「みなさん、さようなら」久保寺健彦 幻冬舎 2007年
友人から「意外と面白いよ」と薦められて読み始めてみた。
舞台は団地。ひたすら団地の中。時代は昭和40年代か50年代あたりから始まる。
小学校を卒業したら、「中学に行くのは時間の無駄だ。読んで、書いて、計算する力なら、これまでの学習で身についている。その三つの力があれば、生活する上で不自由はしない。おれは成績優秀な方だったし、もっといろんなことを勉強したい。でも自分でやった方が能率がいい。理解力がまちまちな生徒とごっちゃにされ、三年も我慢しなきゃいけない理由はない」とのことで中学には行かず、団地内から出ない主人公、悟。
極真空手の大山倍達に感化され、腕立て伏せどころか指立て伏せまで出来るようになるほど激しくトレーニングをする日々。団地内のケーキ屋に勤め始める日々。団地から出なくても始められた恋愛。一年一年と同級生たちが団地から出てゆく。老朽化が進む団地。
相当の変わり者である悟に感情移入するのは難しい。しかし、どうして団地から出ることが出来ないのかを知ると、悟に同情するようになった。
特にジェットコースターサスペンスでもなんでもないのに先が全く読めない不可思議な小説。タイトルの「みなさん、さようなら」は深い意味もあるかも知れないが(それは読む人が勝手に付加するものだろう)、表面的には幼稚園、保育園なんかで子供たちが先生と挨拶するときの台詞。そう言えば「せんせい、さようなら。みなさん、さようなら」と言っていたっけ。
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なんとなく2枚の写真を連結してみた。なかなかのパノラマ。
Sewardという街から車で1時間くらい行ったところに氷河がある。ちっちゃい人の姿が見えるだろう。
みなさん、こんにちわ。草木です。
歩いている群れ。
どーん!これが氷河である。Glacierという奴だ。
アップで撮るとこんな感じ。触るとカチカチに硬い。
なんだよー。写真こんだけかよー。と怒りの読者もおられるかも知れないが、旅の初日はほぼこれを見に行くだけで終わった(と思う)ので、時系列にモノを語るということを開始から固いモットーとしているこのブログがルールを破るわけにはいかないことは読者がまたよくご存知な事であらう。そんなルールあったっけ?とかつぶやいてはいけないのである。決して。
「フロスト気質(かたぎ)」上下 R・D・ウィングフィールド 東京創元社 2008
HARD FROST, R.D.Wingfield 1995
「クリスマスのフロスト」「フロスト日和」「夜のフロスト」で、読む者全てを振り回すフロスト警部が久しぶりに帰って来た。
1.シリーズ全てを読んでる人へ
大丈夫。今までと何ら変わらないペース、フロスト節も炸裂しまくり。フロストをまた楽しめるので躊躇なく買いましょう。
2.未読の人へ
このフロストシリーズはちょっと他のミステリーとは違う。モジュラー型ミステリーと呼ばれたりするんだが、他のミステリーだと「一つの事件(たいてい殺人事件)があってその謎を解く」あるいは「一つの事件が解決できないまま連続(たいていは殺人事件)で事件が起こってその関連性も含めて謎を解く」という形式を取っているだろう。しかしフロストシリーズは全く違う。何か事件があった。詳しい情報が我々に伝わる間も無く別の事件が。と思ったらさらに別の事件が。第一の事件につながる捜査が始まったかと思ったらまた別の事件。という具合に気がついたら未解決事件が大量に蓄積。その全部が同時並行で進んで行く。その事件全ての指揮を取ろうとするのが我らがフロスト警部。お下劣、口が悪い、かなりブラックなユーモアの持ち主が、試行錯誤しながら最後にはあっと驚くアクロバティックな展開で全て解決。
従来のミステリーに飽きた人には迷いなく薦められる。
今回のフロスト気質(なぜかたぎと読ませるんだ?)は、男児の誘拐が事件の核になっているのでその分以前の作品より読みやすいかも知れない(分量が半端じゃなく長いが)
なおタイトルだが、フロスト気質、フロスト日和、クリスマスのフロスト等になっているが深い意味はない。原作のタイトルにも意味を全く見出せないので気にしない方がよいだろう。
フロスト気質 上 (創元推理文庫 M ウ)R.D. ウィングフィールド東京創元社このアイテムの詳細を見る |
フロスト気質 下 (創元推理文庫 M ウ)R.D. ウィングフィールド東京創元社このアイテムの詳細を見る |
↑あまり大きな声で言いたくはないが、ブックオフで105円で売っていた(ちょっと悲しい)このフロストシリーズは続き物的側面が非常に薄いので順番に読まなくてもよいと思う。しかし少しはあるので105円出して古いものから読んでいって、さすがに全部105円は申し訳ないから、フロスト気質ぐらい定価で買って読むか、というのが正しい本読みのあり方である。うむ。
フロストシリーズは英国でドラマ化されており、これもか・な・りオススメである。全部見たわけではないが。
年末のミステリーベスト10争いだが、池上永一の「テンペスト」が出たし、トム・ロブ・スミスの「チャイルド44」も出たばかり。しかしこの「フロスト気質」がかなり上位に来ることはこの私が胸を張って保証しよう。トップ3に入っても何らおかしくないと思う。
今日の教訓
旅に持って行くのは
歯ブラシと
フロスと・・・
「祈りの海」グレッグ・イーガン
