ゴエモンのつぶやき

日頃思ったこと、世の中の矛盾を語ろう(*^_^*)

障害者差別解消法 障害者などからの相談1000件超

2016年10月03日 03時39分26秒 | 障害者の自立

障害のある人への差別の禁止などを盛り込んだ障害者差別解消法が施行されて1日で半年です。NHKが全国の自治体に調査した結果、障害者などから寄せられた相談は1000件を超え、このうち自治体が指導や助言をしたケースが74件あることがわかりました。

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ことし4月に施行された障害者差別解消法は、国や自治体、事業者に対し、障害を理由とする差別を禁止するとともに障害者への合理的な配慮を求めています。NHKは先月、全国の都道府県と県庁所在地、それに政令指定都市と東京23区の合わせて121自治体を対象にアンケート調査を行い、すべての自治体から回答を得ました。

このうち、障害者差別解消法の成立を受けて始めた取り組みがあるか聞いたところ、121すべての自治体が「ある」と回答しました。具体的には、最も多かったのが「職員の対応要領を策定した」が92%にあたる111の自治体、「職員研修の強化」が88%にあたる107の自治体、民間と連携して対策を検討する「協議会の設置」が67%にあたる81の自治体、「専門の相談窓口の設置」が59%にあたる71の自治体でした。

また、障害者やその家族、事業者などから相談を受けたことがあるか聞いたところ、全体の81%にあたる98の自治体が「ある」と回答し、相談件数は合わせて1092件に上りました。さらに、全体の31%にあたる38の自治体が、障害者への配慮に欠けるなどとして、事業者などに合わせて74件の指導や助言を行っていました。

具体的には、車いすを理由に旅館での宿泊予約を断られたという相談を受けて旅館組合に対して助言を行ったケースや、盲導犬を連れての入店を拒否されたという相談で従業員の対応を徹底するよう事業者に依頼したケースなどがありました。

アンケートには、このほか、「今の法律には具体的な判断基準が示されておらず、自治体や事業者によって対応が異なることが懸念される」とか、「法律のさらなる周知や啓発が重要だ」といった意見も寄せられていました。

専門家「相談は氷山の一角」

障害者福祉に詳しい立教大学の平野方紹教授は「法律の施行によって障害者が声を上げていいんだと思えるようになったことは大きな意義がある。一方で、相談は氷山の一角で、法律の理念が先行していて、現実が追いついていない。もっと市民や事業者などに法律を知ってもらい、当事者が声を上げやすい環境を作ることが必要だ」と指摘しています。

東京・世田谷区 相談は50件

このうち、東京・世田谷区では、障害者への差別に関する相談を受け付ける専門の窓口を設けて、職員2人で対応しています。ことし8月までに障害者やその家族などから50件の相談や問い合わせが寄せられました。

ことし4月に粗大ごみの回収をファックスで申し込もうとした聴覚に障害のある80代の男性が、区の委託業者から「電話かメールでなければ受けられない」と断られたということです。また、同じ4月に電動車いすを利用している50代の男性からは「飲食店に入店しようとしたが、店側から多忙で人手が足りないと断られた」という内容の相談を受けたということです。区は、いずれのケースも業者や店の経営者にパンフレットを配布するなどして法の趣旨に理解を求めたということです。

世田谷区障害施策推進課の片桐誠課長は「法律は出来たが、障害者との接点が少なく、どう対応していいのかわからない事業者などもあり、まだ定着はしていないと思う。相談窓口や啓発活動を地道に続け、一歩ずつ理解してもらえるように取り組んでいきたい」と話しています。

10月1日   NHK


某大手企業、障害のある社員をまとめて雑居ビルに隔離…助成金切れる2年で雇い止めも

2016年10月03日 03時31分21秒 | 障害者の自立

 本連載前回記事では、障害者雇用の枠で大手企業B社に入社したAさんが、職場でハラスメント的な言動を受け精神疾患となり、人事部の障害者雇用担当者に労災申請の意思を伝えたところ、「なぜ労災申請するんですか? なぜですか?」「労災が認められなかったら訴訟ですか?」などと暴言を吐かれた事例を紹介した。ちなみにAさんは障害者虐待防止法に則った通報を行ったが、会社側はAさんに契約期間の変更を一方的に通告してきた。

