自在コラム

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☆「拉致1号事件」から44年

2021年11月18日 | ⇒メディア時評

   北朝鮮による拉致問題はいまだに解決していない。国連総会で人権問題を扱う第3委員会は17日、北朝鮮に対してすべての拉致被害者の即時帰還を求める決議案を採択した。決議案はEUが提出したもので、日本など60ヵ国が共同提案国となった。採択は17年連続となる(11月18日付・NHKニュースWeb版)。拉致被害者は日本だけではない。ヨーロッパではオランダ、フランス、イタリア、ルーマニアなど5ヵ国に及んでいる。アジアでは日本のほか韓国、タイ、マレーシア、シンガポール、マカオの6つの国・地域だ。

   2002年9月、当時の小泉総理と北朝鮮の金正日総書記による首脳会談で、北朝鮮は長年否定してきた日本人の拉致を認めて謝罪。日本人拉致被害者の5人が帰国した。これがきっかけで日本における拉致事件が徹底調査された。現在、日本政府は北朝鮮に拉致された被害者として17人(5人帰国)を認定しているが、さらに、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない者として875人(2020年10月現在)に関して、引き続き捜査や調査を続けている(外務省公式ホームページ「北朝鮮による日本人拉致問題」)。

   日本人拉致の「1号事件」は能登半島の尖端近くで起きた。1977年9月19日の「宇出津(うしつ)事件」だ。これまで事件現場を何度か訪れたことがある。拉致現場は能登町宇出津の遠島山公園の下の入り江だ=写真=。山が海に突き出たような岬で、入り組んだリアス式海岸は風光明媚とされるが、歩くにはアップダウンがきつい。

   同年9月18日、東京都三鷹市の警備員だった久米裕さん(当時52歳)と在日朝鮮人の男(同37歳)はJR三鷹駅を出発。東海道を進み、福井県芦原温泉を経由して翌19日、宇出津の旅館「紫雲荘」に到着した。午後9時、2人は黒っぽい服装で宿を出た。怪しんだ旅館の経営者は警察に通報し、石川県警の捜査員らが現場に急行した。旅館から歩いて5分ほどの入り江で男は石をカチカチとたたいた。数人の工作員が船で姿を現し、久米さんを船に乗せて闇に消えた。男は外国人登録証の提示を拒否したとして、駆けつけた捜査員に逮捕された。旅館からはラジオや久米さんが持参していた警棒などが見つかった。

   しかし、当時は拉致事件としては扱われず、公にされなかった。その後、拉致は立て続けに起きた。10月21日に鳥取県では松本京子さん(同29歳)が自宅近くの編み物教室に向かったまま失踪(2号事件)。そして、11月15日、新潟県では下校途中だった横田めぐみさん(同13歳)が日本海に面した町から姿を消した(3号事件)。

   一連の拉致事件を指揮したのが北朝鮮の金日総書記で、日本での実行犯の一人が工作員の辛光洙 (シン・ガンス)だったといわれる。1973年に能登半島・輪島市の猿山岬から不法入国し、以後東京、京都、大阪に居住した。横田めぐみさんの拉致にも関わったとされる。拉致した日本人のパスポートを使って韓国に入り工作活動も行った。1985年に韓国で死刑判決を受け、その後に恩赦で釈放。2000年に北朝鮮に送還された。生きていれば92歳、辛光洙はICPO(国際刑事警察機構)を通じて国際手配されている。北朝鮮による拉致事件は終わっていない。

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