読売新聞オンライン
「11歳と14歳」にアビガン処方…専門家「きわめて不適切」
2021/12/07 22:21
千葉県いすみ市の公立病院「いすみ医療センター」で8~9月、厚生労働省の通知に違反して内服薬の「アビガン」が新型コロナウイルスの自宅療養者に処方されていた問題で、同センターは7日、記者会見を開き、11歳と14歳(当時)の子どもに処方していたことを明らかにした。子どもへの処方について、日本小児科学会は「安全性、有効性は未確認」として推奨しておらず、専門家は「不適切だ」と指摘している。
アビガンを処方した経緯について、記者会見で説明する(左から)伴病院長、平井医師(7日、千葉県いすみ市で)
処方していたのは、同センターで11月末までアドバイザーを務めていた平井 愛山あいざん 医師(72)。8月、観察研究への参加を厚生労働省に申請してアビガンを調達し、9月12日までの約1か月間、自宅療養者に処方した。同センターは記者会見で、処方を受けた患者は98人おり、「8人が未成年で、中には11歳、14歳がいた」と説明。「いずれも家庭内感染で、両親には副作用を説明した」とした。これまでに患者から健康被害の報告はないという。
アビガンを開発した富士フイルム富山化学(東京都)は、薬事承認の前提となる治験で15歳未満に投与された実績はないとしている。平井医師が参加した観察研究の代表研究機関・藤田医科大(愛知県)によると、今年7月時点で処方された1万5245人のうち、小児への投与は1例あるが、重い基礎疾患がある子どもに用量を減らして投与したケースだった。服用した小児は回復したという。
小児科医の 釜萢かまやち 敏・日本医師会常任理事は「コロナの病態が不明な時期に高リスク患者へ投与するなら考えられるが、アビガンの有効性がはっきりせず、催奇形性の副作用もある中、小児に対して投与したのはきわめて不適切。経緯をしっかり検証してほしい」と指摘している。