アーバンライフの愉しみ

北海道札幌近郊の暮らしの様子をお伝えしています。

デフォー著・吉田健一訳「ロビンソン漂流記」

2023年09月28日 | 名作読破PRJ

 

5泊6日の入院生活の間、島本理生さんの「ファーストラヴ」に続き掲題書を大変面白く読んだ。
「新潮文庫」2010年第75刷、362頁。

大要は承知していたが、孤島に一人漂着して生活を始めた主人公を待ちかまえていた種々の困難さと、それに打ち勝って生き抜いて行く様に感動した。

木製のスコップで土地を耕して麦を育て、麦芽を保管する籠を造り、石臼で製粉しパンを焼き上げるまでに10数年を要したという。

他方、野生の山羊を飼う牧場を造り、搾乳からチーズやバターの製造、また、豊富にあった野生の葡萄は、干し葡萄に加工して貯蔵する等々、生活に要するすべてを自給自足するその根気と逞しさに驚愕した。

そして、海賊船に奇跡的に救助されるまでの28年間、常に神の摂理を信じ、祈りを絶やすことがなかったと言うからすごい。

 

 

 

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トルストイ著・乗松亨平訳「コサック」

2021年08月01日 | 名作読破PRJ

 

名作読破PRJ。
光文社古典新訳文庫376頁。

従来のトルストイのイメージを一新する輝かしい青春物語。
モスクワで怠惰な生活を送っていた青年貴族のオレーニンは、心機一転、志願してコサックの一員(仕官補)としてコーカサスに赴任する。

自然豊かな土地と飾らない気質の村人に囲まれての生活が気に入り、そこに骨を埋めても良いとさえ考えるようになるが、見染めた美しい村娘との恋に破れ次の任地に移動して行く・・・。

トルストイの青年時代を彷彿とさせる物語に共感した。
彼の文章力の確かさは、文豪への道を感じさせずには置かない。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★)

 

 

 

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E・ブロンテ著・小野寺健訳「嵐が丘」

2021年07月07日 | 名作読破PRJ

 

名作読破PRJ。
光文社古典新訳文庫上下巻790頁。

いやはや、コロナワクチン2回接種後の副反応に痛めつけられつつ読む小説ではないと思いながら結局、最後まで読んだ。

やはり、英国のしかも19世紀ではなければ生み出し得なかった壮絶な物語である。
先に読んだ「チャタレイ夫人の恋人」に通底する同国の階級社会における両者の溝の深さの深刻さである。

つまり、無産階級者の上流階級者への妥協なき戦いでなくて何であろう。
それは、ここまで人間を貶める非情さを持つのだろうか。

 

 

 

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カフカ著・丘沢静也訳「変身/掟の前で」

2021年06月25日 | 名作読破PRJ


名作読破PRJ。

何気なく図書館から借りてきて読み始めたのだが、こんな訳のわからないものを読むのは初めてだ。

父親に怒鳴られて橋の欄干から飛び降りたり、芋虫に変身したかと思うと、今度はサルになってアカデミーで講演してみたりと支離滅裂だ。

こうして前衛作家として持ち上げられ、名作の仲間入りをしていることを当の作家氏はどう感じているのだろうか。

勿論、これらの評価は、彼の死後定まったものだからどうということもなかろうが、大方の読者には混乱を鎮める時間が必要だ。

 

 

 

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スタインベック著・大久保康雄訳「怒りの葡萄」

2021年06月14日 | 名作読破PRJ

 

名作読破プロジェクト。

米国のノーベル賞作家スタインベックの代表作。ピューリッツア賞受賞。文庫版(上下)916頁の大作。

1930年代の米国中西部。
オクラホマ州の貧農ジョード一家は、干ばつと砂嵐、銀行資本による農地の大規模化と機械化によって伝来の土地を追われ、光り輝く緑の大地カリフォルニアめざしルート66を辿る旅に出る。

一家と知人合わせ12人とキャンプ用品を積んだおんぼろトラックでの長旅(3,000km)は困難を極め、祖父母はカルフォニアの地を見ないまま病死する。

こうしてたどりついたカルフォニアは、果たしてジョード一家の夢を満たす大地だったのか・・・。

4Kテレビのような精緻な描写と卓越した文章力によって、読者をして物語に引きずり込んでしまう魔力を持つ作品だ。

特に、作者は、登場人物の感情や内面に入り込むことを一切していないのだが、それがかえって読者に感情移入を促すようだ。

兎に角、次元の違いを想起させるタフな物語に仕上がっている。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★★)

 

 

 

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シェイクスピア著・安西徹雄訳「マクベス」

2021年05月20日 | 名作読破PRJ

 