 Aさんの場合、入社当時の報酬は手取りで月額16万円だったが、障害者雇用で働く人たちに確認したところ、「これでももらえているほうだ」という声が多かった。障害者雇用の現場においては、いくら経験を積んでも昇給がない状態なども当たり前であり、「こんなに闇が深いとは思っていなかった」とAさんは語る。

 会社によっては、障害年金が支給されることをアテにしたうえで、あえて低い給与体系を設定しているところもあるという。これでは「障害者の自立」というお題目はまるで空しい掛け声だけに聞こえてしまう。

 別の大手証券会社では、障害者枠で採用された社員だけ、本社とは別の雑居ビルに隔離されて勤務しているという実態がある。また、障害者雇用にまつわる助成金は2年間たつと受給できなくなるため、「体調に問題があるから」といった理由をつけて、ちょうど2年になるタイミングで雇い止めとなるケースも多い。

 巧妙なケースでは、「3年継続勤務すれば正社員になれる」という前提で入社したのに、3年目になるタイミングで人事制度が変わり、「基幹職の仕事ができていないと正社員になれない」というルールが設けられた、などという事例もあった。

企業が取り組むべき課題

 2013年度の内閣府調査によると、身体障害、知的障害、精神障害の3区分における障害者数は、身体障害者366万3000人、知的障害者54万7000人、精神障害者320万1000人となっている。これを人口1,000人当たり人数に置き換えると、身体障害者29人、知的障害者は4人、精神障害者は25人となる。概算で、日本国民の約6%がなんらかの障害を有していると考えていいだろう。統計数値を見る限り、これまで障害者数は増加傾向にあるため、この数と割合は今後も増えていくことが予想される

 さらには、18年4月から障害者手帳を持つ精神障害者の雇用が義務づけられることが決まっている。障害者雇用については法的な環境こそ整いつつあるが、現実的には受け入れ側の制度やマインド面が追いついておらず、いきなり義務化がスタートしても厳しいだろう。

 

 では、企業側はどのような準備をしていけばいいのだろうか。

 まず前提として、多くの企業においては、一般社員と障害のある社員との関係構築がうまくいっていないという事情がある。その原因には、「障害者を受け入れる環境が整っていない」という組織的な理由と、「健常者-障害者間における双方の理解不足、認識不足」という人的な理由が存在しているのだ。順番に考察していこう。

 企業側の課題は、障害者雇用を「人事や現場担当者に丸投げ」していることによって、「会社ぐるみの取り組み」ができていないために発生するケースが多い。普通に仕事をしている限り、障害者とのかかわりについて考える機会などほぼ存在しない状況下では致し方ないのかもしれないが、「採用と定着」というテーマとして考えるなら、障害者雇用に限った話ではないのだ。

 多くの企業において、採用担当者は障害者雇用に対して漠然とした不安を持っている。しかしその不安の要因は、「よくわからない」からであることがほとんどだ。障害者個々人に向き合い、彼ら自身について理解を深めることができれば、雇用は決して難しいものではない。

求められる「働き方の多様性」

 そもそも障害者雇用に限らず、企業の「働き方」自体に多様性があるべきだ。皆が将来の出世を目標に、正社員でバリバリ働きたいと考えているわけではない。企業側がやるべきことは、障害そのものの特性を知ったうえで、障害のある人に「何ができるか」「どこまでの範囲ならできるか」といった可能性を見極めること。さらに、彼らには「どんな強み、弱みがあるのか」といった部分まで把握し、社内で共有しつつ、適材適所のポストを用意し、無理のない適切な人員配置をすることだ。

 また、配属して終わりではない。一般的に、就業後に会社側から個別のフォローがあるかどうかで定着率は大きく変わるもの。とくに、前向きにがんばろうと気負って仕事をする人に限って、弱みやストレスを周囲に知らせようとしないケースもある。そんなときでも、企業側が適切なケアをできれば定着率は間違いなく上がるはずだ。結局、相手が障害者であっても健常者であっても、やるべきことは同じなのである。

