第150回(2013年下半期)の芥川賞受賞作だ。
「新潮」13年9月号に掲載された160枚の中編小説。
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物語~夫の転勤で夫の実家の隣に住むことになった主婦(あさひ)が、それまでの共働きの時には見えなかった生活と人生が、いくつかの幻想的な出来事を通して見えてくる・・・。
何とも不思議な物語だ。
ある日、姑の依頼で、近くのコンビニへ何かの代金の振込に行くのだが、途上、よくわからない獣に出くわし、それを追っていく内に腰までの穴に落ち込む。後に、別棟に住むという義兄とともに、それを確認しに行くと穴はすでになくなっていた。
この訳のわからない「獣」や不確かな「穴」に加え、それまで明かされなかった義兄の存在などが無秩序な調和を保って構築されていく不思議な世界。
とても小生ら年寄りには理解し難いが、著名な賞を受賞するからには、作者の将来に賭けた選者たちの思いがあったに違いない。
小川洋子さんの選評をご紹介する。(「芥川賞のすべて」から転載)
「人はしょっちゅう穴に落ちている。けれど面倒がって、落ちなかった振りをしたり、そもそも穴など開いていなかったと思い込んでいる。取り繕おうとすればするほど滑稽な振る舞いになるのにも、気づいていない。不穏の底からじわじわと滑稽さがにじみ出てくるまで、もう少しじっくりその場に踏みとどまれる小説であったなら、迷いなく一番に推しただろう。」
「新潮」13年9月号に掲載された160枚の中編小説。
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物語~夫の転勤で夫の実家の隣に住むことになった主婦(あさひ)が、それまでの共働きの時には見えなかった生活と人生が、いくつかの幻想的な出来事を通して見えてくる・・・。
何とも不思議な物語だ。
ある日、姑の依頼で、近くのコンビニへ何かの代金の振込に行くのだが、途上、よくわからない獣に出くわし、それを追っていく内に腰までの穴に落ち込む。後に、別棟に住むという義兄とともに、それを確認しに行くと穴はすでになくなっていた。
この訳のわからない「獣」や不確かな「穴」に加え、それまで明かされなかった義兄の存在などが無秩序な調和を保って構築されていく不思議な世界。
とても小生ら年寄りには理解し難いが、著名な賞を受賞するからには、作者の将来に賭けた選者たちの思いがあったに違いない。
小川洋子さんの選評をご紹介する。(「芥川賞のすべて」から転載)
「人はしょっちゅう穴に落ちている。けれど面倒がって、落ちなかった振りをしたり、そもそも穴など開いていなかったと思い込んでいる。取り繕おうとすればするほど滑稽な振る舞いになるのにも、気づいていない。不穏の底からじわじわと滑稽さがにじみ出てくるまで、もう少しじっくりその場に踏みとどまれる小説であったなら、迷いなく一番に推しただろう。」