このところ相次ぐ世界経済の見通しの下方修正、そして中国の2月の輸出額の大幅減少などが報じられ日経平均株価は続落、8日の終値は2万1025円、前日比-430 (-2.0%)、一時2万1000円を割り込んだ。そんな中で防衛関連株として値動きが注目されているのが東証一部の石川製作所(本社・石川県白山市)だ。8日の終値は1655円、前日比+255(+18.2%)だった。同社株で特徴的なのは北朝鮮の動向とリンクしていることだ。
2017年9月にアメリカのトランプ大統領が国連総会の演説で金正恩・朝鮮労働党委員長を「ロケットマン」と呼び、北が「頭のおかしい老いぼれ」とののしるなど言葉の応酬が過熱した10月にかけては最高値4205円(10月16日)を記録した。平昌オリンピックへの北朝鮮の参加による平和ムードが広がり、徐々に株価は下がり、2018年3月29日に韓国と北朝鮮による南北首脳会談(4月27日)が決定すると1943円に落ち、第1回米朝首脳会談(6月12日)以降は軟調続き、年末には一時1000円を割り込んだ。ことし2月27、28日の第2回米朝首脳会談では初日が1209円、物別れが伝えられると1243円に反転、それ以降は上昇している。
冒頭で述べた防衛関連株というのは、同社は段ボール印刷機、繊維機械を生産し、追尾型の機雷を製造している。8日に買いが入るきっかけが、北の核・ミサイル拠点「西海衛星発射場」で関連施設の復旧しているとアメリカのシンクタンクや北朝鮮分析サイト「38ノース」が相次いで公表したことだった。38ノースが「North Korea’s Sohae Satellite Launch Facility: Normal Operations May Have Resumed」(北朝鮮の西海衛星発射場:通常の運用が再開される可能性がある)との見出しで公表した7日付の記事=写真=で、予想外だったのはレール式の移送施設やエンジン燃焼実験場の復旧作業が行われたのはことし2月16日から3月2日までに始まった模様だと記載されていることだ。
この記事に投資家は愕然としただろう。ハノイでの首脳会談の最中に核実験施設の復旧作業が始まっていた可能性も十分にあり、金委員長は初日の会談で核・ミサイル実験を行わないと改めて明言したが、これと矛盾するのだ。2日目の会談で、この情報を事前に得ていたトランプ大統領が覚書を交わす前に、金委員長にこの情報の事実確認をして、明確な返事が得らなかったとしたら、大統領が席を立った理由は理解できる。「君は言うことと、やっていることが違うではないか」と一喝したに違いない。交渉再会の目途が立たなければ、北が核・ミサイル実験を再開する可能性も視野に入ってくる。そこで買いが入った、と読む。
防衛関連株が次に動くとしたら、今月中に予定にされる、国連安全保障理事会で対北朝鮮制裁の履行状況を調査する報告書が発表されるタイミングだ。核・ミサイル関連施設の動きのほか、問題となっている洋上での荷の積み替え貿易「瀬取り」や仮想通貨を狙ったサイバー攻撃による外貨獲得などの実態が公表されることで、マーケットはどのように反応するのか。
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