  障害者雇用のゴールは、単に「法定雇用率を達成すること」ではない。「障害者が戦力となって活躍でき、周囲にもよい影響が及ぶこと」だ。人事担当者や現場のマネジメント担当者が協力し、障害のある社員を受け入れる環境をつくり上げ、育成していかなくてはならない。

 新しく入社した同僚を温かく迎え入れ、かかわり、信頼関係を構築していくといった当たり前のことが、障害者雇用の現場ではまだうまくいっていないことは事実。しかし、コンプライアンスやガバナンスといった当たり前のことが徹底できていれば、障害者雇用がスムーズにいくこともまた事実なのである。
(文=新田龍/働き方改革総合研究所株式会社代表取締役、ブラック企業アナリスト)

新田 龍(にった・りょう):働き方改革総合研究所株式会社代表取締役、ブラック企業アナリスト。早稲田大学卒業後、「ブラック企業ランキング」ワースト企業2社で事業企画、人事戦略、採用コンサルティング、キャリア支援に従事。現在はブラック企業被害に苦しむ企業の防衛コンサルティングをおこなうとともに、ブラック企業や労働問題に関するコメンテーター、講演、執筆を展開。

Business Journal (風刺記事)


某大手企業、障害のある社員に差別&威圧的暴言…通報すると一方的に雇用期間短縮

2016年10月03日 03時23分52秒 | 障害者の自立

 7月、神奈川県相模原市の障害者施設で19人が殺害された事件は記憶に新しい。本事件の報道においては、一般の殺人事件とは異なる点があった。それは、被害者はすべて匿名扱いになっていた点である。その理由について、入所していた弟を亡くした女性は、複雑な思いを次のようなメッセージとして出している。

「この国には優生思想的な風潮が根強くあり、すべての命は存在するだけで価値があるということが当たり前ではないので、とても公表することはできません」

 すべての人に等しく人権があるという自明なことが、この言葉で大きく揺らいだような不安を持った人も少なくないだろう。

 日本には「障害者雇用促進法」という法律があり、企業や公的機関は募集・採用・賃金・教育訓練・福利厚生・その他の待遇について、障害者であることを理由に不当な差別的取扱いをしてはならない、という厳然とした決まりがある。

 さらに、事業者は障害者を雇用することが義務づけられている。民間企業の場合、法定雇用率は2%であるから、単純計算すれば、従業員を50人以上雇用している企業は、身体障害者または知的障害者を1人以上雇用しなければならない決まりだ。法定雇用率に満たない事業主に対しては行政指導がなされるほか、従業員数100名超の会社の場合、不足1人当たり月額5万円の納付金を支払わなければならない。

 一方で障害者雇用にあたっては、職場環境の整備、特別の雇用管理等が必要となるため、雇用率を達成している事業主に対しては超過1人当たり月額2万7000円の調整金が支給される。さらに、常時労働者100人以下の中小企業で、障害者を全体の4%または6名のいずれか多いほうの数を超えて雇用している会社には、報奨金として超過1人当たり月額2万1000円が支給される決まりになっている。

 ここまで法律で明文化されていて、公的なサポートも行われているはずの障害者雇用だが、全体でみればまだ法定雇用率は達成できていないのが現状だ。2015年度の集計で、雇用障害者数、実雇用率共に過去最高を更新してはいるものの、実雇用率は1.88%。法定雇用率達成企業の割合は 47.2%にとどまっている。

 さらに実際に働く障害者の観点からみれば、「雇用されること」以上に「安心して働き続けられること」が重要だ。しかし、雇用率をいわば数字という「点」で捉える企業と、就業後から新たなキャリアが「線」のごとくスタートする障害者では立場が異なり、それが根深い問題になっていることはあまり知られていない。

大手企業でもハラスメント行為

  健常者として一般企業で勤務していたAさんは、仕事の指示などを一度聞いただけではなかなか覚えられず、同じことを何度も質問することがしばしばであった。これまでの職場では上司や先輩から「一度で覚えるように」と指導を受けることもあった。

