昨年十一月二十二日の新聞やテレビは、新潟市中央区の千歳大橋近くの信濃川に転落した七十歳代の女性を、新潟高校三年生の勇敢な少年が、川に飛び込んで救助したと報じた。
この勇敢な少年は、越後タイムス編集発行人の妻の甥であって、我が家でも彼の勇気ある行動に驚嘆し、その時の新聞記事を保存してある。冬の信濃川に着衣のまま飛び込んで、溺れた人を救うなどということは、誰にでもできることではない。
ところが、その勇敢な少年の両親が年始に我が家を訪れたので、詳しい事情を聞かされることになった。事実は、新聞やテレビの報道とはまるで違っていた。新聞やテレビは真実を伝えることを仕事としていると思っている人が多いと思うが、実状はまったく違う。
第一に、“老女が川に転落した”というところが違う。千歳大橋付近の信濃川は、なだらかな護岸工事がほどこされていて、“転落”するなどということはあり得ない。“自ら川に入っていった”というのが真実なのだが、自余のことは想像におまかせする。
新聞報道は勇敢な少年が十一メートル泳いで、老女を救助したと伝えているが、事実は全く違う。彼は厳寒の信濃川に飛び込んだのでもなく、着衣のまま十一メートルも泳いだわけでもない。老女がいたのは、川岸から二~三メートルのところで、勇敢な少年はズボンを水に濡らしながら、歩いて救助に向かったのにすぎない。
他にも随分事実と違う報道がなされているが、勇敢な少年はマスコミというものの本質をよく理解したようだ。“気を付けて話さないと利用される”というのである。勇敢な少年の両親は言う。「マスコミは、あらかじめ“お話”をつくっておいて、取材と称してその“お話”への了解をとりにくるだけだ」と。
一昨年の中越沖地震でのマスコミの報道でも、こうした“あらかじめ物語をつくっておいて、事実をそれに当てはめる”という姿勢が多く見られた。新聞やテレビの報道をそのまま信じてはいけない。
この勇敢な少年は、越後タイムス編集発行人の妻の甥であって、我が家でも彼の勇気ある行動に驚嘆し、その時の新聞記事を保存してある。冬の信濃川に着衣のまま飛び込んで、溺れた人を救うなどということは、誰にでもできることではない。
ところが、その勇敢な少年の両親が年始に我が家を訪れたので、詳しい事情を聞かされることになった。事実は、新聞やテレビの報道とはまるで違っていた。新聞やテレビは真実を伝えることを仕事としていると思っている人が多いと思うが、実状はまったく違う。
第一に、“老女が川に転落した”というところが違う。千歳大橋付近の信濃川は、なだらかな護岸工事がほどこされていて、“転落”するなどということはあり得ない。“自ら川に入っていった”というのが真実なのだが、自余のことは想像におまかせする。
新聞報道は勇敢な少年が十一メートル泳いで、老女を救助したと伝えているが、事実は全く違う。彼は厳寒の信濃川に飛び込んだのでもなく、着衣のまま十一メートルも泳いだわけでもない。老女がいたのは、川岸から二~三メートルのところで、勇敢な少年はズボンを水に濡らしながら、歩いて救助に向かったのにすぎない。
他にも随分事実と違う報道がなされているが、勇敢な少年はマスコミというものの本質をよく理解したようだ。“気を付けて話さないと利用される”というのである。勇敢な少年の両親は言う。「マスコミは、あらかじめ“お話”をつくっておいて、取材と称してその“お話”への了解をとりにくるだけだ」と。
一昨年の中越沖地震でのマスコミの報道でも、こうした“あらかじめ物語をつくっておいて、事実をそれに当てはめる”という姿勢が多く見られた。新聞やテレビの報道をそのまま信じてはいけない。
(越後タイムス1月9日「週末点描」より)