短編集 最後のオチが普通ではないというか、なんというか。面白いともそうでもないとも言える不可思議なオチ。誰かが「哲学的なオチ」だと言っていたと記憶しれいる。オチ以前の展開にはアイデアが詰め込まれ堪能できる。
「宇宙消失」グレッグ・イーガン
量子力学がたっぷり詰め込まれたすごい作品。すごすぎて私にはあまり理解できなかった。シュレディンガーの猫についてぐらいは分かっていたはずなのに。
「ソラリスの陽のもとに」スタニスワフ・レム
難解といえば難解ホークスだった。でも分からないところを飛ばせば、ドラマとして面白かった。
「タウ・ゼロ」ポール・アンダーソン
これはめっちゃ面白かった。おとめ座ベータ星に向かう恒星船。どうして行かなくてはいけないかという事情、恒星船の動力の仕組み、人間ドラマと科学の最先端が絡んで実に読ませる。
しかし、なぜアラスカ旅行にSFなのだらうか。生き返りの、いや行き帰りの飛行機の中とホテルで寝る前に読んだのだが。リアルに生きリアルな人間関係に巻かれる生活を離れるのが旅だとすれば、そこから逃れるにふさわしいのはサイエンス・フィクションという名の壮大なフィクションなのかも知れない。
また読書が好きだという我々は、逃れたい現実を日々生きる弱々しい生き物なのかも知れない。
10月1日からディズニーリゾード内に作った常設劇場で演じられるのが ZED(ゼッド) 総工費だかなんだかが180億円だというのだから、シルク・ドゥ・ソレイユは元を取れるという自信があるのだろう。本公演の前に、トライアウト(野球選手のではなく)があるのでそれを観に行った。料金はレギュラー席9,800円の所がトライアウトなので7,400円ぐらいだった。
アンバサダーホテルの先にこんなどでかい劇場がある。
席はレギュラー席の中でもかなり前の方だった。フロントビュー席は15,000円するが後ろの方だとレギュラーとの差が微小。
さてレビュー開始。公演前にピエロ二人が客をいじりつつ・・・
(中略)(2時間半後)
↓
全員スタンディング・オベーション
以上をもってレビューを終了したい。と言うのは
よかった!すごかった!面白かった!
なんて松岡修造じゃあるまいし、なのだが、どう面白かったか説明するのが
①無理
②すると完全にネタバレになる
③説明する意味もあまりなかろう
まあ多少語らせていただければ、サーカスの原点に戻ったような演目だったということ。ピエロがいて、綱渡り、ロープ、空中ブランコなど子供の頃に見たサーカスがそのまま戻ってきたようだった。しかしシルク・ドゥ・ソレイユが普通に原点回帰するわけがない。テーマは「体操」なんだろうかなと感じた。体操選手が体操の種目にはないけど、訓練に訓練を重ねればこんなことが可能なんだよということを見せてくれる。
信じられないようなアクロバット(人体ピラミッド等)が立て続きに飛び出して来るが、個人的には5メートルほどの鉄棒4本を地面に突き刺すような形にしてその鉄棒に4人の男性が絡むのが「おいおい。どうやってやってんだよ」と思わず「すげえ」とつぶやいてしまった。また男女二人が静かに絡みながらありえないような体位、いや、ん?体位でいいのか?姿勢?ポジション?で持ち上げたり、乗せたり回したりするのが「こんなんありえへん。あんたら人間ちゃうやろ」だった。
チケットは高い。しかしシルク・ドゥ・ソレイユの特徴「言葉を理解する必要がない」そのままに子供でも十分に楽しめる。後ろに子供がいたんだが、思ったことをそのまま口にして、思い切り笑っていた。
俺はサルティンバンコとかキダムとか一切見た事がない。唯一観たのはラスベガスでの"O"だけ。これはチケットが奇跡的に取れたんだけど、心底堪能できた。めっさよかった。なのでシルク・ドゥ・ソレイユにはプラスのイメージしかなかった。その辺り、友人に言わせると、「現在一番人気は"O" 後で始まったKARはチケットが完売状態じゃないのでどうなんだろうね。。ZEDは"O"よりいいとまではいかないけど、しかしサルティンバンコとかキダムとか過去に日本で演じられた中では一番よかったと思う」ということだそうだ。
↑ZEDの動画
↑"O"の動画
北の湖理事長がどうしたとか、なんちゃらでかんちゃらと世間は大変らしい。
相撲にはあまり興味がなく、大麻にもそれほど食欲が沸くわけでもない。
そこで、ふと、よーく、見たら、
うちの彼女があまりにも可愛いすぎる。
食べちゃいたいくらいかわいい。
所作がなんとも言えず愛らしい。
プリティエスト&キューテストだ。
言わば、かわいすぎ疑惑だ。
ここは検査をせねばならぬ。どうしてそんなにかわいいのか。
結果は・・・・・・
帰ってきた今日の教訓
妖精反応
アラスカから帰る日。痛恨の出来事。
アンカレッジ発の飛行機に乗り遅れてしまったのだ。
その場合、普通
1.ホテルから空港のHERTZにレンタカー返すときに迷った。
2.道が大混雑していた。
3.空港が大混雑していた。
というような原因があるだろう。そりゃそうだ。しかし今回の乗り遅れ、特にそんな原因はない。
朝8時半発の飛行機かあ アンカレッジからシアトル経由の国内線だからセキュリティチェックそんなに厳しくないよなあ だったら30分前に着けば充分だなあ → 何の迷いもなく8時より10分も早く7時50分に空港カウンターに着いたので問題なすと思う俺 → しかしカウンターには(それほど多いわけでないが)そこそこに人が並ぶ
ぐげ
30分前到着じゃ間に合うわけねえよ!
