先ほど読み終わったばかりなのですが、心地よい読後感に浸っています。
さすが、ノーベル賞作家の小説は違うな、との思いです。
つまり、人間とは、人生とはという永遠の命題を平易な言葉で描き切っていると言って良いでしょう。
加えて、英国の現在のどうしようもない状態を、30年も前に(小説の中で)言い当てています。
「イタリアとドイツは行動で立て直しをはかった。・・・ルーズベルト大統領は大胆な1歩を踏み出すことを恐れなかった。
それに対しイギリスはどうだ。
時間が1年1年過ぎて行くのに何もよくならない。われわれがすることといったら、討論し、口論し、時間を引き延ばすことだけだ・・・」
昨今の「ブレグジット」の成り行きを見通していたかのようです。
いずれにせよ、この小説が英国で最も権威のある「ブッカー賞」を受賞し、そして彼がノーベル文学賞を授与されたことで、ノーベル賞作家の小説とはどういうものなのか、また、どの程度の質を要求されるのかを知ることができます。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★★)
蛇足:あらすじ(「BOOK」データベースから)
品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。
美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々~過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。英国最高峰の文学賞、ブッカー賞受賞作。