1991年にソビエト連邦の崩壊のドラマをメディアを通して見ることができた。8月に当時のゴルバチョフ大統領側近がクーデタを起し、民衆の反撃で失敗。これでソ連共産党の活動が全面禁止となり、共産党は事実上解体となる。12月にゴルバチョフ大統領が辞し、ソ連を構成していた各共和国が主権国家として独立した。中学の歴史教科書にも出ていた、1917年のロシア革命で成立したソ連の崩壊だった。
では、アメリカはどう見ていたのだろうか。「自由、民主、資本主義」の権化であるアメリカの為政者も国民もマルクス・レーニン主義は必ず崩壊する、中国共産党も時間の問題だと思っていたのではないだろうか。当時の鄧小平が改革開放を進めれば、社会主義市場経済はそのうち資本主義へと変化するだろう、と。
しかし、中国経済は「世界の工場」と呼ばれるまでに成長し、2001年にはWTOに加盟、2010年にはGDPで日本を追い抜いて世界第2位となる。さらに、製造大国としてだけではなく、巨大な消費市場としての役割を担うまでになる。その一方で、現在でも、共産党や政府の機関に勤める党員に対し、家族を含むプライベートの時間に習近平総書記の地位をおとしめる悪口や、批判的なウェブサイトの閲覧を禁じている(6月26日付・共同通信Web版)。香港では国家安全維持法に抗議する民衆デモで370人が逮捕され、うち10人に「香港独立」の旗を所持していたとして国安法違反が初めて適用された(7月2日付・同)。
この状況をアメリカはどう読んでいるのか。トランプ大統領の対中国戦略はディール(取引)だ。貿易相手国に脅しをちらつかせ、交渉で譲歩を迫る。ところが、「自由、民主」といった旗印がこれまで見えなかった。国内では、黒人男性が首を押さえられて死亡した事件で全米で抗議デモが相次いでいる。
けさのニュースで、アメリカ下院は1日、香港の自治抑圧に関与した高官や組織、金融機関に対し、アメリカ政府が制裁を科すことを定めた香港自治法案を全会一致で可決した。ポンペオ国務長官は記者会見で、同盟・友好国を念頭に対中包囲網の形成を急ぐ方針を示した。1997年の香港返還後も中国本土より優遇してきた措置の廃止を進める考えを改めて強調した(7月2日付・共同通信)。
11月のアメリカ大統領選挙をにらんでの対中制裁法案であることは間違いない。アメリカと中国の全面対決が明確になってきた。中国はその包囲網の切り崩しに全力でかかるだろう。ソ連崩壊から29年、マルクス・レーニン主義と自由・民主・資本主義との対立が再現するのか、目が離せない。そして、日本は。
⇒2日(木)午前・金沢の天気 くもり時々あめ
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