自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆米朝会談、突然席を立ったのは誰か

2019年03月01日 | ⇒ニュース走査

      米朝首脳会談をニュースを見終えて、印象は「トランプの勝ち」だ。トランプ大統領はきのう(28日)午後2時15分(現地時間)から、ハノイのJWマリオットホテルで開かれた記者会見に臨み、「委員長との対話は建設的だった」「しかし、現時点で合意文書に署名することは適切ではないと考えた」と合意が決裂したことを明言した。金氏が全面的な制裁解除を求めてきたものの、応じなかったと明かした。ポンペオ国務長官は「金氏は準備ができていなかった」「我々が望む成果は結果を引き出せなかった」とフォローした。(写真・上はトランプ大統領のツイッターより)

   トランプ氏の記者会見を受けて、ニューヨーク・タイムズ紙は速報でこう伝えている。President Trump and Kim Jong-un’s summit meeting on the denuclearization of North Korea ended abruptly. Mr. Trump said the U.S. was unwilling to lift all its sanctions without the promise of full denuclearization.(北朝鮮の非核化に関するトランプ大統領と金正恩の首脳会談は突然終わった。トランプ氏は、アメリカは完全な非核化の約束なしにすべての制裁を解除するつもりはないと述べた)

   トランプと金の両氏はこの日午前中、ソフィテル・レジェンド・メトロポールホテルで拡大首脳会談を終えた後、午前11時55分から昼食会を持って午後2時5分に合意文に署名する予定だった。しかし、拡大首脳会談の途中でその後のスケジュールを全面的に中止、それぞれが宿泊先のホテルに戻った。記者会見も当初午後4時から会見の予定だった。

   ニューヨーク・タイムズ紙の速報から察すると、「abruptly(突然)」という単語の意味合いが大きい。では、拡大首脳会談の席上で誰が突然席を立ったのか、席を立つきっかけは何だったのか、それは誰のどのような態度、あるいは発言がきっかけだったのか、などなどである。次の会談の約束も取り付けず、事実上の物別れに終わった会談だが、勝者はトランプ氏だろう。全面的な制裁解除を優先的に求めた金氏は足元を見られた。「完全非核化の進展がなければ、この話はなかったことにしよう」とトランプ氏が勝負に出てた、席を立った。

   ビジネス交渉の中では相手にプレッシャーをかけるために席を立つこともある。先に席を立たれて、次に譲歩の条件を出して席に戻ってもらうよう行動を起こすのは金氏の方である。経済制裁が続いて困るのは金氏なのだ。

   去年2018年4月27日、板門店で開催された南北首脳会談では韓国の文在寅大統領と金氏との間では「完全な非核化」が明記された=写真・下=。さらに6月12日の第1回の米朝首脳会談では、共同声明で「Reaffirming the April 27, 2018 Panmunjom Declaration, the DPRK commits to work toward complete denuclearization of the Korean Peninsula.(2018年4月27日の板門店宣言を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組む)」の文言を入れている。にもかかわらず、IAEA(国際原子力機関)による査察など非核化へのプロセスはいっこうに見えてこない。

   妥協は一切しないことを、交渉相手に見せつける百戦錬磨のタフニゴシエーター、これがトランプ流なのだろう。ひょっとして、貿易戦争をめぐる中国の対する牽制も意図しているのかもしれない。

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