自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★身構える冬~下~

2009年12月20日 | ⇒トピック往来
 雪が降ると人々の活動は止まる…。そう思っている人は案外多いかも知れない。「こんな雪の寒いに日に、風邪を引いたら大変」「駐車場が雪に埋もれていて、会場に行けないのでは」など。ただ、雪国では、雪が降ったからそれだけでイベントが中止になったとか、学校が休みになったとか、議会が流れたとか、センター試験が中止になったという話を聞いたことがない。むしろ、鉄道やバスといった公共交通機関が雪でストップしたので中止ということはままある。雪国では雪が降って当たり前、つまり日常なのである。このブログのシリーズの最後は「積雪と人の集まり」をテーマに綴ってみたい。

 きのう(19日)、金沢大学と能美市が主催する「タウンミーティングin能美」が開催された。会場は同市辰口にある石川ハイテイク交流センターで、丘陵地にあり、積雪は30㌢ほどあった=写真=。それでも、参加登録者150人のうち、欠席はおよそ10人だった。これは歩留まりから考えて想定内の数字だ。つまり晴れていてもこの程度は欠席率があるものだ。タウンミーティングは、地域との対話を通じて連携を探るため、金沢大学が平成14年(2002)から石川県内で毎年連続して開催しており、今回で9回目。雪のタウンミーティングも始めての経験だった。

 自然現象と人の集会という点では、印象に残るシンポジウムがある。昨年(08年)1月26日、能登半島をトキが生息できるような環境に再生することをめざしたシンポジウム「里地里山の生物多様性保全~能登半島にトキが舞う日をめざして~」を輪島市の能登空港で開いた。この日は能登も金沢も30㌢ほどの積雪があり、さらに能登半島地震の余震と思われる大きな揺れが午前4時33分にあった。震度5弱。それでも開会の午前10時30分には当初予想の150人を超えて180人の参加があり、スタッフは会場の増設に慌てた。

 トキのシンポジウムのスピーカーは兵庫県立コウノトリの郷公園 の池田啓研究部長が「コウノトリ野生復帰に向けた豊岡での取り組み」と題して、50年にわたる豊岡市の先進事例を紹介した。また、佐渡でトキの野生復帰計画に携わっている新潟大学の本間航介准教授が「トキが生息できる里山とは-佐渡と能登、中国の比較」をテーマに講演した。能登半島が本州最後の一羽のトキが生息した地域であることから、トキに対する関心はもともと高い。

 人々が集まるか、集まらないのかの行動原理は、少々の気象条件には左右されない、むしろ関心が高いのか低いのかが要因だろう。参加者にすれば、「雪の日だったけれど、参加してよかった」と、返って悪天候が脳裏に刻まれ、美しき心象風景として残る。逆境が思い出になるのである。逆境よりよき感動を、雪国の人はこれを繰り返して逆境に順応し、忍耐強く辛抱強くなるに違いない。

⇒20日(日)朝・金沢の天気 ゆき
 
コメント
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