ある辞書の引用文を見ていて、これは文選読みをするんだろうなぁ~、と思われる個所がありました。
「〇〇ト」と漢字2字の後を助詞で受けて、そのあとに漢字2字の訓読みが書かれています。
遥か昔、漢文の読み方に1つの語を音読み・訓読みと二度読みする「文選読み」という読み方がある、と何かの参考書で読んだ記憶がありました。ですが、文献では見たことは無かったような気がします。
引用箇所がどう書かれているのかを図書館へ確認に行ったのですが、残念ながらそこにあったのは辞書に載っていた通りの表記で、「ト」と「訓読み」が添え書きされているだけでした。
凡例から抜粋すると、「原文には訓點のない部分で、築島が補読した部分は、(シ)(ヲ)の如く( )に包み片假名で表す。」更に「原文の假名は、必ず、その假名の附された漢字に添へて訓下すこととした。」とあります。
残念ながら原文の読みも築島先生の補読も附されていませんでした。
文選読みをする場合、音読みの後を「ト」で受けるのかどうかがわからず、手持ちの漢文の参考書を調べたのですが、載っていませんでした。
何かで読んだ記憶はあったので、手がかりを探すべくネットで検索したところ1つの論文がヒットしました。なんと『国語学』に掲載された小林芳規氏の「漢文訓読史研究の一試論」です。
早速読んでみたところ、該当箇所が文選読みの用例として挙げられていました。
「絶対量としては永久点の文選読は減少している」と書かれており、2例挙げられていました。貴重な例の1つだったようです。
更に文選読みについて詳しく解説した本が無いか国会図書館のOPACで検索したところ佐藤喜代治編『漢字講座3 漢字と日本語』(明治書院)があることが分かりました。
「文選読み」(中村宗彦)と題して20ページほどにわたり詳細に書かれていました。
(1) 本来の文選読み (2) 広義の文選読み (3) 最広義の文選読み と整理して書かれていますが、最初の(1)に以下のようにありました。カッコ内は振り仮名です。
(1) 本来の文選読み-- 音訓複読法の(一)(『文選』に代表される読法)
① 音読・ノ・和訓 [例] 雎鳩(ショキウ)ノミサゴ (連体修飾語・名詞)
② 音読・ト・和訓 [例] 関々(クワンクワン)トヤハラギナク (連用修飾語・用言)
これで、調べていた用例が、紛れもなく文選読みするもの、と主張する裏付けが取れました
ただ、そうなると気になるのが辞書の書き方です。文選読みをする箇所はこの1例のみのようですが、この例を取り上げるからには、音読みのルビも付記しておいたほうが親切ではないのでしょうか?
このような事例にぶつかるとブログを書いていて良かったぁ~、とつくづく思います。
時間がたつにつれ何をどう調べたのか、時には調べたことさえもすっかり忘れていることがあります。時々過去ログを読み直すことで忘れていた記憶を取り戻すことができて非常に有り難いです。
「〇〇ト」と漢字2字の後を助詞で受けて、そのあとに漢字2字の訓読みが書かれています。
遥か昔、漢文の読み方に1つの語を音読み・訓読みと二度読みする「文選読み」という読み方がある、と何かの参考書で読んだ記憶がありました。ですが、文献では見たことは無かったような気がします。
引用箇所がどう書かれているのかを図書館へ確認に行ったのですが、残念ながらそこにあったのは辞書に載っていた通りの表記で、「ト」と「訓読み」が添え書きされているだけでした。
凡例から抜粋すると、「原文には訓點のない部分で、築島が補読した部分は、(シ)(ヲ)の如く( )に包み片假名で表す。」更に「原文の假名は、必ず、その假名の附された漢字に添へて訓下すこととした。」とあります。
残念ながら原文の読みも築島先生の補読も附されていませんでした。
文選読みをする場合、音読みの後を「ト」で受けるのかどうかがわからず、手持ちの漢文の参考書を調べたのですが、載っていませんでした。
何かで読んだ記憶はあったので、手がかりを探すべくネットで検索したところ1つの論文がヒットしました。なんと『国語学』に掲載された小林芳規氏の「漢文訓読史研究の一試論」です。
早速読んでみたところ、該当箇所が文選読みの用例として挙げられていました。

「絶対量としては永久点の文選読は減少している」と書かれており、2例挙げられていました。貴重な例の1つだったようです。
更に文選読みについて詳しく解説した本が無いか国会図書館のOPACで検索したところ佐藤喜代治編『漢字講座3 漢字と日本語』(明治書院)があることが分かりました。
「文選読み」(中村宗彦)と題して20ページほどにわたり詳細に書かれていました。
(1) 本来の文選読み (2) 広義の文選読み (3) 最広義の文選読み と整理して書かれていますが、最初の(1)に以下のようにありました。カッコ内は振り仮名です。
(1) 本来の文選読み-- 音訓複読法の(一)(『文選』に代表される読法)
① 音読・ノ・和訓 [例] 雎鳩(ショキウ)ノミサゴ (連体修飾語・名詞)
② 音読・ト・和訓 [例] 関々(クワンクワン)トヤハラギナク (連用修飾語・用言)
これで、調べていた用例が、紛れもなく文選読みするもの、と主張する裏付けが取れました

ただ、そうなると気になるのが辞書の書き方です。文選読みをする箇所はこの1例のみのようですが、この例を取り上げるからには、音読みのルビも付記しておいたほうが親切ではないのでしょうか?
このような事例にぶつかるとブログを書いていて良かったぁ~、とつくづく思います。
時間がたつにつれ何をどう調べたのか、時には調べたことさえもすっかり忘れていることがあります。時々過去ログを読み直すことで忘れていた記憶を取り戻すことができて非常に有り難いです。
