自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★Society 5.0にどう向き合うか

2019年03月19日 | ⇒ドキュメント回廊

      きょう銀行で両替をした。1万円札2枚を千円札の新券20枚に替えてもらった。依頼書に持参現金の内訳、希望の金種内訳、枚数を書き、新券希望の欄を丸印でチェック、住所と氏名を書くだけよい。両替手数料は50枚以下は無料だ。ちなみに51-300枚は324円、301-1000枚は648円、1001枚以上は1000枚ごとに324円の手数料がかかる。「キャッシュレスの時代に両替なんて、なんとアナログなことを」と自虐的な思いでピン札を受け取った。

  家族が習い事をしていて、月謝は新券で持参するものとの流儀があるからだ。月謝のほかに、結婚や出産の祝いなど慶事の熨斗袋にはピン札を入れる。逆に香典や布施など弔事には旧券を入れる。札は単なるキャッシュではなく、習い事や慶弔など札に込められた文化的な意味合いがある。これは日本独自の文化ではないかと考察している。もちろん、プリペイドカードなど電子マネー(前払い)でコンビニで買い物をし、電車やバスに乗車する。クレジットカード(後払い)で家電製品を買ったりもする。電気料金や水道・ガスなどの公共料金などは自動引き落とし。さらに、住宅ローンなどは銀行口座間での送金となっていて、支払い総額は圧倒的にキャッシュレス決済化している。

  それでも、習い事の月謝はピン札、月命日の供養の住職へのお布施は旧券を袋に入れて手渡しだ。では、私自身が習い事の師匠や住職に「来月から振込でお願いします」と言えるかとなると、自身はやはり違和感を感じる。おそらく、師匠や住職は断らないかもしれないが。対面の文化では恩恵の対価をキャッシュレス決済で、とはならないだろう。

   経済産業省の『キャッシュレス・ビジョン』(2018年4月)によると、世界各国のキャッシュレス決済比率では韓国が89.1%でトップ、2位中国、3位カナダと続く。日本は18.4%にとどまる。韓国では、硬貨の発行や流通にコストがかかることから「コインレス」に取り組み、消費者が現金で買い物をした際のつり銭を、直接その人のプリペイドカードに入金する仕組みを国家の政策として進めている。スウェーデンのキャッシュ決済比率も48.6%と高い。この背景に、現金を扱う金融機関や交通機関などで強盗事件がかつて多発したことから、犯罪対策としてキャッシュレス化が推進された(『キャッシュレス・ビジョン』より)。

   貨幣の流通コストや犯罪対策という迫った課題がない日本でなぜキャッシュレス決済が叫ばれるのか。それは、訪日外国人観光客が年間3000万人を超え、国が掲げる「2020年までにインバウンド客4000万人」の達成を見込んでのことだろう。では、日本でキャッシュレス化を進めるメリットはどこにあるのだろうか。プリペイドカードの枚数が増えて混乱するのは消費者の方だ。根深いところでは、自然災害が多発する日本で送電網が絶たれた場合、プリペイドカードやクレジットカード、デビットカードは果たして使えるのか、機能するのか。それより手元に現金があったほうが安心なのではないか、という深層心理が日本人のどこかにある。

   キャッシュレス化はまだ先の話なのか、そういえば、選挙の投票もいまだに投票所での手書きだ。AI、IoT、5Gなど「Society 5.0」の時代に入っている。超スマート社会に日本人はどう向き合えばよいのか。

⇒17日(火)夜・金沢の天気     くもり

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