アーバンライフの愉しみ

北海道札幌近郊の暮らしの様子をお伝えしています。

藤沢周平著「漆の実のみのる国」

2025年02月01日 | 読書三昧

 

「文藝春秋」1994年1月~97年3月連載(休載を含む)、全集第24巻356頁の大作。

年初以来、藤沢周平氏の作品を再読してホーリックに陥っている。

つまり、本書はその延長線上で、且つトドメにしようと思い借りてきて読んだもの。

江戸時代中期、米沢藩主上杉治憲(鷹山)が竹俣当綱を始めとする改革派に依拠しつつ、藩財政の再建を進めた過程を克明に描いた著者絶筆の長編時代小説。

良くここまで子細に調査して書いたなと感心する場面が多々あった。本小説の執筆で、著者は精魂尽き果てたのではと思った。

 

 

 

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藤沢周平著「静かな木」

2025年01月27日 | 読書三昧

 

1993~1996年「小説新潮」掲載 新潮文庫。

「静かな木」~藩の勘定方を退いてはや5年、孫左衛門もあと2年で還暦を迎える。

城下の寺に立つ欅の大木に心ひかれた彼は、見あげるたびに我が身を重ね合せ、平穏であるべき老境の日々を願っていたのだが・・・。

練達の筆がとらえた人生の哀歓。著者最晩年の三篇。

他に、「岡安家の犬」と「偉丈夫」を収める。

 

 

 

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本間ひろむ著「アルゲリッチとポリーニ」

2025年01月22日 | 読書三昧


光文社新書 227頁。

共に、ショパン国際ピアノコンクールを制した二人だが、その演奏スタイルは大いに異なっている。

アルゲリッチは、「感情豊かに感性で弾く」が、ポリーニは「完全無欠な演奏」に徹する。

こうした演奏スタイルの違いは、二人の私生活の違いにも現れていて、アルゲリッチには3人の娘がいるが、いずれも父親が異なるという。

ポリーニは、コンクールに優勝した後、ミラノの大学で物理学と美学を専攻、勉学に励んだ。

クラシック界に君臨した二人だが、正直、小生はシンパシーを感じることはなく保有するアルバムもほとんどない。

 

 

 

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直木賞に伊与原新氏

2025年01月18日 | 読書三昧

2024年下期第172回直木賞は、伊与原新氏の「藍を継ぐ海」が受賞した由。

この作品はまだ読んでいないが、第164回(2020年下期)の候補作となった同氏の「八月の銀の雪」を感心しながら読んだ記憶がある。

その点、今回も科学者の目を通した新しい視点での物語を大いに期待している。(昨夜、市の図書館に予約を入れたら待機者の11番目の由)

 

 

 

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樋口恵子・和田秀樹著「うまく老いる~楽しげに90歳の壁を乗り越えるコ ツ」

2025年01月17日 | 読書三昧

 

講談社+α新書 215頁。

91歳の樋口氏とまだ老境に差しかかったばかり(63歳)の和田医師との言わば、老いを吹き飛ばせ対談集。

主な内容は~

①理想的終末期として誰もが望む「ピンコロ」はそうた易くない。
②ピンピンとコロリとの間には、長い「ヨタヘロ期」がある。
③ヨタヘロ期を生き抜くカギは、「意欲」である。
④意欲を形作るのは、アウトプットである。人と話す、SNSの利用など。
⑤高齢者でなく「幸齢者」になろう。
⑥老人よ、お肉を食べて元気を出そう。

など、大いに参考になった。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★)

 

 

 

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藤沢周平著「刺客の凶刃~用心棒日月抄」など

2025年01月15日 | 読書三昧

 

「小説新潮」1981年11月~91年5月掲載、全集第10巻440頁。

掲題作と「凶刃」を収めたのが全集第10巻である。

第9巻の「用心棒日月抄」と「孤剣」に続く、同氏の人気シリーズ。

物語~江戸中期、藩の内紛をめぐり合い争う派閥の死闘を描く。
主人公の青江又八郎は、藩の密命により脱藩して浪人となり、江戸藩邸内の主流派支援のため活動するのだが・・・。

密命と浪人無頼とのギャップに悩みながらも、用心棒稼業に精出す日々を送る。また、無類の剣豪振りもエンタメ性抜群で楽しめる。

 

 

 

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藤沢周平著「風雪の檻~獄医立花登手控え」など

2025年01月11日 | 読書三昧

 

「小説現代」1980年4月~82年1月読み切り11編を収容、文春文庫。

「春秋の檻」に続いて、本書と「愛憎の檻」を続けて読んだ。

江戸小伝馬町の牢屋敷に収容されている囚人の病気を診る青年医師の登は、問題を抱えた病人に寄り添い、それぞれが抱える困難の解決に尽力する、

そこには、江戸庶民の生活が凝縮されていた。

主人公の「柔」の達人としての活躍が、恰好のエンタメとなって読者に爽快感をもたらす。

 

 

 

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藤沢周平著「春秋の檻」

2025年01月04日 | 読書三昧

 

「小説現代」1979年1月~80年1月隔月掲載の連作長編、文春文庫。

昨年は直木賞候補作中心の読書だったせいか何となく不満が残り、この際スカッとしたいとの思いもあって掲題書を借りてきて読んだ。

結果は大正解で、久しぶりの「藤沢節」に酔った。

主人公の立花登は医学を志す若者で、開業医の叔父を頼って江戸に出て来た。叔父の代診として小伝馬町の牢屋敷に通う内、獄中医として囚人を診るようになるのだが・・・。

また、登が当時としてはめずらしい「柔」の達人として活躍する異色の舞台設定となっている点が面白い。加えて、登の囚人の訳ありの人生に寄り添う生き方にも共感する。

以下、同シリーズの「風雪の檻」、「愛憎の檻」と続く。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★★)