 Aさん自身はそのことを「物覚えが悪いなあ」程度にしか考えていなかったのだが、とある診断がきっかけで、自分自身が「軽度の発達障害」であることが判明した。ワーキングメモリといわれる脳領域の障害によって、短時間で新しい情報を記憶することが難しい発達障害の一種と診断された。Aさんが35歳のときのことである。

 Aさんはその診断を受けて障害者手帳を取得し、障害者雇用の枠で大手企業B社に転職した。同社はこれまでも障害者を受け入れている実績があったことから、Aさんは「障害者の扱いに慣れた会社なのだろう」と期待して入社した。

 とはいえAさん自身も、障害者雇用枠での入社となれば、他の同僚から色眼鏡で見られる可能性はあるだろうと考え、相応の覚悟はしていた。しかし、実際に起きたハラスメントは、Aさんの想像をはるかに超えていた。

 Aさんは契約社員として、身体に障害を持った人と一緒に10名程度の部署に配属になった。しかし入社直後から、先輩社員Cさんから継続的なハラスメントを受けることになった。

 Cさんは日常的に「健常者」「障害者」「正社員」「非正規」という言葉を用い、「あなたたちと私は違う」とわざわざ口に出し、「正社員と非正規は違う」「中途採用の人は変わってるわね」など、Aさんたちを見下すような言いかたをしていた。

 また、仕事に不慣れなAさんに対し、「わたしは仕事が早いから、おほほ……」などとバカにした態度をとったり、Aさんが風邪で休んだときには、「うちは障害者が2人いて、休みがちで危ういので」などと内線電話で話したりしていた。さらにCさんは、しばしば差別的な言葉を使うこともあり、あまりのモラルのなさにAさんは驚いたという。

通報すると一方的に契約期間変更

 周囲の社員もCさんによるハラスメント発言は認識していたはずだが、社内で誰からも何も注意されることはなかった。日常的に心ない言葉を浴びせかけられることや、正規職員が仕事をせず居眠りしていても注意されないのに、障害のある雇用者をこき使うという職場環境に悩み続けたAさんは精神疾患となり、休職を余儀なくされた。

 追い込まれたAさんは、社内のハラスメント通報窓口に相談した。これまで自身が受けたハラスメントの実態と、ハラスメントが起きているのに周囲が無関心であることに対する問題を会社側に提起。のちに管轄の労働局に労災申請も行った。 

 しかし、会社側の反応は冷たいものだった。Aさんが「労災を申請したい」と申し出ると、人事部の障害者雇用担当者は不快感を露わにし、声を荒げた。

「労災申請しないと言って、一度、とりやめましたよね? なぜ労災申請するんですか? なぜですか? なぜですか?」
「労災が認められなかったら訴訟ですか?」

 担当者のこのような発言に対して、Aさんは障害者虐待防止法に則った通報を行った。結果、人事部は障害者雇用促進法による行政指導を受けている。

 その後、会社側はAさんに契約期間の変更を一方的に通告してきたのである。Aさんの契約期間は当初「1年間」という条件であったが、それを「6カ月間」に短縮するというものであった。理由は「私傷病の精神疾患で休職していたため」ということであった。契約期間が半減というだけで十分「不利益変更」という違法行為に当てはまるが、それだけではない。「いつでも契約を切ることができるんだぞ」と、Aさんに対して雇い止めを示唆する効果もある。あまりにも一方的で、理不尽なやり方であるといえよう。

 Aさんは今後とも昇給なし、退職金なし、賞与は減額という薄給に甘んじなければならない状況である。

(文=新田龍/働き方改革総合研究所株式会社代表取締役、ブラック企業アナリスト)※後編へ続く


クラブツーリズム主催の「視覚障害者 夢の自動車運転体験ツアー」レポート

2016年10月03日 03時10分51秒 | 障害者の自立

インストラクターの声を合図に視覚障害者がツインリンクもてぎをドライブ

 旅行会社のクラブツーリズムは、ツインリンクもてぎの施設を利用した1泊2日の視覚障害者向けのツアー「視覚障害者 夢の自動車運転体験ツアー」を主催している。今回はツアー初日の模様を取材できたので、ツアー内容についてご紹介する。

