大門剛明「雪冤」角川文庫 2009年刊
雪冤とは「無実の罪であることを明らかにすること」の意だが、この小説は息子の無実を証明しようとする父親が主人公である。かなり緻密な構成で、テンポよくストーリーは進む。読者の予想よりは展開が早く、スピード感もある。
ただ最後に来て2転3転とはなしが入り組む。ここのところが理解力の衰えてきた自分にはかなり複雑に思える。若干無理筋にも思える。まさに自分の命に代えて罪を被るところの描写が少し不足しているような気がする。論理はわかるが小説として共感を得るには、説得力には少し欠ける。
しかしストーリー展開、心理描写などは緻密で面白い。あらすじを暴露しては興味が半減するので控えるが、かなりの力量のある作家ではないかと推察する。