圧縮漏れっぽいなー」などと不吉なことを云っていたのだ。

バルブに何か噛みこんだか、シリンダーが焼き付いたのか、

なんてこったーーー!と悪いことばかりが浮かんでくる。

ボク「悪い知らせすか?」

K氏「(元気よく)直りました!」

ボク「え?ボク、何か初歩的なミスしてましたか?」

K氏「インシュレーターが緩んで抜けかけてたよ」

orz orz orz orz orz

素人って、かなしい・・・・・・

なまじ銀ジィは古くて素性のはっきりしないところがあるので、

悪い方へ悪い方へ考えてしまっていたようなのだ。

基本を押さえてチェックしていれば、ボクにも気づけた不具合だった。

ふたりに説教してるボクがいちばんダメダメだったよ。

反省します。

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