 このツアーはクラブツーリズムが企画、開催しているもので、2010年11月に茨城県西自動車学校で開催したことを皮切りに毎年実施され、今回で第10回となる。ツインリンクもてぎの施設を使うようになったのは2012年の第3回からで、この当時は運転実践は茨城県西自動車学校を利用していた。ツインリンクもてぎで全行程を行なうようになったのは2014年の第6回開催時からとのこと。

 ちなみに、ツアー名称を目にして「視覚障害者の人が自動車の助手席などに座って試乗を体験するツアー」だと想像する人も多いことだろうが、このツアーは「視覚障害者の人が運転席に座って自ら自動車を運転するツアー」なのだ。

 それでは午前の模様から紹介していこう。そもそもこのツアーが始まった経緯だが、ある視覚障害者の人が「一生に1度でいいから、自分でクルマを運転してみたい」という願いを、このツアーの責任者であるクラブツーリズムの渕山知弘氏に打ち明けたことがきっかけ。それを聞いた渕山氏は約5年間掛けて計画を練り上げ、2010年からツアーをスタートさせたとのこと。

 前述したとおり、今回の開催で10回目となるこのツアーは定員16人で募集。毎回満員になるとのことで今回も定員がいっぱいになったが、1人のキャンセルが発生したので実際には15人で行なわれた。

 今回の参加者は弱視の人が2人、全盲の人が13人という内訳。このうち、盲導犬を連れている参加者が2人含まれている。また、今回はツアー初参加という人は7人、リピーターが8人で、毎回リピーターからの申し込みが多い。しかし、このツアーは「夢の実現」をテーマにしているので、できるだけ多くの人に運転の機会を提供したいということで、初参加という人の申し込みを優先するケースもあるとのこと。これまでの累計で141人がツアーに参加していて、すでに次回の開催も決定している。日程は2017年3月15日~16日で、場所はツインリンクもてぎ。定員は今回と同じく16人を予定している。

 なお、このツアーの取り組みが認められ、クラブツーリズムは第2回ジャパンツーリズム・アワードの「国内・訪日領域優秀賞」を受賞。この授賞式が9月22日~25日に開催された「ツーリズムEXPOジャパン2016」内で執り行なわれている。

ホンダが行なう安全運転普及活動

 続いて、ツインリンクもてぎを運営している「モビリティランド」の親会社となる本田技研工業が行なっている安全運転普及活動について紹介された。

 ホンダの創業者である故本田宗一郎氏が遺した言葉に「人の命を預かるクルマを作っている会社だ。お客様の安全を守る活動は一生懸命やるのが当たり前」というものがあり、ホンダではこれをベースに「Safety for Everyone 交通社会に参加するすべての人の安全を守りたい」というスローガンを立てている。1970年には「安全運転普及本部」を立ち上げ、現在でも「人への安全訴求」「より安全な商品づくり」「安全情報の提供」という3つの柱で“事故ゼロのモビティ社会”を実現するため活動を続けている。

 ホンダによるプレゼンテーションが終了したあとに、ツインリンクもてぎ アクティブセーフティトレーニングパークの佐藤インストラクターから体験走行についての説明と注意点について語られた。

 まず、このツアーにアクティブセーフティトレーニングパークが協力する目的だが、これは参加者が1人でクルマに乗り込み、シートベルトを締めて発進。曲がる、止まるといった操作を行なったあと、エンジンを停止してクルマから降りるまでの一連の行程を安全に体験してもらうことであると説明された。

 そこで取材として足を運んだ筆者らメディア関係者も、コース脇にある待機エリアでアイマスクを装着して目が見えない状況を作り、そこからクルマまで歩いて乗り込み、運転して戻ってくるという一連の体験を行なった。待機所からはインストラクターとペアを組んで、アイマスクで視覚がなくなったあとはインストラクターの腕や肩を掴み、クルマまで歩いて行く。乗りこむときはクルマの形状が分からないので、車内に入るときにルーフに頭をぶつけないように手を伸ばしてルーフの場所を確認する。さらにシートに座ってドアを閉めるときも、手足などを挟まないようにするのはもちろんのこと、衣類をドアに挟まないよう確認することもインストラクターから指摘された。

