ジャガイモのような風貌ながら、口先ばかりの上司に押しつけられた仕事もしっかりこなす。時には思い切った行動に出て、社長や大株主をうならせることも。山口六平太はそんなスーパー平社員だった▼1986年から漫画誌「ビッグコミック」に連載された「総務部総務課山口六平太」。昨年11月、作画を担当した高井研一郎さんが亡くなって、30年の歴史にピリオドを打った。その初期によく登場したのが主人公・六平太の「タバコくるっ」である。くわえていた火の付いたたばこを舌でつかんで口の中に入れ、相手をけむに巻いた▼それも今は昔の感がある。喫煙、さらに受動喫煙の害は常識となった。単行本最終巻にはオフィスはもちろん、酒場の風景にもたばこは登場しない▼そんな時の流れを知ってか知らずか。受動喫煙防止のための健康増進法改正案を巡る厚生労働省と自民党の攻防が続いている。規制の緩和を迫る党側に対し、厚労省が譲歩を重ねる展開。吸わない人が煙害を受ける社会は、もはや国民の理解を得られまいと思うのだが▼道議会も受動喫煙防止条例の制定に取り組んでいる。病院や小中高校は敷地内禁煙、大学や障害者支援施設、老人福祉施設などは施設内禁煙の方向で、罰則は設けないようだ▼札幌では今も、繁華街などで歩きたばこを見かける。当然ながら、漫画のように「タバコくるっ」をする人はいない。
2017・5・21 北海道新聞
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