台風19号の上陸から十二日で一カ月。避難所で過ごす被災者の中には障害者もいる。不慣れな環境に障害による苦労が重なり、疲労を募らせている。
「漢字が多く、意味が分からない」。千曲川の堤防決壊で被災した長野市豊野町。避難所の豊野西部児童センターで十二日、掲示物を見て無職高沢新一さん(39)=同市豊野町=がため息をついた。軽度の知的障害があるが、今も常駐の職員にさえ打ち明けられない。
母と知的障害の弟と避難してきた。近くの自宅は二階の床上まで浸水し、財布が流された。「頭が混乱してしまって」。キャッシュカードの再発行手続きはなかなか進まなかった。公営住宅への入居も考えているが、判断が付かず、申し込めない。「どうしたらいいか」。避難所を出た後の不安から眠れない日もある。
センターに隣接する豊野西小に避難した武田隆志さん(46)=同市豊野町=は聴覚障害がある。一人暮らしで、十月十二日に避難。一週間ほどは手話通訳もなく過ごした。館内放送は聞こえず、衣類の配給に気付いた時に自分のサイズは既になかった。炊き出しは人が並ぶのを見て初めて知った。「困った」と思いながらも言い出せなかった。
市が窮状を知り、二十二日以降は手話通訳や相談員がほぼ毎日来てくれるようになった。市が借り上げた民間住宅への入居も決まりひとまず胸をなで下ろす。
災害対策基本法では障害者らの名簿作成は自治体に義務付けているが、避難所での具体的な支援は明示していない。
市によると、被災直後から保健師が避難所を巡回するが、福祉政策課の担当者は「支援が必要な人の把握に時間がかかったかもしれない」と話す。仮住まいの入居手続きでサポート態勢を整えていくという。
神戸女子大の横内光子教授(救急・災害看護学)は「障害の種類によって支援方法も、情報の入手の仕方も異なる。障害別の支援体制を構築することが大切だ」と指摘する。
避難所で相談員と手話で話す武田隆志さん(左)
2019年11月14日 中日新聞
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