玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

海にも遅い春

2010年05月25日 | 日記
 今年は花見をしなかった。忙しかったせいもあるが、開花してからもずっと低温が続いていて、寒さにふるえながら酒を飲む気がしなかったからだ。ようやく温かくなってきたが、晴れていても寒い日が続いた。サクラの花も見頃のまま、一週間以上もった。
 こんなに寒い春は記憶にない。連休も近いというのに、米山の雪もほとんど消えていない。魚沼市旧守門村の友人は、まだ雪が一〓残っていると話していた。豪雪の名残には違いないが、気温が低いため雪がなかなか融けないせいだろう。
 それでも春は来ている。スーパーには緑鮮やかなアオサがパックで売っている。一パック二百円もする。買わない。海岸に行けばアオサなんかいくらでもある。いつでも採れる。と思って鯨波海水浴場に行ってみる。
 波が高い時には岩場に近づくことはできないが、凪の時は岩場にとりついて、波が引いた瞬間を見計らって、岩場についたアオサを採ることができる。ところが、いつもと違う。
 アオサがまだ小さくて、手で摘むことがむずかしいのだ。波が引いたところで、アオサを摘もうとするが、指の間にほんの少し採れるだけで、十分ほど挑戦してもいくらも摘むことができない。そのうち靴が波で濡れてくる。レジ袋を一杯にしようと思っていたのに、これでは何時間もかかってしまうと思い、断念した。
 遅い春は地上だけではなかった。水温が上がらないため、海の中の春の訪れも遅いのだった。いよいよ大型連休が始まった。少しは温かくなってくれるだろう。
 五月七日号を休刊とさせていただいて、何年ぶりかで京都に行ってくることにしている。連休に旅をするなんて、いつ以来だったのかも忘れてしまっている。

越後タイムス4月30日「週末点描」より)