自在コラム

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★辞任表明、安倍総理のレガシーは何だ

2020年08月29日 | ⇒メディア時評

   安倍総理の記者会見をきのう28日午後5時からのNHKテレビで視聴していた=写真=。8月上旬に持病の潰瘍性大腸炎の再発が確認され、安倍氏は「体力が万全でない中で政治判断を誤ること、結果を出せないことがあってはならない。総理の職を辞することにした」と述べ、辞任を表明した。拉致問題も憲法改正も北方領土もどれも道筋をつけられないままでの辞任表明。まさに断腸の思いだったに違いない。 

           会見ではいつも使っているプロンプターを今回使っていなかった。ということはコメントは会見直前まで練られていた。あるいは、予定していたコメントを直前になって大幅に書き換えた、のどちらかだろう。側近が辞任表明を知らなかったとのコメントを会見後に寄せているので、おそらく後者だろう。

   印象に残ったはコメントは拉致問題についてだった。安倍氏は2002年9月に当時の小泉総理が電撃的に北朝鮮を訪朝した際、官房副長官として同行している。「私がずっと取り組んできて、さまざまな可能性とアプローチで全力を尽くしてきた」「拉致問題はかつては日本しか主張していなかったが、国際的に認識され、トランプ大統領が金正恩委員長との会談でこの問題について言及した。習近平国家主席や、文在寅大統領も言及したが、今までになかったことだ」と述べた。

   しかし、この18年間の外交の成果は出ていない。「結果が出ていない中で、拉致被害者のご家族が一人、一人と亡くなられ、私にとっては痛恨の極みだ。何かほかに方法があるのではないかと常に思いながら、考えうるあらゆる手段を取ってきたことは申し上げたい」と無念の表情を浮かべた。

   会見では、記者が地方創生の取り組みへの自己評価について尋ねた。これに対し、安倍氏は「東京への人口集中のスピードを相当鈍らせることができた。地方にチャンスがあると思う若い人たちが出てきた」と。ただ、それは新型コロナウイルス感染拡大の影響でもあると認めた。「テレワークが進むと同時に、地方の魅力が見直されている。今回の感染症が、日本列島の姿や国土のあり方を根本的に変えていく可能性もあるだろう。ポストコロナの社会像を見据えて、こうした変化を生かしていきたい」と述べていた。

   また、記者からは「総理のレガシーは何だと思いますか」と問われた。この場合のレガシー(legacy)は後世に伝える業績と解釈する。安倍氏は「7年8ヵ月前に政権が発足した際に『東北の復興なくして日本の再生なし』と取り組んできた」「20年続いたデフレに3本の矢で挑み、400万人を超える雇用をつくり出すことができた」「助け合う日米同盟は強固なものとなり、アメリカ大統領の広島訪問が実現できた」と強調した。

   ただ、政治家の業績はそう簡単に評価されるものではない。政治はその後も変化し続けるからだ。安倍氏のレガシ-が後世の教科書に掲載されるとすれば、おそらく通算在職日数が、戦前の桂太郎(2886日)を上回り、憲政史上の「最長の総理」という評価ではないだろうか。政策としては、消費税を2回(2014年に8%、19年に10%)上げた「増税の総理」かもしれない。

⇒29日(土)朝・金沢の天気    はれ   


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