大阪大学はきょう29日、大学院高等司法研究科の教授(63歳)が通勤・住居手当や出張旅費を不正請求し、総額9195万円を受け取っていたと発表した。ネットのニュースで報じられていたので、阪大の公式ホームページに入ると詳細な報告が記載されている。 HPの報告を以下要約する。昨年(平成30年)7 月18 日、大学の監査室に大学院高等司法研究科の教授であり、知的基盤総合センタ ー長の教授が公的研究費の不正使用をしている疑いがあるとの通報があった。通報の内容は2項目あり、1)毎年欧州各国を学生と一緒に旅行(ゼミ旅行)しており、教授は調査・研究の出張として旅費申請しているが、その成果を示す研究実績(論文など)はほとんど存在せず、旅費申請したレンタカー代やガソリン代を学生からも別途徴収しているようである。 2)教授が用務外私用と思われる国内外旅行を旅費申請している。
大学では通報を受けて、予備的な調査を行い、9月13日に「公的研究費の不正使用にかかわる調査委員会」を設置した。そこで認定された事実が、長期にわたる不正受給だった。教授は平成16 年4 月に阪大に採用された際、「岡山県の市内の借家に居住し、そこから本学へ通勤する」という内容の住居届と通勤届を大学に提出し、現在まで住居手当を毎月2万7000円、通勤手当を6ヵ月ごとに33万 円を受給している。 しかし、住居届の賃貸借契約の証明書と領収書は偽造されたもので、居住と通勤の事実のないことが確認された。これまで大学が支払った通勤手当(平成16 年4 月-31 年3 月分)990万円、住居手当483万円は不正受給と判明した。
では、実際どこで居住していたのか。教授が提出した旅費請求書類で宿泊地を集計すると、東京での宿泊日数が年間の約半分前後も占めており、生活の本拠(自宅)は東京であるとことが判った。教授本人への聴き取り調査では、平成22 年10 月以降は大学用務(授業、会議)のある平日は学内の宿泊施設に宿泊し、それ以外の日は土・日曜日を含めて東京に旅行して滞在する出張を繰り返していることが判明した。これがさらなる不正の連鎖だった。週末から週初めにかけて東京出張を繰り返し、出張目的はデジタルサイネージ・コンテンツに関する実態調査、それらに関するワーキンググループ、資料収集、中央省庁との打ち合わせと申請していたが、中央省庁との打ち合わせを除けば、調査研究の事実がなく、事実があっても業務としては認められない虚偽の用務だった。旅費の虚偽請求による不正使用は平成21-30年度で604件7522万円にのぼる。
岡山県に住んでいると届け出、実際には学内宿舎に住み、自宅のある東京には調査研究の出張と称して帰省する。この不正請求は実に計画性を感じる。報道によると、大学側は教授に返還を求めるとともに処分と刑事告訴を検討しているようだ。阪大の西尾章治郎学長は「コンプライアンスの徹底等に取り組んできました。しかしながら、今回このような事案が発生したことを真摯に受け止め、今後とも、不正経理等の根絶に向けて全学をあげて取り組み、信頼回復に鋭意務めてまいります」とのコメントをHPで出している。
通報があったゼミ旅行だけを調査していたら、「事件」にはならなかったのかもしれない。この報告書を読んで、調査委員会が学内の不正のウミを平成最後の年度末に出し切りたいと議論を重ね奮戦した様子が伝わってきた。(※写真は、大阪大学がHPで公開している調査委員会の報告書をダウンロードしたもの)
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