  乗りこんだあとは手探りでシートベルトを引き寄せ、同じく手探りでタングをバックルに差し込む。そこからステアリング、シフトセレクター、サイドブレーキの位置なども手の感覚で確認する。また、取材日は風が強かったので、乗り込むときにドアが風であおられて急に開いたりしないように押さえることも行なってほしいと伝えられた。自分ではこれまですべて無意識に行なっていた行為だったので、改めて指摘されると言葉が出ない感じでもある。
 
 さて、目が見えない状況での運転で最も気になるのがステアリング操作。見えていないのだから操作する方向を自分では判断できないため、助手席に座るインストラクターからの指示にしたがって操作する。

 その指示をやりとりするための決まりとして、ステアリングのイメージを時計の文字盤に見たてて表現している。頂点が12時、右センターが3時、真下が6時、左センターが9時という具合だ。試乗車のステアリングには9時(左センター)の部分に位置が確認できるようにバンド巻き付けられており、そこに左手を置くのが視覚障害者の人が運転するときのホームポジションとなる。

 実際の運転では、右に曲がるときには左手を9時の位置から「10」「11」「12」と、回していく方向を簡潔に数字だけでインストラクターが指示していく。戻すときも9時になるまで数字が戻るように読み上げていく。このときにステアリングを回転させる速度はゆっくり&一定に保つことが基本だが、状況によっては早めにステアリングを操作した方がよい場合もある。そんなステアリングを早く切ってほしいときは、「10」の次に「12」といったぐあいで数字を飛ばし、早く操作するということを伝えていく。

 次に走行時の速度だが、これは40km/hまでに設定。ツアーの初参加者もまずはここから始めるので、それに合わせるという感じだ。ただ、ツアー2日目には急制動でABSを効かせる体験も行なうので、そのときは80km/hぐらいまで車速を出すとのこと。

 このあとはツインリンクもてぎ内の「第2アクティブセーフティトレーニングパーク」に移動して運転体験をするのだが、走行前のコース確認でも、目が見える人はコース図を見てコースレイアウトを覚えられるが、視覚障害者の人はここも特殊な手順となる。

 コース解説を担当するスタッフは、塗ると盛り上がるペンを使ってコース図をなぞり、手で触ることでコースレイアウトを判別するコースマップを作成。ツアー参加者にそれぞれに配布された。それにしても、佐藤インストラクターから説明されることは1つひとつにハッとさせられることばかりだった。

メールの音声ファイルで広まるツアーの存在

 メディア関係者の走行体験が終わったあと、ツアー参加者がツインリンクもてぎに到着。休憩時間を利用して、ツアーに同行しているクラブツーリズム ユニバーサルデザイン旅行センターの渕山氏からもツアーに関しての解説が行なわれた。

 渕山氏は「このツアーが実現したのは2010年11月ですが、それより5年前、別のツアーに参加していた視覚障害者の人から『一生に1度でいいのでクルマを運転してみたい』という話をされました。ここで視覚障害者とお付き合いがない人だと、絶対ムリだ、危ないという発想になると思いますが、長年、障がい者の人と行動をしてきた身としては、ぶつかる心配がない広い場所と助手席にブレーキがあり、インストラクターが同乗できればなんとか実現できるのではないかと考えた」と語る。

「その後、仕事の合間を見つけて協力してくれるコースを探したところ、茨城県にある茨城県西自動車学校さんが協力してくれるということになりました。しばらくお世話になりましたが、自動車学校ということで定期的な開催が難しかったため、以降はツインリンクもてぎのアクティブセーフティトレーニングパークにお願いすることになりました」とのことだった。

 次に視覚障害のある参加者に対するツアー告知について。「以前は点字の案内や印刷物を家族やサポートの人に読み上げてもらう方法でしたが、5年ほど前からはメールに旅行パンフレットの内容を記録した音声ファイルを添付して告知する方法が主体になり、スマートフォンの普及とともにこれが主流になりました。私どものリストに登録されている視覚障害者の人にご案内のメールを送ると、それがそれぞれの人が持っているネットワークで広がるようになったので、こちらが告知してからおよそ1週間くらいで全国に知られる状態になっています」ということだ。

