<社説>'21回顧・政治 コロナ対策試された1年
2021/12/27 05:00
(琉球新報)
今年1年間は、全国、県内ともに新型コロナウイルスの猛威にどう対処するかが最大の政治課題となった。国や県の政権に対する評価は、その対策の成否が大きな分かれ目だった。コロナ禍から人々の命や健康、経済や暮らしを政治がどう守るのかが試された1年だった。 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設問題も大きな政治課題だが、民意は揺れた。10月31日に実施された衆院選の沖縄選挙区では、1、2区で建設に反対する「オール沖縄」候補が、3、4区は建設を容認する自民候補が当選した。
新型コロナ対策をはじめ、コロナ禍で傷ついた経済や生活困窮者への支援など喫緊の課題が前面に出て、新基地建設問題は必ずしも最大の争点にならなかった。名護市辺野古を抱える沖縄3区で「オール沖縄」候補が敗れた結果をもって建設への理解が得られたとみるのは早計だろう。
2月には米軍那覇港湾施設(那覇軍港)の浦添市移設の是非を最大の争点にした浦添市長選で、県や那覇市と北側案で合意した現職が、移設反対を掲げた候補を破った。移設が市民から一定の信任を得た形だ。ただ那覇軍港は遊休化しているとの指摘がある。移設なき返還を模索すべきだ。
4月のうるま市長選では、現職の後継として出馬した新人の自公候補が、新人の「オール沖縄」候補を破った。浦添、うるま両市長選で敗北した「オール沖縄」勢力は来年秋に県内最大の政治決戦である知事選を控えているだけに痛手となった。
一方、沖縄振興の根拠となる沖縄振興特別措置法が来年3月に期限が切れるため政府の対応が注目された。ただ2022年度の沖縄関係当初予算は前年度比326億円の大幅減となる2684億円となる。新たな振興体制初年度から厳しい船出だ。中でも沖縄県の裁量権が比較的大きい一括交付金は、前年度比219億円減の762億円で、沖縄の主体性を狭める内容だ。
22年度からの新法について自民党の沖縄振興調査会では適用期限を従来の10年から5年に短縮する議論さえあった。10年は維持されることになったが、沖縄側の考えを軽視している印象は否めない。
沖縄振興を「アメ」に、基地負担を「ムチ」として押し付ける「振興策と基地のリンク」をうかがわせる政府の姿勢は相変わらずだ。そもそも沖縄振興特別措置法は、沖縄が戦後、米国統治下に置かれるなどの「特殊な諸事情に鑑み」制定された。基地とリンクするとした規定はない。振興策を基地を押し付けるための取引材料にしてはいけない。
新型コロナの猛威は感染力が強いオミクロン株が国内でも広がりを見せつつあるだけに今後も油断できない。医療従事者や病床の確保、経済・暮らし対策など政治・行政は今年1年の教訓を生かし備える必要がある。