定例会見は開かず、随時会見をその都度開く。石川県の馳浩知事は、メディアとの距離をどのように計っているのだろうか。地元メディア各社の報道によると、馳知事は27日午前10時、「きょう午後2時に会見を開く」と県政記者クラブを通じて発表した。会見では、臨時会見を毎月4、5回開くとの内容だった。馳知事はこれまで定例会見を開いていたが、ことし3月と4月は開いていない。馳知事とメディアの距離感が実に分かりにくい。
その分かりにくさには原因がある。金沢市に本社がある民放「石川テレビ放送」(フジ系)が制作し、2022年10月に全国公開されたドキュメンタリー映画『裸のムラ』。「保守王国」と言われる石川県の知事を7期28年つとめた谷本正憲氏から馳氏にバトンタッチしたが、それに「キングメーカー」と評される森喜朗元総理が絡んで、「ムラの男たちが熱演する栄枯盛衰の権力移譲劇」という内容だ(映画チラシより)。
この映画に対し、馳知事はクレームをつけた。映画は石川テレビが2021年と22に放送した2本のドキュメンタリ-番組に新たな映像を加えて再編集したもの。馳知事は、テレビ報道のドキュメンタリ-番組に加え、さらに商業目的でつくった映画にも無断で自身や県職員の映像を使用していることについて、「肖像権の扱いが納得できない」と。これに対し、石川テレビ側は、映画の制作も報道活動の一環との位置づけで、映像は公務中ものであり、報道の目的である公共性に鑑み、許諾は必要ないと反論している。
馳知事は、肖像権の扱いについての言い分は譲らず、石川テレビの社長が定例記者会見に出席して、弁明するべきと繰り返し述べ、3月と4月の定例会見は「石川テレビの社長との日程調整がつかなかった」として見送った。石川テレビ側は、定例記者会見での社長の出席に関しては、「社長が当社主催以外の記者会見に出席して当社の考えを述べることはしていない」と説明している(2月17日)。
前任の谷本元知事は定例会見を開くことはなかったため、馳知事は定例会見を知事選の公約として掲げ、2022年3月の就任以来、毎月開いてきた。それをテレビ局の社長が出席して著作権について弁明すべきと譲らず、日程調整がつかなかったとして3月から定例会見を開いていない。そこで、代わりに臨時会見は開くという言い分だ。
馳知事の体には、プロレスラーとしてのプライドが染みついているに違いない。ことし元旦に日本武道館で開催されたプロレス興行の試合に参戦、その後、年頭記者会見(1月4日)で「私は死ぬまでプロレスラー」と述べている。本人が真剣勝負で挑んできた選挙を「裸のムラ」などと揶揄するテレビ局は許せない、と徹底抗戦の構えなのだろう。
(※写真は、元旦に日本武道館で開催されたプロレス興行の試合に馳知事が参戦したとの1月3日付の紙面)
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