よーく考えてみれば、ボーディングパスをもらい、荷物のチェックインに時間がかかり、機内持ち込み荷物のチェックがあるのだから、混雑してなくても30分前じゃ無理だ。ということに、行列の後ろに並びつつ思った。俺はアホか?2時間前が基本だろう?俺は初めて飛行機に乗る少年か?前日遅くまで呑んでいたから脳みそが溶けたのか?そこら辺にいた係員に言ったら、もう搭乗手続きが締め切られているとのこと。そりゃそうだよなーとしみじみ納得しつつ・・・
いや、どうすんだよ!
シアトルで成田行きに乗り換える予定。しかしアンカレッジ→シアトルに乗れていないのでシアトル発のにも乗り遅れる可能性大。
1.チケットの変更にどれだけ金がかかるんだ?
2.下手すると帰国が1日遅れる。これは非常にマズイ。マズすぎる。
で、カウンターの姉ちゃんに(特に激しくネゴシエーションしたわけでもなく)何とかしてくれと頼むと、次の便は満席だわと言われたので、まるで子犬のような眼で下から見上げると・・・・・・
よしっ 取れたわ。
何が?サーモンが?
そうそう今年はサーモンは豊作なの取れすぎちゃって困るわ。ってこら!違うわよ。チケットがよ。
華麗な乗りツッコミをする姉ちゃんに拍手喝采しつつ、ボーディングパスを受け取る俺。なんと9時半発が取れた。しかも特に余計な金を払わなくてよいようだし、これだとシアトルの乗り換えも十分に間に合う。
この場を借りて、アラスカ航空のチケットカウンターの姉ちゃんキャサリンには熱い投げキッスを送る。
ちなみに、シアトル発成田行きは第一エンジンのトラブルで出発が2時間も遅れたがそれはこの際不問に付す。
旅に出る前日、訪問した書店。何を思ったのかさっぱり分からないのだが、気がついたらグレッグ・イーガンの作品ばかり何冊も買っていた。
これが、宮部みゆきさんとか、池波正太郎とか、A・J・クィネルとか「間違いない」作家なら分かるのだが、一度もグレッグ・イーガンを読んだことがないのだ。
敬愛する翻訳家兼SF評論家の大森望氏がどこかで「現在最高のSF作家は彼だ」と書いてるのを読んだことを、突如として思い出したからだろうか?
「虎よ、虎よ!」「星を継ぐもの」とSFの傑作を読んだのにその後が続いていなかったからだろうか?
長期の旅行となると重厚長大のモノを読むチャンスだからと考えたからだろうか?(カラマーゾフの兄弟はこの手で読んだ)
しかし面白い。普段こんな本の買い方絶対しない。旅は人を奔放にするというが、旅の前には買い物を奔放にする作用が働くのだらうか。
どうも。遠いアラスカの大地から新巻鮭をしょって帰って参りました。
道中の出来事やら、見たもの、考えさせられたことなどございますが、またの機会に。
とりあえず、帰国して驚いたこと
1.え?福田もう辞めたの?
2.女子ソフトボール金メダルとったの?
3.え?男子4X100メートルで銅メダル?嘘だー!
4.え?高速道路って金とるんだっけ?ただじゃないの?
5.日本てこんなに蒸し暑いんだっけ?
6.え?でもコンビニでもうおでん売ってる?
てな感じでまたゆるゆるだらだらと更新していくのでしょうが、宜しくお付き合いのほど、願います。