自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★伊香保の石段、歴史の風景

2019年03月27日 | ⇒ドキュメント回廊

   北陸新幹線の金沢開業がこの3月で5年目に入った。新幹線のおかげで北関東や東北が随分と身近になった。きょう高崎駅で途中下車し、伊香保温泉まで足を延ばした。高崎駅から列車で渋川駅へ、駅からはバスで伊香保へ、1時間足らずだった。

   400年余りの歴史がある温泉街、初めて訪ねた。そこは石段の街だった=写真・上=。365段の石段の周囲には歴史の風情を感じさせる温泉地の街並みがあった。土産物店の軒下にポスター写真が貼ってあった。石段を埋め尽くす女性たちの古い写真だ=写真・中=。説明書きに「昭和初期に伊香保温泉に富岡の製糸工場の女工さん達が泊まりに来た記念写真」と。女性たちの表情は笑みを浮かべている。当時はそれほどレジャーがある時代ではない。これは推測だが、「伊香保講(こう)」と称して旅費を毎月積み立て、数年に一度、こうして温泉を楽しみに来ていたのではないだろうか。

   365段を上り切ると伊香保神社がある。温泉の守護神だけに、伝説も豊富だ。幕末、北辰一刀流の千葉周作が額を上州地方で他流試合を行い門弟を増やした。伊香保神社に奉納額を掲げようとすると、地元の馬庭念流の一門がこれを阻止しようとしてにらみ合いになった。千葉周作は掲額を断念したが、この騒動で名を挙げた。その後、江戸に道場を構え、坂本龍馬らが入門している。

   境内に灯籠(とうろう)があった=写真・下=。「伊香保町指定史跡」とあり、由来記にこうあった。天保4年(1833)から明治15年(1882)までの50年間に60回の入湯を果たした人物が記念に建てた。伊香保まので片道60㌔もある道のりを通った、とある。個人の記念碑のようなものなのだが、この人物をネットで検索すると、草津温泉にも40回通って灯籠を建てている。無名ながら、よほどの温泉マニアだったのだろう。

   大正の画家、竹久夢二もこの地を訪れ、女性が黒猫を抱く、代表作『黒船屋』を描いている。さまざま人が行き交い、伊香保の歴史を創ってきた。階段を上り下りしたおかげでスマホの歩数計は8700歩になっていた。

⇒27日(水)夜・金沢の天気     くもり

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