名作読破プロジェクト。

「アントニーとクレオパトラ」、「ハムレット」に続くシェイクスピア3作目は、血塗られた裏切りと栄達の道を歩み、遂には破滅したスコットランド王「マクベス」の物語。

劇中、暗殺された王「ダンカン」の息子が復讐を誓う場面で、「王(施政者)としてふさわしい美徳(資質)として、「公正、誠実、節制、不動の精神、寛容、不屈の精神、慈悲、謙虚、信仰、忍耐、勇気、剛毅」をあげているが、昨今の日本の指導者がどうかと思うに、とんでもはっぷんの思いがして滅入ってしまった。

 

 

 

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シェイクスピア著・安西徹雄訳「ハムレット Q1」

2021年03月12日 | 名作読破PRJ

 

世界の名作読破プロジェクト。

先の「アントニーとクレオパトラ」に触発されて、再度のシェイクスピアとなった。

このハムレットには、いくつかの版があって、これは最も簡潔な初期の台本が元になっているという。

いずれにせよ、前回も述べたが、作品の持つ「言葉」の魅力に圧倒されながら読んだ。

「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ(To be, or not to be, that is the question)」などの名セリフに酔った。

 

 

 

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シェイクスピア著・福田恒存訳「アントニーとクレオパトラ」

2021年03月02日 | 名作読破PRJ

 

世界の名作読破プロジェクト。

シェイクスピアの人類遺産的戯曲だが、改めて、その格調の高さ、言葉の強さに敬服しながら読んだ。

ローマ帝国の執政官シーザーとの戦いに敗れ、毒蛇に自らを咬ませ最愛のアントニーの後を追うクレオパトラ。

こうした一大叙事詩を、壮大な舞台劇として構築する手腕はシェィクスピア独特のもので、他の誰もなし得ない偉業だと思った。

 

 

 

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D・H・ロレンス著 木村政則訳「チャタレー夫人の恋人」

2021年02月20日 | 名作読破PRJ

 

世界名作読破プロジェクト。
光文社(古典新訳)文庫版、674頁。

先の英国TV映画に触発されて原作を読んでみようという気になったが、図書館で伊藤整訳の文庫版を手に取ってみると、もう手垢べったりのヨレヨレ本でとても読む気にならず、AMAZONから光文社の新訳中古本を取り寄せて読んだ。

1950年、伊藤整訳が出版されると性愛表現を巡って裁判となり最高裁まで争われたが、当時の世相を反映して有罪となり、文学書として読書の対象にする風潮は大きく後退してしまった。

今こうして読んでみると、何故その性愛描写が問題視されたのか不思議で、むしろ、今もって続く英国における階級社会の過酷さと女性解放の闘いこそが、この小説の主題であると認識した。

当時の英国における閉鎖社会の中で、主人公のコニー(チャタレー卿夫人)とその恋人であるメラーズ(森番:労働者階級)が階級の違いを乗り越えて愛し合い、真の人間解放のために闘った意義は大きく、これに共感しつつ読んだ。ご一読をお勧めします。(★★★)

 

 

 

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スーパーセレブ~清少納言著・酒井順子訳「枕草子」

2021年01月27日 | 名作読破PRJ

 

池澤夏樹編「日本文学全集」第7巻、531頁。

平安時代中期(1,200年前)に清少納言というスーパーセレブが歴史的な「枕草子」というエッセイ集を残したことに驚きながら読んだ。

推薦者の上野千鶴子さん曰く。
「わたしは、酒井(順子)さんを訳者に選んだ編者(池澤氏)の見識に驚いた。清少納言という機知に富んだ才女、意地悪な目で周囲を観察しながら辛辣な筆を使い、イケメンとファッションが好きなミ-ハー的で適度に空気を読み、冠位が好きな権威主義者で(且つ)無邪気な自己顕示欲があり、働いて生きる女の自負を持ち・・・」と作者と訳者をダブらせた解説が面白い。

他に、高橋源一郎訳「方丈記」と内田樹訳「徒然草」。

蛇足:「枕草子」119

 しみじみするもの。
 親孝行の人。
 吉野の金峰山に詣でるための御嶽精進をしている、身分ある若者・・・。
 男でも女でも、若くて美しい人が漆黒の喪服をまとっている姿は、あわれ深く感じるものです。
 九月の末、十月の初め頃に、ほんの聞こえるか聞こえないかくらいに耳に届く、こおろぎの声。
 卵を抱いている鶏。
 秋深い庭の草に、色とりどりの玉のように置かれた露。
 夕暮れや夜明け前に、河竹が風に吹かれている音を、目を覚まして聴く時。また、夜なども全て。
 山里の雪。
 想い合っているのに、邪魔立てする人がいて、思うにまかせない若い男女の仲。

 

 

 

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