 

 

 

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今年読んだ本2024

2024年12月28日 | 読書三昧

今年も、良い本にめぐり合うことができ幸せでした。
目の不調は相変わらずで、2~3頁読んではしばらく休むを繰り返す「カメ読」で何とか読み続けています。

 角川歴彦著「人間の証明」
 天童荒太著「青嵐の旅人」
 池井戸潤著「ハヤブサ消防団」
 嶋津輝著「襷がけの二人」(★★)
 黒田志保子著「若冲~ぞうと出合った少年」(★★)
 池井戸潤著「俺たちの箱根駅伝」(★★★)
 松井今朝子著「一場の夢と消え」
 三浦しをん著「きみはポラリス」(★★)
 雫井脩介著「クロコダイル・ティアーズ」
 朝井まかて著「御松茸騒動」(★★★) 

 長嶋 有著「タンノイのエジンバラ」
 稲垣えみ子著「人生はどこでもドア」
 村山由佳著「記憶の歳時記」(★★)
 沢木耕太郎著「旅のつばくろ」(★★)
 稲垣えみ子著「アフロ記者が記者として書いて来たこと。退職したからこそ書けたこと」
 村山由佳著「二人キリ」
 稲垣えみ子著「老後とピアノ」(★★★)
 稲垣えみ子著「寂しい生活」(★★★)
 古谷経衡著「シニア右翼~日本の中高年はなぜ右傾化するのか」(★★★)
 一穂ミチ著「ツミデミック」 

 鈴木エイト著「”山上徹也”とは何者だったのか」
 石原俊著「オーディオ”粋道”入門」
 川越宗一著「パション」(★★★)
 村木嵐著「阿茶」(★★)
 佐高信・望月衣塑子著「この国の危機の正体」
 角田光代著「対岸の彼女」
 吉田秀和著「ベートーヴェン」
 村山由佳著「星々の舟」(★★★)
 桐野夏生著「柔らかな頬」(★★)
 佐藤雅美著「恵比寿屋喜兵衛手控え」 

 北原亜以子著「恋忘れ草」(★★★)
 村木嵐著「まいまいつぶろ」(★★)
 石井妙子著「女帝~小池百合子」(★★★)
 逢坂冬馬著「歌われなかった海賊へ」
 万城目学著「八月の御所グランド」
 遠田潤子著「銀花の蔵」
 高村薫著「マークスの山」(★★★)
 河崎秋子著「ともぐい」(★★)
 九段理恵著「東京都同情塔」
 柚木麻子著「マジカルグランマ」(★★) 

 朝倉かすみ著「平場の月」
 一穂ミチ著「スモールワールズ」
 深緑野分著「スタッフロール」(★★★)
 冲方丁著「骨灰」

以上、纏めると・・・。

①今年読んだのは、直木賞候補作を中心に44冊。
特に印象に残ったのは・・・。

 北原亜以子著「恋忘れ草」(★★★)
 高村薫著「マークスの山」(★★★)
 池井戸潤著「俺たちの箱根駅伝」(★★★)などでした。

北原氏と高村氏の作品は、いずれも受賞作です。

②候補作の場合、やはり受賞作とは何かが違う(足りない)と思うことがしばしばありました。
それは、昨年集中して読んだ受賞作も含め、昨今、小説家の力が一頃に比べ大分異なっている(落ちている)のではないかと懸念する要因ともなっています。

例えば、現在同賞の選考委員を務める高村薫氏の「マークスの山」(1993年上半期第109回受賞作)などを読むと如実に感じさせられます。

③また、今年は、元朝日新聞記者(編集委員)稲垣えみ子氏の著作に出合い、高齢者の身の振り方との関連もあり共感しつつ数冊続けて読みました。

④時事ネタとしては、東京都知事選挙との関連で、石井妙子著「女帝~小池百合子」が圧巻でした。他に、鈴木エイト氏や古谷経衡氏の著作も印象に残りました。 

蛇足:料理のミュシェランよろしく、「お勧め度」は下記のように★の数で表しています。

  ・先ず、「是非、お読み下さい」と強く推薦したい本 → ★★★
  ・次に、「お読みになってみては」とお勧めできる本 → ★★
  ・最後に、「お暇があればどうぞ」とお勧めする本  → ★

仮に★三つの本なら、心地よい後読感に浸れること請け合います。

蛇足~「今年は44冊」と相方に言ったら、「私は70冊」と帰って来た。恐れ入りやした。

 

 

 

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角川歴彦著「人間の証明」

2024年12月25日 | 読書三昧

 

リトルモア社刊 133頁

角川歴彦(つぐひこ)氏は、東京五輪のスポンサー契約をめぐる贈収賄事件で逮捕・拘留されたKADOKAWA社の会長だった人。

本書によれば、事は本人の知らないところで進行したが、地検特捜部は(同氏を)黒と認定して自白を強要。拘留は、226日間にも及んだ。

同氏は、高齢(逮捕時79歳)で且つ、心臓に持病を抱えていて生死を彷徨う場面もあった由。

5回目の請求の末ようやく保釈されたが、こうした「人質司法」を決して許さず、刑事事件として(司法を相手に)戦いを挑むことになった。

 

 

 

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