自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆立冬を染める「ころ柿の里」の風景

2021年11月11日 | ⇒トピック往来

   立冬の頃を色鮮やかに染める風景、それは紅葉やカニだけなく、吊るし柿もその一つだ。能登の「ころ柿」の産地で知られる志賀町をこの季節に何度か訪ねたことがある。渋柿の皮をさっとむき、竹ざおに吊るして、立冬のころの冷たい風にさらして乾燥させる。渋味が抜け、紅色の甘く、やわらかい干し柿となる=写真・上=。この時季に町を訪れると、農家の2階の窓際や軒先に柿が吊るされている様子がそこかしこで目に映る。

   ある農家を訪れると、シニアの女性4人が忙しく作業をしていた。電動皮むき機を使って皮をむく人=写真・下=、30㌢ほどのビニールの紐の両端に皮をむいた柿のヘタの先の枝に紐をくくり付ける人。そのくくり付けた柿を作業場の中につくられた木の小屋に入れている人がいる。「いおうくんじょう」という作業。「硫黄燻蒸」。小屋では、硫黄粉末を燃やして発生させた二酸化硫黄の煙で燻す。密閉された状態で20分ほど。それを外に出して、今度は扇風機の風でさらす。こうすることによって、カビや雑菌の繁殖が抑えられ、柿の酸化防止と果肉色をきれいにする効果がある。二酸化硫黄の使用量や残留量は食品衛生上で問題のない量だという。

   その後に作業場の2階で竹ざおで吊るす。2階は風通しをよくするために四方に窓がある。ここで2週間ほど自然乾燥させて、1個ずつ手もみをする。さらに高温の部屋で乾燥させ、2度目の手もみをする。実をもむことで果実が柔らかくなり甘みが増す。

   原産の渋柿は「最勝(さいしょう)柿」。この農家では毎年1万5千個ほどのころ柿を生産している。10月下旬、作業が始まると金沢や遠方に嫁いだ娘さんたちも応援に来てくれ、にぎやかになる。ころ柿は贈答用が主で毎年11月下旬ごろから出荷される。立冬の頃を染める「ころ柿の里」の風景ではある。

⇒11日(木)午後・金沢の天気     あめ時々くもり


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