 気になるツアーの参加料金は6万9800円。また、このツアーは視覚障害者の人が1人だけでも参加できるのが特徴となっている。行動にはサポートをする人が必要だが、それはクラブツーリズムの社員が担当する。このシステムを利用しても追加料金は発生しないとのこと。

 これに加えて、視覚障害者の人がクルマを運転するということが観光業に関連する人に伝わることで、これまでは宿泊や食事などさまざまな業種で「うちは障がい者に対応していない」「うちは段差が大きいから」と言われて避けられていたところが、「少し工夫をすれば来てもらえるようになるのではないか?」という考え方を持つようになってきたという。

 このあとはツアーの参加者が実際に運転を体験している模様を写真で紹介するが、クルマから降りてきた参加者には一様に笑顔が見られ、待合所で自らの運転体験をうれしそうに語っている姿が印象的だった。そしてツアー初日の最後は南コースに移動して、インストラクターが運転するシビック タイプRでの同乗走行が行なわれた。

 試乗前に渕山氏から、同乗走行の車両がシビック タイプRであることが発表されると参加者から歓声が上がった。聞くところによるとツアー参加者はクルマについて詳しい人も多く、スポーツタイプのクルマはエンジン音や加速感で魅力を味わうという。

 以上で初日のプログラムはすべて終了。今回の取材は初日のみだったが、2日目はスラローム走行やABS作動体験なども実施されるとのことで、そちらも見学してみたいという気持ちになるツアーだった。

2016年10月1日   Car Watch


白杖折れる事故多発 視覚障害者の半数、通行人や車など接触

2016年10月03日 03時03分04秒 | 障害者の自立

 目が不自由な人が歩行中に、車や自転車と接触するなどして「命綱」の白杖(はくじょう)が折れるケースが全国で頻発している。日本盲人会連合(東京)の全国調査によると、視覚障害者の半数近くが1度は白杖が破損した経験があるという。人身事故へと発展し、被害者になる例も少なくない。視覚障害者側から接触を避けるのは難しく、福岡県盲人協会は「視覚障害者は命懸けの覚悟で外出している現実を知ってほしい」と訴える。

 9月上旬、福岡市・天神の地下街。同市早良区で治療院を営む全盲の吉住寛之さん(43)が1人で歩いていると、誰かに体当たりされたような衝撃を受けた。けがはなかったが、白杖は真っ二つ。「相手は終始無言だった」という。

 車や自転車と接触し、白杖が折れた経験がある吉住さん。2年前には、通行人と接触したはずみで白杖が折れたことが1カ月に3回あり、それを機に、用心のため「いつもの半分」の速さで歩くよう努めている。それでも1日10回以上、歩行者同士で接触するという。

 日本盲人会連合の2013年調査では、回答した視覚障害者457人中、213人(46・6%)が車や自転車と接触して白杖を折られたり、破損したりしたことがあった。歩行者同士の接触による被害も含めれば、さらに多いとみられる。

 昨年10月には、徳島市で盲導犬を連れた男性がトラックにはねられる死亡事故が発生。警察庁の緊急調査によると、視覚障害者が巻き込まれた交通事故は昨年44件あり、死亡3件、重傷12件、軽傷29件だった。

 今年のパラリンピックでも視覚障害者の活躍が注目されたが、「テレビで競技者は応援しても、身の回りの障害者とリンクしていないのがもどかしい」と吉住さん。外国人や高齢者も含め「困っている人に配慮できる社会になってほしい」と願う。

 視覚障害者が困ったときに、白杖を頭上に掲げるSOS合図「白杖シグナル」の普及を図る福岡県盲人協会の池田精治会長(68)は「電車から降りるときに腕を支えてくれる人は増えてきたが、白杖の市民権はまだまだ。もっと訴えていきたい」と話す。

折られた白杖を手にする吉住寛之さん。折り畳み式のため、杖の内側は伸縮ゴムでつながっているが、破損して組み上がらない

=2016/10/02付 西日本新聞朝刊=