自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆皇居の風景

2009年12月13日 | ⇒トピック往来
 先日(10日)、東京・大手町の会社を訪問した。通された23階の応接室の窓から眼下に皇居が屏風のように広がっていた=写真=。御所などの建物もさることながら、常緑樹と紅葉の落葉樹が織りなす生態のパノラマには、これが東京かと思った。昭和天皇が提案し、武蔵野林を蘇らせたという話は有名だが、都心にあって、まさに楽園という趣きなのである。皇居の眺望を楽しんでいたちょうどそのころ「事件」が宮内庁では起きていた。

 鳩山総理の指示(12月10日)よって、中国の習近平国家副主席と天皇の会見が特例的に設定されたという問題である。以下、新聞各紙による。天皇の外国賓客との会見については、希望日が迫って願い書が出されると、天皇の日程調整が難しくなることや、2003年に前立腺がんの摘出手術があり、負担軽減と高齢が勘案され、翌2004年から「1ヵ月前ルール」を設定して、外務省などもそれを厳格に守ってきた経緯がある。

 ところが今回、中国副主席との会見の申し出が1か月を切った段階(11月26日)で外務省から宮内庁に打診があり、ルールに照らして応じかねるとの回答を宮内庁が返した。平野官房長官から宮内庁に対し、日中関係の重要性を考慮してほしいと再度会見を依頼(12月7日)。これにも宮内庁は政府内で重視されてきたルールとして断っている。そして、10日の総理の指示となった。背景には、民主党の小沢幹事長の訪中の際の「手土産」という憶測も流れている。

 そこで、きょう(13日)のテレビ朝日「サンデープロジェクト」を注視した。案の定、野党だけでなく与党からも批判の声が上がった。渡辺総務副大臣(民主)は「天皇陛下の政治利用と思われるようなことを要請したのは誠に遺憾だ。やめていいなら、今からでもやめた方がいい」と、会見中止の考えを述べた。社民党の阿部知子政審会長も「特例でも認めてはいけない」と強調してた。つまり、誰の目にも「皇室の政治利用」「ゴリ押し」と映っているのである。ルールを一方的に破り、それに対して党内の誰も異議を唱えなかったとなると、何かキナ臭さが漂う。

 そして、小沢幹事長は12日、訪問先の韓国で1910年の日韓併合から100年になる2010年中の天皇陛下の韓国訪問について「結構なことだ」と記者団の質問に答えたという。来年は日韓併合から100周年で反日ムードが一段と盛り上がるだろう。火中のクリを拾いにいくことになりはしないか。1975年、沖縄国際海洋博覧会で沖縄を訪問した当時の皇太子夫妻が「ひめゆりの塔」に献花のため訪れたところ、過激派から火炎瓶を投げつけられるという事件があった。小沢氏の「結構なことだ」発言を聞いて、逆にそのことを思い出した。

 今回の天皇特例会見で、皇室が政治に巻き込まれる危うさを多くの有権者が感じ取ったのではないか。それより何より、小沢氏から様々にバイアスがかかる鳩山内閣は果たしてこのまま持つのかどうか、ますますキナ臭くなってきた。

⇒13日(日)夜・金沢の天気  はれ
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