
藤原伊織「テロリストのパラソル」講談社文庫 1995年刊
41回江戸川乱歩賞受賞作品にして、114回直木賞のW受賞作品である。両賞受賞作家はいるが、作品が受賞したのは初めてである。
書き出しからして面白い。アル中のバーテンが起きだすところから書き出しがはじまるのだが、ストーリー展開も文章もなかなかである。佐伯泰英のスペインを舞台にしたテロ小説を髣髴とさせる展開だが、文章がすこぶる面白い。
会話や小さな推理が気が利いている。テンポもよく、すぐ本文にのめり込める。W受賞むべなるかなである。非常に残念なのは作者が2007年既になくなったことである。
それにしても楽しませてくれた小説である。提供してくれた畏友に感謝。